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カレン  作者: f/1
光と闇
60/62

58

作者打たれ弱いので、作品への誹謗中傷は一切見なかった事にします。酷い場合は警告無しに対処したりもしますのであしからず。

誤字脱字や引用の間違い指摘などはとてもありがたいので、知らせてやろうという奇特な方は宜しくお願い致します。

また、全ての作品において、暴力や流血などの残酷な描写、性的な表現がある可能性があります。不快に感じる方、苦手な方は読まないでください。




 イーザスの街だけでなく、カルヴァート市自体が商業の盛んな地域だ。

 物流量においては、フリード領内で3本の指に入るらしい。西の王都と、東は国内随一の鉄鋼産業で栄えるフレドホルム市とフリード公家直轄地の、丁度中間点に位置するからだ。東隣のヨハンソン市が地形に若干難が有るのも手伝って、商品はカルヴァート市で必ず一度足を休める。

 腕に覚えのある行商人達は王都―フレドホルム市都間が最短距離の裏街道を選び、街商人が雇った一般的な隊商は快適なフリード大街道を行く。万が一の為の傭兵等を数名連れただけの彼らは、より安全な道と寝床に金を掛けるワケだ。

 故に、往来激しい大街道上で堅固な防護壁を有するカルヴァート市都は、日々膨大な数の隊商とそれ目当ての客等が出入りしている大都市中の大都市だった。

 その上、最近は裏街道を使えなくなった行商人達まで流れて来て、都の中も外もとんでもない量の人間と物が行き来する事態となっていた。

 特に行商人に対しては元来然程想定されてない構造の街らしく、防護壁の外でテントを張る行商人達が市警軍に怒鳴られている姿が見られた。貴族馬車の通り道にまではみ出してテントを設営してたりするからだが、彼らとてそうせざるを得ないのは明白で、整備する市警軍側にもあまり険が無く収まりが付いて無い。

 仕方なく路銀を費やして街中に泊まろうにももう空きが無く、宿泊費や街路での露天設営許可料も高騰してしまっている。かと言って街からあんまり離れると魔獣の危険が増し、客足も届かなくなる。どちらにしろ商売にならないのだ。

 どうせ数日で旅立つ彼らだ。滞在中出来るだけ防護壁に身を寄せて過ごしたいだけ、って状態らしい。

 しかし、大街道とカルヴァート中央街道の合流地点である十字路を内包する形の街にとって、東西南北の街門外で行商人達が街道にはみ出て商売していると、入街の為に速度を落とす馬車の足を更に遅くさせてしまう。

 普通の辻馬車ならそれも良いが、都の中心にある子爵居城とその周辺の高級地区にしか用事の無い貴族の馬車にとっては、無駄な時間浪費に過ぎない。同じく足止めされている者達の中に身を置く事にもなるので、警備面でも厄介でしか無い。

 しかも、それが高名な筆頭魔導師を乗せた宮廷魔導院専用馬車なら尚の事、街門周辺は結構な騒ぎになってしまった。市警軍が通常より多めに配されてるらしく、危険性はそれほど高くない様だけど。

 どうやらカルヴァート子爵は伯爵様を迎える事を栄誉とし、市都中にご来訪予告をしまくってくれていたらしい。都の中は更に輪を掛けた賑わいで、どう控え目に見てもお祭り状態だった。まさかパレードの中心に身を置く日が来ようとはね。

 ただし、楽しい愉快なだけのお祭りでは無い。

 行商人達が溢れ返っている所為か、都の中心を走る大街道の道幅が凄く狭くなっている。街門の外の半分以下の幅だ。小窓からチラ見しただけでも、行商テントや出店の量が尋常じゃ無い事が分かる。きっとこの半分以上が本来、イーザスの街に在った筈の店なんだろう。

 常の状態を失っている都は、ピリピリと神経が張り詰める様な尖った緊張感がそこかしこから感じられた。

 このすし詰め状態の元凶が、すぐそこにある戦争なのだ。無理も無い。

「ヴァレンティヌス様!ようこそカルヴァートへ!」

「戦火に焼けた故郷をお救い下さい!」

「どうぞウチの商品をご覧下さいな!」

「魔獣をどうにかしてくださいよ!」

「戦争に勝利を!帝国へ制裁を!」

 けれど馬車の中まで響いて来る人々の声に、リ魔ジンへ押し寄せようとする人の多さに、私は放心状態になってしまって。

 この時、伯爵様が低く漏らした言葉の意味は、深く考えられなかった。

「言われるまでも無い」

 まるでどこぞの三白眼みたく、赤い瞳は無感情だった。

 あれはどの声への返答だったのだろう。


 一見お祭り騒ぎの市都だが、中央部に聳える領主居城へ近付くに連れて静けさが戻って来る。高級地区に入る少し前から、窓からゆっくり外を眺める余裕が出来た。

 今まで立ち寄ったどの高級地区でもそうだったが、建築物の6割以上は巨大で豪奢なホテルかと思う。数えて回った訳では無いので、遠目で見たり少し歩き回ってみたり窓から眺めた景色での判断だけど。

