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カレン  作者: f/1
異世界
9/62

8

作者打たれ弱いので、作品への誹謗中傷は一切見なかった事にします。酷い場合は警告無しに対処したりもしますのであしからず。

誤字脱字や引用の間違い指摘などはとてもありがたいので、知らせてやろうという奇特な方は宜しくお願い致します。

また、全ての作品において、暴力や流血などの残酷な描写、性的な表現がある可能性があります。不快に感じる方、苦手な方は読まないでください。


3/27:前書き変更

4/4:行頭空白挿入(内容変更無し)




 イヤんなっちゃったらしく、色んな言われ方をした師団長野郎はその後、さっさと部屋を出て行ってしまった。去り際、私の左手の親指に嵌った指輪をチラ見して行った気がする。やはりただの医療器具ではなさそうな予感。藪蛇怖くて聞けないけどね。

 で、伯爵様は更に幾つかの説明を足してから、明日はもっと話をしようねーと満面の笑みで言って退室なさった。私がどこに、どんなに困惑しているかなど、とっても綺麗に無視の上で。知恵熱出そうだ。

 2人が去って初めて動き出したアンナマリア侍女が「余計な事すんじゃねえぞ」的な事をブ厚いオブラートに包んで言って、シーツの取り換えや水の補充など整えた後、一切の淀み無い所作ですたすたと去って行った。

 ちなみにその時、簡易トイレを渡された。壺だ!蓋付きなのを喜ぶべきだったかも知れないけど、びっくり眼で受け取るしかできませんでした。トイレットペーパーは無く、藁半紙と綿を混ぜたような布(紙?)で拭いて、一緒に壺へ入れろと言われた。んー、垂れ流しからは相当昇格した。と無理やり納得。

 伯爵様曰く、私、この部屋勝手に出たらその瞬間に処刑されるらしい。怖い。

 全く気付かなかったが、扉の外には常に兵が居て、私に不審な様子が見えたりしたら即座に殺すように命じられてるんだって。コワすぎ!しかもどんなに上手く抜け出しても、この建物と周辺が、ベーレンドルフ師団長野郎率いる精鋭師団の詰め所的な場所なので、民間人なんか3歩くらいで見つかるだろう、って伯爵様が。2歩下がる間も与えられないらしい。挙句の果てに、この王宮自体が馬を使わないと1日で敷地外へ行けない規模だと言われて、元々欠片しかなかった逃走意欲が完全に消滅した。無理、ゼッタイ。

 そんなこんなで独りになって。

 長くてでっかい溜息が出た。

 私が王様君に失神させられたのが早朝で、今は同日の夜中だそうだ。でも眠気が来ない。


異世界。大国バルバトリア。魔法。魔導具。魔法使い。騎士。お妃様。王様。侍女。監視。管理。容疑者。拷問。処刑。保護。守る。明日。


・・・・明日、か。

 来るんだろうか。この世界で、私に。

 素人ドッキリ番組の線はこの怪我からして有り得ないけど、夢オチの可能性は捨て切れてませんが。だって夢って見てる最中は超リアルじゃん。ね。

 ああ、だけど、残念過ぎる事に、私は以前こういう小説を読んだ事があったのです。ええそうです。所謂「異世界トリップ物」と呼ばれるジャンルのファンタジー小説です。ここまでの突拍子もない展開を、今この瞬間にも感じる五感のリアルさを、本能が感じ取っている実感を、この「異世界トリップ」という言葉が説明しやがる。たった一言のくせに、完璧に。どうしよう。

ほんと、どうしよう。

 ここが、本当に私の知らない、全く別の異世界だったとして。

 去り際の伯爵様の説明で、元の世界に戻る方法が無い、って言われてしまったのだった。

 調べてあげるとも言ってくれたけど、異なる世界を行き来するなら大掛かりな魔法か魔導具が関係するに違いなく、そうすると魔導師筆頭の伯爵様が知らないはずは無いらしいから、すぐに見付かる様なものでない事は確かだ、って。最悪そんな方法は存在せず、このまま永遠に元の世界へ帰れないって言われた。

 日本どころか、地球へ連絡を取る事すら不可能だなんて。

 うん。別に、日本で送っていた人生に特別な思いなんて無いよ?人付き合い苦手で引き籠り勝ちだし、人生の目標的なものも全く無かったし。

 家族も年に1回会うかどうかの関係だったし。別に仲が悪い訳じゃないけど、ここ数年は顔を見ると「結婚しろ」だの「孫産め」だの言われて、正直一緒に居る事が苦痛でしか無くなっていたから、連絡もほとんど取っていなかった。親不孝者でごめんなさい。

