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第⑥話 闇(敵)と消失(エラー)




――翌日。


 三つある始まりの街の一つ「サイフォン」の一角で不穏な動きを見せているギルドがあった。


「デュラン様、報告します。「桜」のギルドが昨日壊滅。Killされたメンバーはその後行方をくらましその後連絡が付いておりません」


 その報告を受け、金色の鎧に身を包んだナイトは裸同然の姿で自身に纏わりつく女たちを払いのけ立ち上がると。


「獣人ぱろさんが行方不明!? おい! 詳しく聞かせろ!」


「はっ」


 傅く金の刺繍が入った黒装束を身に纏う忍者は、そのままの姿勢で一歩前にでる。


「例によって昨日も商人交じりのパーティーを襲い現金を強奪する手はずだった様ですが、一人の召喚士の手によって全滅させられていたと現場の近くに居合わせたNPCが申しております」


「NPCがか……」


「はい」


 NPCは自分の身の周りで見た物をプレーヤーとの会話に反映させると言うシステムがある。

 この世界に於いても有効な様で、たとえ自由を勝ち取った今の村人Aであってもそれは例外なく適応されている。

 例えばダンジョンの入り口に居るNPCに話しかければ。


「今日は既に8組のパーティーがこの中へ入って行ったよ」


 と、返事が返って来る事で当日のこれまでのダンジョン攻略組の人数が把握出来る等だ。

 なので嘘を言う事がない。


「本当に一人の召喚士がか?」


 それでも信じられなかったのだ。

「桜」に拠点を置く対プレーヤーキラーギルド「深淵の騎士」は総勢46人在籍して居たのだから信じれるはずもなかった。


「如何いたしましょう」


「……その召喚士を探し出して血祭に上げる以外何かあるのか?」 


「!!」



――――

――



「ここが冒険者案内所だよ!」


 武蔵とナディアは無職の為、ここで職を決めるべくポコさんに連れられ冒険者案所なる場所まで背中を押されなら来ていた。


「ポコさん、職業決めなんてまだいいですって。メディアもまだいいよなぁ?」


 振り返ると死神は。


「おい武蔵! これはなんじゃ? うほっ! 舐めるでない! このっこのっ」


 ペンドラゴンの移動獣「ねこ」に舐められていた。


「ねこ」名前の通り猫だが、長距離大陸移動用の乗車型猫だ。人を乗せて運ぶだけあって見た目はトラとかライオンなのだが、やはり猫なのだ。


「それは乗車型の猫だよ。どれか職業に就くと免許が交付されていつでも乗れるはずだけど……」


「なんと! 職業に就くとこれに乗れるのか! 武蔵! はようせい!」


 要らぬ知識を与えてしまい職に就く事になった俺とメディア。

 メディアに至ってはペンドラゴンのシステム上有り合えない職業「神」となっているので、言い方としては転職?になるのかも知れないが、それこそ神なのでどうとでもなる……だろう。


