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お久しぶりでございます。
蒼紅抄第2話、いっきまーす。
――誰かの手が、私の頭に触れる。
「・・記憶は、・・・・・・消す・」
「死ぬ・・・・・・。まぁあたしが・・・・・・・・・けどね」
「・・・・・・殺そうと・・・・・・たら、・・・・殺してやる・」
――意識が薄れていく。
「必ず、・・・・・・取り戻す・・」
「しばらく・・・、・・・も向か・・・・」
「こんな・・・しか・・・・・・が、憎い・・・に」
――どんどん、暗い闇の中に、引きずり込まれていって。
「必ず・・・・、殺す」
「あんたは・・・・かも・・な・・ど、でも、そう・・・・・・ないんだ」
――最後に聞こえた、その声は。
「・・・・絶対に、許さない」
そこで、私は目を覚ました。
一瞬にして覚醒した私は、まず視界に青空と木々の新緑を目にして、次に自分の手を動かして見る。
細く色白のその手は、どうみても女の手。いや、自分が女であることはちゃんと知っているけど。
そしてやっと、自分の息が乱れていることに気付いた。
寝ていただけなのになんで息が切れているのか、なんてことを考えることなく、私は身体を起こす。
自分の身体が目に入るが、なんというか、いかにも普通の女の子、って言う感じ。
七部丈の水色のチュニックに、膝よりちょっと上の、これまた青いスカート。
靴は・・・ヒールではない、しか判らない。
なんだか判らないけど、自分の着ている服にもかかわらず、自分で着たって感じがしない。
誰かが選んでくれたのを着たのかな。
・・・何故か、そこらへんは思い出せない。
いくら考えても思い出せそうにない。
うーん・・・てか私、今地面に座ってるのか。とりあえず立とう。
で、立ってみたのだけど・・・ここ、どこだろう?
周りには木しかなくて、一応寝転がっていたところは道のようになっているけど、舗装とかはされていない。
・・・というか、何でこんなところにねっころがってたのかな。
駄目だ、思い出せないし考えがまとまらない。
こういう時は・・・とりあえず歩こうかな。
こんな所に居ても何も判らないだろうし。
「あれ?ねえねえ、あそこに居るのって、もしかして人間?」
「はぁ?こんな所に人間なんて居るわけ・・・人間みたいね」
「何でこんな所に人間が・・・」
・・・歩き出そうとしたら、自分の後ろの方から声が聞こえてきた。
まさか誰か居るなんて・・・しかも声からして、三人の少女。
これは色々聞いてみるしかない。ということで振り向いて少女達に声をかけます。
「あの、すみませんがここはいっt」
・・・はて、私はまだ寝てるのでしょうか。
「・・・声かけられたけど、何で急に止まったのかな?」
「さぁ・・・」
「あ、もしかして妖精見るの初めてだったりするのかしら」
「えー?いくらなんでもそれはないでしょー」
・・・いや初めてだよ!?
生まれてこの方・・・何年だったかちょっと言わないでおくけど、背中に羽を生やした女の子なんて見たことないよ!?
ちょっと待って・・・まさか、本当に妖精?
「おーい、ちょっとー?」
「ひゃい!?」
「うひゃあ!?」
「いや、なんでサニーが驚いているのよ」
呆然としていたら突然、オレンジ色の髪の子が声をかけてきて、思わず驚いた。いや驚いていたけど。
変な声が出たと思ったらその子も驚いちゃった様子。
そして金髪ロールの子があきれたように言う。ていうか、オレンジ髪の子、サニーっていうんだ。
・・・じゃなくて!!
「・・・え、もしかして、本当に妖精ですか?」
「もしかしなくても妖精よ?」
「・・・もしかして貴女は外来人、というやつかしら」
・・・少女の姿をした妖精。外来人という単語。あとその他もろもろ、主に周りの景色とかを全て考慮したうえで、今自分がどこにいるのか、どういう状況なのかを結論付ける。
「じゃあ・・・ここは、幻想郷、なのですか?」
「「「あたりまえじゃない」」」
・・・どうやら、私は幻想入りしてしまったようです。
しかも、自分の過去「だけ」を失って。
「・・・ええぇぇぇぇぇぇーーーーー!?」
あぁ・・・どうなるのかなぁこの先・・・
******
その少女が、自分の身に起きたことを理解した頃。
幻想郷の別の場所で、二人組みの女性が話し合っていた。
「・・・以上より、やはり博麗大結界の周りに、また別の結界が張られていると結論付けることにしました」
そのような内容の報告を、お札の貼られた帽子を被る、尻尾の生えた女性――八雲藍が口にする。
その報告を受け、僅かに顔をしかめる、藍の主にして、二人組みのもう1人――幻想郷の賢者、八雲紫。
「・・・いかがなさいますか?」
藍のその問いに、紫は顔をしかめたまま口を開いた。
「・・・現状影響がないなら、調べるだけにしておきましょう」
「判りました。これより、結界の性質を調べることにします」
紫の出した結論を受け、藍はすっ、っと姿を消した。
結界の調査に向かったのだろう。
藍が居なくなったことを確認して、紫はため息を零す。
目を閉じて、ぼやくように、つぶやいた。
「・・・始まってしまったのね」
それだけ言って、紫はスキマを生み出し、その中に消えていった。
どうも皆さん、最近艦これ熱がヤバイもやしです。
蒼紅抄第2話、お待たせいたしました。
さて、お気付きの方もいらっしゃるでしょう。
まさかの、一人称視点主軸の物語です。
今まで三人称でしか書いてこなかったので、今回は挑戦も兼ねて一人称主体で行こうと思います。
なお、基本は一人称、ただし「******」以降の行では三人称視点で書いていこうかなと。
それが一話の途中だったら「******」で挟まれている間が三人称です。