 友人関係は言わずもがな。仕事の人間関係も、強制参加の忘年会くらいしか出てないし。

 私にとっても、私と関わる人達にとっても、香坂花蓮は特に必要では無い存在だ。

 じゃあなんで夢オチを諦められないのか。それは単に、この世界で経験した理不尽が理由だ。あの顔面にじにじ事件である。

 香坂花蓮に拘りは無くても、ボケてても支障無く生きてられるくらい平和な日本には拘りがある。世界・・・地球上でも有数の温い生活環境を出た事が無い私にとって、この世界の、この国の、この王宮の 価値観は到底許容出来るものじゃない。落ち着いて考えてみても、やっぱダメ。無理。

国の長が無抵抗な女性の顔面踏み躙るのがまかり通ってるんだよ?

ちょっとでも逃げようとしたら裁判も無しにその場で殺されるんだよ?

 信じられない。受け入れられない。

 今すぐにでも日本へ帰りたい。

 いつもの書店で本を買って、いつものレンタルショップでDVD借りて、いつものコンビニでお菓子とジュース買って、あの安マンションに帰りたい。着る毛布に包まって、美容液パックしながら借りて来た映画を見るの。その後ベッドで美顔ローラー転がしながら小説読んで、夜更かしするの。

 極論を言えば、怖い目に遭わず、大好きな独り遊びに耽って、最低限労働して最低限健全に暮らせる、平和で安全な場所ならどこでも生きていける自信は有る。知己や味方が居ないとか瑣末な問題気にもならない。独りぽっち?好き放題できるじゃないか。素敵。

 だからここはダメなのです。この場所は嫌なのです。日本が一番適していたのか、私が日本へ適したのか、日本での元の生活に戻れないのなら、極力それに似た環境へ移りたい。間違ってもこのバルバトリア王宮に落ち着く気は無い。

 現実問題、伯爵様が日本へ帰る方法を見付けてくれるまでは、自力で自分の身を守って暮らさなくてはいけない流れだ。たぶんどう足掻いても。長期戦を覚悟するなら、この世界で身を立て、自分でも帰る方法を探す事が出来るだろう。

 逆にこのまま何もせずに要る事が可能だとしても、その選択肢を選べば結局行き着く先は拷問か処刑。現状、私は大罪の犯人なのだから。


よし。しょーがない。ちょっと頑張る。


 従順にしていれば拷問は回避できる臭いし、この調子なら数日もすれば怪我も回復を迎えるだろう。伯爵様にこの世界の常識等を教えてもらって、ちゃんと動けるようになったら身の証を立てる方法を検討しよう。王様君に「ワタシ、テキ、チガウ」と訴え、理解して貰い、犯人扱いを取り下げさせて。

 そこまで辿り着かないと。自力で。

 伯爵様を上手く使って、失礼、ご協力頂いて、何とか自立を目指してみよう。クリスたんにお願いしたら一発で諸々解決しそうな予感もあるけど、彼女は王妃様、それも正妃様だ。正妃寝室への不法侵入という大罪を犯した者が、オネダリ出来る身分の人じゃないだろう。伯爵様らの言葉から、現代日本にはあり得ないレベルで階級意識が高い世界だという事は分かっている。いや、現代日本でもあり得ないけどね、皇后様に民間人が己の為だけの何かを強請るとか。

 てゆーか、自立と言えば労働・納税が基本だが、異世界人犯罪者の私に可能なのか。

 出っぱなで挫けそう。いやいや、そもそもこの国のシステムすら知らない内に落ち込んじゃだめだ。うん。底辺からのスタートだという事を、今晩の内にきっちり認識しておかなくちゃ、事ある毎にへこみまくって進めなくなるね。

 千里の道も一歩から。

 ローマは1日にして成らず。

 ダイエットはその日から。

 明日伯爵様に会ったらまず、今後暫くのごはんをおねだりしよう。この世界で明日が来れば、ね。



 目を覚ますと日本の自宅のベッドに居るような気がして、碌に眠れないまま、当然のように明日はやってきた。




お読み下さりありがとうございます。お疲れ様です。


あげぽよ更新その2。

あんまり更新し過ぎると、後に修正出まくりそうなので自重します。

調整済みしだいアゲますので、どうか長い目でお願いします。

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