逢の章-2
ルカが寺の外で一人色々と考えていると、一人の少女がやってきた。セーラー服の中にブラウスを着たような変わった制服姿の少女だ。ルカより少し年上の中学生だろうか。眼鏡をかけている。
「こんにちは」
緊張しているのか、少し強ばった声で少女が言った。ルカもこんにちは、と返す。
「ご、ごめんなさい。邪魔……でしたか」
「いえ! そんなことは」
ここにいるということはこの人もミドリの知り合いなのだろうか、と考えながら、ルカはおどおどする少女を見つめる。
少女は心持ち固い面持ちでルカを覗き込んだ。
「貴女が双見ルカさん?」
「えっ? はい」
名前を呼ばれ、慌てて頷く。言ってから何か気づいたように少女があたふたとする。
「そ、そうですよね、普通自分が名乗るのが先ですよね。ごめんなさい、ごめんなさい!」
「あの、えと」
そんなに謝られても困ると戸惑っていると、すぐに顔を上げた少女が名乗る。
「わた、私は東雲透子。多ヶ竹市に住んでる中学二年生で、あの、片倉くんとかからお話聞いてませんか?」
「片倉くん……アオハくんですか?」
思いも寄らない名が出たことに声がひっくり返るルカ。トウコはうんうんと頷いた。
「私の通っている学校と片倉くんの通っている学校って姉妹校なんです。その関係で交流があって、って、いきなりこんな話されてもわけわかんないですよね。ごめんなさい!」
年下であるはずのルカに敬語を使い、何故だかびくびくしているトウコに対して、ルカは疑問符しか浮かばない。
「八嶋さんとは?」
とりあえずの疑問を口にする。
「数検とか、漢検とかの色んな会場で会って、それからおこがましくもお友達という関係にっ。頭がよくて優しいお兄さんでした。今回のことは…………とてもとても、悲しいです」
言い方が色々とおかしかったが、最後の一言には共感したので、ルカは何も言わずにいた。
「あの、双見さんは、大丈夫ですか?」
「え?」
何を言っているのだろう? ときょとんとすると、トウコが胸ポケットからハンカチを取り出す。
「涙……」
躊躇いがちに指摘して、ハンカチを差し出した。ルカがはっとする。
目尻を拭うと、指先が濡れた。
「わ、わたし」
「存じております。死に目に遭われたそうで。でも、秘密だと。私も気にはなりますが、根掘り葉掘り聞いたりはいたしません。これ、お貸しいたしますので。それでは」
ルカの手に淡いオレンジ色のハンカチを握らせると、トウコは足早に去っていった。
呆然と渡されたハンカチを見つめてルカはしばらくその場に佇んでいた。
今の人、何だったのだろう? 言葉遣いは丁寧だったし、物腰も柔らかく、話しやすいけれど妙におどおどしている。ハンカチだけが用事だったのか、渡すなり嵐のように去っていってしまったが。
東雲トウコ。アオハの知り合いだと言っていた。
ミドリの死について、「存じております」と言っていた。おそらくアオハあたりが話したのかもしれないが、一体何者なのだろう?
ルカはじっとハンカチを見つめ、考え続けた。