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1-2 魔法

 俺は城に用意された部屋で、神器である業務用肩載せビデオカメラを触りながら、アレクとライザの説明を振り返っていた。


 ・昔、魔王が暴れる。

 ・昔の王が魔王を倒す力を得るために武器を召還する。

 ・武器として業務用肩載せビデオカメラが召還された。

 ・ビデオカメラを王子が気に入る。

 ・王子が配下に命じて時間をかけて魔法でビデオカメラを改造する。

 ・結果としてビデオカメラは神器となり魔王を倒した。

 ・ビデオカメラは神器として大切に城の宝物庫に保管される。

 ・800年後、魔王復活。

 ・再び魔王を倒そうと神器を持ち出す。

 ・王子用にチューンしすぎていて普通の人には扱えない。

 ・扱える人を召還しようという話になり俺が召還された。

 ・魔王を倒すには【AV撮影】を行うらしい。


 まとめていくと、一番最後の項目がおかしい。

 おかしすぎる。

 詳しい話をアレクに聞いたが、昔のことで文献を見ても曖昧らしい。

 ただし昔の王子は【AV撮影】という技をつかって、仲間を増やし魔王を討伐したらしいのだ。


(AV撮影って、魔王の配下のえろえろな女性の敵を蹂躙する映像を撮影して脅すのか?)


 と思ったが、脅したくらいじゃ逆に反撃されて殺されてしまうのがオチだろうなと思い直す。

 答えが出ないので、この件は保留にして元の世界に戻る話を思い返す。


(しかし帰るにも魔王を倒す必要があるとか、ふざけてるよな)


 俺はライザとアレクに怒りを感じていた。

 アレクによると召還によって、この城に長い時間をかけて貯めてこんでいた転移魔方陣の魔力が枯渇したらしい。

 元の世界に戻すのは膨大な魔力を補充する必要があるそうだ。

 時間をかければ転移のための魔力を補充できるが、数百年かかるらしい。

 手っ取り早く補充するには魔王の持つ指輪を利用するしかないという話だった。


 俺が魔王を倒さない場合、いずれこの国も含めて世界は蹂躙されて人は滅んで俺も死ぬ。

 俺が魔王を倒す場合、この国は滅ばすに済み、俺も元の世界に戻れる。

 魔王を倒さず人の来ない場所まで逃げて、ひっそりと魔王やこの国の人に見つからずに余生を過ごすという手もあるがサバイバル生活が出来るかと言われると無理があるなと、その案は放棄した。


 結局俺が魔王を倒すという選択肢しか今のところ考えつかない。

 神器である業務用肩載せビデオカメラを見つめる。


 俺は背面のバッテリーの取り付け場所に目をやる。


(バッテリーパックは付いてないな、これじゃ動かないだろう)


 ビデオカメラの入っていた箱を見るとバッテリーパックらしきものとメモリーカードらしきものが3枚入っている。


(お、これか?)


 俺はビデオカメラにバッテリーパックをセットする。

 ビューファインダーを右目で覗き、本体の電源ボタンを押すと情報表示と共に映像が映る。


 情報表示の文字が点滅している。


『魔力が不足しています。充填をお願いします。充填方法はマジックパックを取り外し手に持ち《チャージ》と詠唱してください』


(へ?)


 そのあとビューファインダーになにも映らなくなった。

 俺は指示の通り、マジックパックを本体から外して手に持ち《チャージ》と唱える。

 気持ち悪い感覚があった。

 俺の体から何かが抜け出ていく感覚だ。

 すると持っていたマジックパックが淡く光った。


(これが充填なのか?)


 ビデオカメラの背面にマジックパックをセットしてからビューファインダーを覗いて電源を入れる。

 ビデオカメラが起動した。

 ビューファインダー内の情報表示を詳しく見る。


 下部にある時刻情報は800年4月1日の14時34分と表示されている。

 右上にはMP100%と表示されている。


 どうやらMPとは動かす為の魔力値だろうと思った。

 左上には人の顔の記号が表示されている。


(これって撮影モードかな?)


 ビデオカメラの左側面にあるボタンを触るとシーンセレクトというメニュー表示が出た。


(おー、撮影モードが選択できるんだ!)


 シーンセレクトを操作するとビックリした。


 ・ポートレート 魔法《パーソン》     消費魔力1

 ・風景     魔法《ショートワープ》  消費魔力66

 ・夜景     魔法《ハイド》      消費魔力10

 ・スポーツ   魔法《クィック》     消費魔力20

 ・屋内     魔法《ケージ》      消費魔力10

 ・自分撮り   魔法《バリア》      消費魔力10

 ・夕日     魔法《フォールンサン》  消費魔力50

 ・花火     魔法《エクスプロージョン》消費魔力50

 ・料理     魔法《クッキング》    消費魔力8

 ・文書     魔法《デコード》     消費魔力13

 ・ビーチ    魔法《ウォーター》    消費魔力30

 ・スノー    魔法《ブリザード》    消費魔力30

 ・水中     魔法《ブレス》      消費魔力50

 ・ペット    魔法《チャーム》     消費魔力70

 ・パノラマ   魔法《サーチ》      消費魔力50

 ・曇り     魔法《スモーク》     消費魔力15

 ・キャンドル  魔法《トーチ》      消費魔力3

 ・雨      魔法《サンダー》     消費魔力30


(えぇぇぇぇっ)


 どうやら神器というだけあって魔法を発動できるビデオカメラのようだ。

 俺は試しに危なくなさそうな魔法を試してみた。


 シーンセレクトでパノラマに設定し、左側面の《サーチ》のボタンを押してみた。


『シーンが該当しないため発動できません』


 警告表示が出る。

 どうやらビデオカメラの映像と一致しないと魔法が発動が出来ないようだ。

 非常に使い勝手が悪い武器だ。

 いや武器ではないビデオカメラだ。


 いまの部屋の中の状態で選べるシーンとなると屋内かポートレートか自分撮りくらいだろうか。

 俺はビデオカメラ上部のキャリングハンドルの先に付いている小型カメラを自分に向ける。

 そしてシーンセレクトで自分撮りを選ぶとビューファインダー内に俺の顔が映った。


 左側面の《バリア》のボタンを押してみた。

 ブォンと低音がしたと思ったら、自分の周りに薄い光の膜が現れた。


(これがバリアなのか、言葉の通りなら攻撃を防げるってことだな!)


 ビューファインダー内の表示に変化があった。

 右上にはMPが90%と表示されて点滅している。

 そのままバリアを張ったままにしているとMPが89%になった。

 どうやら点滅中は魔力を消費しつづけるらしい。


 シーンセレクトを屋内にするとバリアが消えた。

 条件に合わない魔法は発動も状態維持も出来ないようだ。


(強力そうだけど限定的な強さだな、これって…)


 屋内モードで部屋の中の丸テーブルをカメラで写しピントを合わせる。


 左側面の《ケージ》のボタンを押してみた。

 丸テーブルをバリアと同じように光の膜が取り囲む。

 MP表示が79%となり点滅を始めた。


 どうやら選択したものを保護する檻を発動するらしい。

 使い方によっては味方を守ることも、敵を拘束することも出来そうだ。



 神器である業務用肩載せビデオカメラの実力が徐々にだが、明らかになってきた。

 しかしいまだに【AV撮影】という技が謎である。


 この技を解明しないことには俺の未来はない。

 俺は【AV撮影】の謎に取り組もうと決意する。


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