 問題は俺だ。


 通常無職でもレベルは上がるが、昨日のスライム狩りの結果で俺は無理だと結論が出ている。

 パイロットウォーズとペンドラゴンのステータスがリンクするはずもない、か……。最初に無職って言ったのは間違いだったなぁ。

 そんな事を考えていると。


「こんにちは、今日は職決めですか? 転職ですか?」


 バーテンダーの様な出で立ちのポニーテールのNPCが話しかけて来た。

 どうやらNPCに近づきすぎたようだ。


「(えーい、もうどうにでもなれ! 呑み屋兼業のここじゃ人も多いし、もしダメだったら大声でバグだーーって言って押し通す!)」


 俺がどの職にするのか興味深々といった風でポコさんが目を輝かせている。


「職決めです」


「ではこちらのオーブに手を翳して頂き、なりたい職業を思い浮かべて下さい。決定しましたらこちらのカウンターへ初期装備が支給されます」


 確かこんな感じだったなと、昔初めてペンドラゴンにログインした日を思い出しながら手を翳す。


「(さて、無理だろうけど一応念じてみるか……)」


――――パラッパラッパッパーーーー

 突然ファンファーレが響き渡り店内の視線が一斉に俺に集中する。


「おめでとうございます! システムエラーにより課金レアアイテム10種が贈呈されました」


「「「「「ぉおおおお!」」」」


 店内が一斉に湧き上がる。

 それもそのはず。ペンドラゴンは滅多な事でエラーを起こさないので有名であり、万が一エラーが起きた場合の補償アイテムが超が付くほどレアな物が頂けるのだ。


「いやーあんちゃん凄いな! エラーなんて初めて見たぜ」


「職決めでエラーとかどんだけラッキーなんだよ」


「なんだよ、イケ面キャラよりデブキャラ作った方がラックが上がるって本当かよ!」


「データの再インストールを行います、アイテムは保管BOXに転送されますので新しいキャラクタでも使用可能です」


「レベル1でレアアイテム持ちとか、殺人ギルドに追われるぞ、にいちゃん!あははは」


「あいつどこのギルドだ? 入ってなければ俺の所が」


「いや、最近Do!のやつらと一緒だったぜ?」


「あの弱小ギルドか! どんだけもったいないんだそれ!」


 等々色んな所から色んな声が飛び交っていた。

……あれ? さっきバーテンの人何か言ってたような……っと、それより。


「次はメディアの番だよ」


「おっ、やっとワレの番じゃな。しかしお主は皆が騒ぐ程の職に決めたのか?」


 レアアイテムゲットに興奮していたので、そう言われて職が決まっていない事に気づき前に出ようとするが。


「えーい! お主は後じゃ。ワレもとっとと済ませてアレに乗りたいのじゃ!」


 メディアに遮られ、仕方なく彼女の後にする。


「おぉ次も最近Do!のギルメンが決めるらしいぞ」


 メディアが案内に従いオーブに手を翳す。


――――パラッパラッパッパーーーー

「おめでとうございます! システムエラーにより課金レアアイテム10種が贈呈されました」


「「「「「「「すげーーーーー」」」」」」


 店内は二回続けてのエラーに最大級の盛り上がりを見せる。


「いやーねーちゃん凄いな! 2連続エラーなんて初めて見たぜ」


「職決めでエラーとかどんだけラッキーなんだよ」


「なによ、幼女キャラよりエロキャラ作った方がラックが上がるって本当なの!?」


「データの再インストールを行います、アイテムは保管BOXに転送されますので新しいキャラクタでも使用可能です」


「レベル1でレアアイテム持ちとか、殺人ギルドに追われるぞ、ねぇちゃん!あははは」


「あの女どこのギルドよ? 入ってなければ私の所が」


「いや、最近Do!のやつらと一緒だったわよ?」


「あの弱小ギルド! どれだけもったいないのよそれ!」


 等々色んな所から先程と似た声が飛び交っていた。そんな騒がしい中。


「のう武蔵。これであの猫に乗れるのか?」


「いや、今のは俺もメディアも失敗だ。だからもう一度――グッ、グアッ!!」


「どうした武蔵! おい! 武蔵!」


 そこで俺の意識は突然プツンと途切れる――


――――


――再び目覚めたのは薄暗い空間だった。


「気を付けろよ武蔵。この空間に先程からワシと変わらぬ気配を感じる」


 目覚めた俺の隣で、そうメディアが告げてきた。


「ここは?」


「うむ、あの酒場でお主が倒れその場で姿が消えてしまった後、どうやらワシも消えてしまった様じゃ」


「そんな馬鹿な……」


「事実じゃ。それよりワシはこんな空間を見たのは初めてじゃ……お主でなにか心当たりはないか」


 言われ周りを見渡す。

 薄暗い空間の中、その中央に丸い光が小さな点で見えていた。

 その点は徐々にこちらへ近づいて来る――そして急加速して目の前をその光が覆い尽くす。


「なんじゃと言うんじゃ! えーい、こうなったらこの空間ごと吹き飛ばしてくれるわ!」


 両手を広げ、掌がバチバチ電撃を帯び始めたメディアを俺は制する。


「ちょっと待って!」


「なんじゃ」


「これは……」


「わかるのか?」


「ああ……多分キャラメイキングの空間だ」


「ん? キャラメル食うぞ? 勝手に食えばよかろう」


「ちげーよ! あの世界で過ごす為の自分の姿を作り出す空間って事!」


「……ほぉ……人類創造空間と言った所か。成程の……それでワレと同じ様な気配がしとったのか」



――――

――独り案内所に取り残されたポコアポコは、遅い三人をギルドの面々が迎えに来るまでその場でへたり込んでいた。


「武蔵君……メディアさん……いったいどうしたっていうの――」





次回、朝までには。

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