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第④話 人型兵器アージス降臨

挿絵(By みてみん)



「お、おい! あれを見ろ!」


 天空に指を差す殺人ギルドの面々。


 その中心人物。ギルドマスターらしき獣人は騒がしいギルメン達と違い、眉を寄せるのみで、一言グチり、落ち着いて指示を出す。


「最後に高レベル魔法使いでも居やがったか……チッ、速度重視の前衛職! 速攻で奴を仕留めろ!!


「「いやっほー!」」


 待ってましたと装備の軽い前衛職、アサシンが飛び出し続いて忍者がその後を追う。

 だがその間にも天空の割れ目は更に開き、その割れ目が一瞬輝くと光の塊が一人取り残された高レベル魔術師らしき者の眼前に急降下する。


「召喚士だったか。しかし……なんの召喚獣だ? おい! そこの召喚士! あの召喚獣はなんだ!」


 仲間の召喚士の一人が目を細め、ギルマスに返事を返す。


「光の塊から察するに精霊獣の類かと……にしてもレアな召喚獣でしょうな」


「レア召喚獣か……。まっ殺せばわかるか」



――そのさなか先陣を切っていたアサシンと忍者は、土煙立ち込めるその場で不思議な光景を目にしていた。


「おいアサシンの……拙者は夢でも見ているでござるか」


「いや、それより……ペンドラゴンの召喚獣にあんなのあったか?」


 二人の前に立ちはだかる人型の巨人。


 中世ヨーロッパや江戸、アメリカの荒野の風景に似せたファンタジーな世界観を誇るペンドラゴン。

 その世界観にあって、突如現れたなんともSFちっくな胸に赤文字で「Ages」と書かれた紺色の巨人。


「……こんな鉄の塊をこんな短剣でどう倒せと?」


 後方のギルマスへ振り返り、途方に暮れるアサシンと忍者だった。


――殺人ギルマスは前方で戸惑っている二人に舌打ちしながら次の指示を冷静に出す。


「うむ、どちらにせよ滅殺するだけだ――遠隔攻撃者前へ! 召喚獣諸共殲滅せよ!」

 右手を振りかざす一際屈強なギルマス。


――屈強な右腕をかざす殺人ギルドのマスターだったが、彼が耳にしたのはギルメン達の悲鳴と、かざした右腕が蒸発して行く様だった。



――――

――



「キターーーーーーーコレキターーーーーー!」


 その場でお腹のお肉を揺らしながらはしゃぐ武蔵だった。

 目の前のアージスは彼の前に屈むと、ハッチが開く。

 その開いたコクピットはメーター類が光り、多くのパネル開かれていた。


「なにこのSF感……最高なんですけど!」


 毎日4人乗りファミリーカーを運転している若者の目の前に突如フェラーリをプレゼントされた気分で彼は喜び勇んでアージスに飛び乗った。

 が、シートへ座るも座席サイズがフリーサイズではないのか、お尻を強引にシートへ沈めこむ。


「……まぁ、これはあるある。俺デブだから。んしょ! はぁ、全く、デブ専用で設計してくれよ……」


 ため息交じりでそんな独り言をぼやくと。入り込んだハッチが閉じ。


――ポン。「アイテム開封者声帯確認。搭乗者藤堂武蔵確認。召喚シークエンスより起動シークエンスへ移行。全システムオールグリーン。索敵モード内敵勢力確認。――殲滅しますか?」


 システムボイスが流れ出す。


「成程。この辺りは他のパイロットウォーズの戦車機体と変わらないのか。ならば――」


 勝手が解るゲームシステムなら扱いは簡単。命令すれば動く。


「敵勢力殲滅モードへ移行、初期戦の為戦闘はオートモードへ」


「了解。これより殲滅を開始します」


 人型兵器アージスは起動音と共に立ち上がり敵勢へ向き合う。


――ポン。「対人兵装エターナルガトリング起動――不可。対人兵装エターナルソード展開――不可。対人兵装エターナルボム装着――不可」


 対人兵器の殆どが装備不可と無機質なシステム音声が流れ武蔵の心の時が止まる。


「……え、ウソ。戦えないじゃん……」


 そう、ここペンドラゴンに於いて、パイロットウォーズの世界に充満しているエターナルエアーなる空気が存在しないのだ。


 そのエターナルエアーはパイロットウォーズに於ける兵器使用の要であり、そのエアーはアイテム能力に応じ、圧縮精製する事で武装を換装していく。

 謂わば戦術戦闘の要である。


 プルプルと手が震え、鉄の棺桶にしかならないロボに少しガッカリする。


「……殴るか」


 当然の答えである。

 相手は人間なのだから、武器が使えないなら殴ればいい。


――ポン。「敵勢への打撃確認――可能」


「そりゃそうだわな。じゃ殴りで」


「イエス、マスター」


 その応えにアージスが細かく振動を始める。


「ぉお? 兵器と言えど武者震いか? パイロットウォーズの制作もやるねー」

 などと呑気に構えていると。


――ポン。「殴打用魔素吸引完了。――ファイナルウェポン展開」


 全周モニターの両側に映るアージスの両腕からはいつの間にか魔法陣が現れ虹色に輝き回転を始めだす。


「え、ファイナルウェポンって。なに?」


「ファイナルブロー波動砲発射します――発射」


 システム音声の終了と共に、アージスの両拳から大出力の七色の光が敵勢に放たれる。


――ゴーーーーーーー! ドーーーーーーン!


 放たれた轟音の次にキノコ雲と振動を伴う激しい爆発音が響き渡る。

 後から知る事になるが。その爆音と爆風は「桜」の街まで被害が及ぶ程激しい物だった。

 漸く激しい揺れが収まり、辺りが落ち着きを取り戻す。


「……なにコレ」


「最終兵装です」


「最終兵装です。じゃねーよ! つか――ポンとか今まで鳴ってたのも無しって。言って!こんな凄い事するなら先に言って!」


「女みたいな野郎ですね。面倒臭い」


「……あれ? 今小賢しいとか面倒とか言った?」


「…………言ってません?」


「なんで疑問系なんだよ!」


 武蔵は今の出来事とアージスの対応に興奮していたのだが、モニターに一人の女の姿を確認する。


「まてまて、あれは! アージス、この件は後できっちり話し合うからな!」


 そう言い残し武蔵はコクピットから飛び出すと、その女性に駆け寄って行った。


――「この世界でどうやって連絡取ろうか悩みましたよ、メディアさん」

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