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1-1 召還

構想1日で書き始めた勢いだけの小説です。

不定期で更新していきます。

 酔いから目覚めると見たことのない西洋風の部屋のベッドで寝ていた。


「あれ、どこかのスタジオかな。あ、ラブホテルかも!」


 あたりを見渡すがベッドの上にスイッチは付いてないし、そもそも電化製品らしいものが見当たらない。

 ベッドから抜け出して部屋からでようと扉に手をかけるが押しても引いても動かない。

 試しに障子のように横に開こうとしたが、それでも動かなかった。


 どうやら俺は閉じ込められているようだと気付く。


(なぜ閉じ込められた?何かのテレビ番組の企画?)


 俺は部屋の中に隠しカメラがないか徹底的に探すが、そのようなものは存在しなかった。


 状況を把握することはこれ以上は難しいようだと諦めた俺はベッドに横になり、昨日までの記憶を振り返る。


(昨日俺は居酒屋で先輩と酒を飲んでいたはずなんだけど)






 幼い頃、交通事故で両親を失い施設で育った俺は、両親のいない寂しさを紛らわす為にテレビを見ることに没頭していく。

 中学生の卒業アルバムには将来の夢は『テレビ番組を関わる仕事に就職したい』と書いていた。

 高校生三年で進路を決めるときにはメディアで活躍するカメラマンになりたくて専門学校を選択した。

 高校までの学費は交通遺児の育成金であったが、さすがにそこから先の学費は自分で払うことになるので奨学金で通うことになった。


 専門学校での成績はかなり良かった。

 仲間と一緒に作った自主映画の評価が高く動画サイトに投稿した際にはかなりの数の閲覧数を記録した。

 かなり尖った撮影手法を駆使し、一部の熱狂的なファンから神のように大手掲示板で持ち上げられた。


 しかし。

 いざ専門学校の卒業を控え、映像業界の大手の会社に対して就職活動を行うも


『尖った才能はいらない』『使いづらい』『勘違いしてるんじゃないか』etc


 と、そういった理由で就職活動は、ことごとく全敗。


 俺は春から立派な就職浪人となっていた。

 しかし奨学金の返済は待ってくれない。

 深夜勤務の飲食店のバイトを掛け持ちして返済していたところ、働き口がないか以前から相談していた先輩のつてで撮影の現場で働けるようになったのが21歳の夏だった。


 ただし。

 紹介された撮影の仕事はアダルトビデオの臨時カメラマンだった。

 最初は女性の裸が見放題ということで喜んだが、2ヶ月もすると俺の目は死んだ魚のようになっていた。


 とにかくただ裸の男女が絡みあいをえんえんと撮るだけであり変化がない。

 レンズ越しに監督の指示にしたがい、仕事としてたんたんと撮影を続けると性欲という存在自体も薄まっていった。

 俺はカメラを操作するマシーンとしてそこに存在していたのだ。


 昨日はSM撮影後、機嫌を悪くしていたAV女優に帰り際、


『ニヤニヤしながら撮影しやがって、死ねよ!カス!』


 と罵倒された悔しさと思い通りいかない状況へのストレスから、専門学校の時の先輩に連絡して居酒屋で愚痴を聞いてもらっていたはずだった。

 たしか小便をしにトイレに行ったような記憶がかすかにあるんだが…





 ぼーっとベッドの上で考え事をしていると扉が開く音がした。


 ローブを着た老人と綺麗なドレスを着た若い女性が部屋に入ってきた。


「おお、勇者様が目覚めたようです。姫様」

「そのようですね。アレク」


(勇者? 姫様?)


 何か不吉な単語が聞こえてくる。

 おそるおそる二人に声をかける。


「あのぅ、俺はなぜここに?」

「勇者様、この国をお救いください!」

「えっ?」


 若い女性の言葉に俺の口から変な声が出てしまった。


「姫様。わたくしが勇者様に状況を説明しますので、お任せください」

「アレク、お願いします」


 アレクと呼ばれた老人に言われ部屋の外に出ると剣をもった衛兵二人に囲まれて豪華な部屋まで案内された。

 部屋には立派なテーブルと椅子があり、姫様と呼ばれた若い女性が一番立派な椅子に座る。

 アレクは姫様に近い椅子に座る。

 俺はアレクと対面にある椅子に座るように促された。


「わたくしは宰相のアレクと申します。そしてこちらの姫様は、このサライザ国の王女で在らせられます」

「王女のライザと申します。勇者様」


 そういってライザが会釈するが、事情が分からない俺は困惑する。


「えぇっと、なぜ俺は勇者って呼ばれてるんです?」

「実は王国直属の魔法使いによって秘儀の儀式を行い、勇者を昨夜召還いたしまして」

「召還?」

「はい、いまこの国は蘇った魔王によって侵略を受けており危機にあるのです。その危機から救っていただきたいと魔王を倒す力をもった勇者を召還いたしました」

「俺が勇者?」

「はい」


 なにか厄介な出来事に巻きこまれたらしい。

 魔法使いとか魔王とか儀式とか召還とか、かなり胡散臭い言葉が会話に出てくる。


「これってファンタジー系のドッキリ番組ですか?」

「ドッキリ番組?」

「ファンタジー系?」


 アレクとライザが首をひねる。

 二人の自然な様子を見て俺はもしかして現実なのかと固まる。


「勇者様の不思議な言葉の意味がわかりませんが、是非ともこの国をお救いください」


 どうやら俺は本当に異世界に召還されてしまったようだった。

 そういった内容の小説、アニメ、ゲーム、実写映画があるのは知っている。

 まさか俺がそのような召還に巻き込まれるとは…

 しかし俺には特別な力はない。

 一般人の俺がどうやって魔王を倒せばいいのか。

 二人に正直に俺は話す。


「俺は普通の一般人です。特別はありません。魔王とか倒すチカラはありません」


 そういうとアレクが何かを察して、部屋の入口にいた衛兵を机に呼び何かを話す。

 衛兵はそのまま部屋の外にむかった。

 そのあとアレクが口を開く。


「勇者様ご安心ください。王家に伝わる勇者様しか使えない神器をお渡しいたします。その神器を使い、魔王を倒していただきたいのです」

「剣とか俺つかったことないです」

「剣ではありません」

「剣じゃないって杖とか大砲とかなんですか?」

「いえ違います。実は800年ほど前にも魔王の危機がありまして、その時に王国が魔王を倒す力を得ようと召還した武器なのです」

「すごい武器なんですね」

「ええ、当時の王子がその武器と一緒に入っていた書物に目を通して気に入り、一流の魔法使い達の英知を動員して魔王を倒すべく武器の改造を行い、神器と呼ばれるようになったのです」


 得意気にアレクが話す。


「でもそんな神器があるなら俺は必要ないんじゃないですか?」

「いえ、特殊な能力によって使うものが限られてしまうのです。当時の王子様にあわせて調整されており現在その武器を使えるものは、この国にはいないのです」

「もしかして、その神器を使える人を召還しようとして俺が選ばれたんですか!」


 ライザとアレクが静かにうなずく。

 俺自身は弱くても神器とかいう凄い武器を扱って魔王を倒せということらしい。

 でも殴り合いの喧嘩もしたことのない俺に戦えってのは無理がある。

 俺がこの話を断ろうとした時、衛兵が金属製の手持ちの箱を持って現れた。


「これが神器です」


 そういってアレクが箱を開ける。

 そこには見慣れたものが入っていて衝撃を受けた。


 重厚なボディ。

 光るレンズ。

 手持ち用の上部ハンドル。

 長く伸びたマイク。

 覗きやすそうなビューファインダー。

 右手を固定するハンドストラップ。

 操作しやすそうなズームボタン。

 ボディ下部の滑り止めのあるショルダーパッド。


 箱の中には業務用肩載せビデオカメラが入っていた!


「な、なんですか!これ!」

「神器です、勇者様」

「えぇぇぇ!」


 アレクの言葉に俺は驚きすぎて変な声を発してしまった。

 さらにライザが話す。


「勇者様、かって魔王を倒した王子と同じように、この神器を使い【AV撮影】で魔王を倒してください!お願いいたします!」


 俺はそのライザの言葉を聞いて頭が真っ白になった。


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