 残りは、世界遺産かってツッコミたくなる絶景さの公園や、頻繁に警邏が巡回するもうちょいでアスファルトだねレベルに補正された石畳の散歩道、着るだけで何十分も掛りそうなドレスが並ぶ店、そのドレスを着た人達がゆったり寛ぐ姿が見えるレストランだかサロンだか良く分からない建物だった。魔導街灯の数も一般地区の倍くらいの密度で設置されており、日が暮れるには早い時間だがもう自動で灯り始めている。

 その上、総じて土地を贅沢に使っている造りで、日本の庶民では怒りを覚えるレベルの人口密度の低さ。特にさっきまでの一般地区がエラい事になってたので尚の事呆れた。

 しかしこの市都はやはり、ここまで立ち寄った町のどこよりも高級地区が大きく、派手でもあった。

 富み栄えている市の中心なのだから当然なんだろうけど、馬車に乗ったまま進めるってのは大街道を内包している特性だ。これまでは一般地区と高級地区を隔てる門とかの傍らに大きな厩が有り、伯爵様でさえそこへ自分の馬と馬車を預けて、ホテルまではそのホテルが出している送迎馬車に乗り替えなくてはならなかった。

 けれど大街道が直接領主居城の正門に面しているカルヴァート市都では、街門の検査をパスしたらそのまま自分の馬車で高級地区も通れる。貴族に限っては領主居城の玄関前まで一気に行っても良いし、この街の高級ホテルには厩が各自完備されているのでホテルの玄関前まで乗り付けても良い。ので、この時点でもう何か特別な街って感じなのだ。

 しかも、その間通る道のあちこちに、自動魔導具のセキュリティシステムが設置されているらしく、適切かどうか微妙な言葉だが「近代的」と感じた。一般市民との落差が凄い。

 魔導具が有るか否か、どこまで浸透しているかで、生活に雲泥の差がある。やっぱ電気とか家電とかそんなのと同じ様な存在なんだろうけど、それにしても身分差でこれだけ生活に差があるのは不自然じゃなかろうか。

 それとも、そういう価値観はここでは不要の地球感覚だ、と捨ててしまわなければダメかな。

 なんとなく、嫌な気持ちだ。

 カルヴァート子爵の居城を見上げて、自分の中の整理の付かない感情に溜め息を吐く。

 この世界に来て以来立て続けにとんでも体験をして、どんどん整理出来なくなってきてる。臭い物用の蓋ももう殆ど閉まらない。正直、どう感じたら私らしいのかすらはっきりしない有様だ・・・というところまで、イーザスからここまでの比較的穏やかだった2日間で、たっぷり悪夢に魘されて漸く整頓出来た塩梅。

 日本ではもっと、出来事に対して速やかに、好きとか嫌いとかはっきり思ってた気がする。

 口や態度に出したりしないだけで、結構腹の中では自分なりに白黒はっきりしてた気がするんだよね。無論、世の中に自分の定規がどこまでも通用するなんて思ってないですけど。

 でも感じる事、思う事、考える事は、全て私の自在だった筈だ。思春期でもあるまいし。

 やっぱり、私の世界じゃないここでは、私の存在は曖昧なまま確立しない、って事なのだろうか。

 街のど真ん中で不自然な色分けの森に覆われた、広大な鳶色のお城を眺めながら少し、今更の疎外感に浸ってしまった。

 城に近い内円だけが、私にも馴染み深い緑色と茶色の、生物の気配がしない森。外円はクラッシィブ含む色取り取りの命の森だ。

 お前もこれくらい不自然な存在なんだぞ、って言われてるみたいだった。

 それこそ、言われるまでも無い。


 色んな意味で月光宮に寄って来た事に感謝した。

 5つの巨大な館から成るカルヴァート城は極めて煌びやかで、豪華で、派手だった。日本人の私にも分かり易くギラギラしていて、過剰な華美さが隅々まで行き渡っている。

 城の中を行交う貴族や豪商の人達のみならず、アンマリちゃんと同じ侍女服を来たメイドさんや、月光宮で出迎えてくれたロマンスグレーさんと同じ服を来た執事さんですら、ゴテゴテと装飾品が重そうだ。

 月光宮と同じ様に、調度品どころかその辺の壁や床でさえ素手で触る事が躊躇われる高級感だけど、触れない理由が、心情が違う。月光宮は指紋付けちゃったら目立っちゃいそうで触れなかったけど、ここは金粉的な物が指に着いたり複雑な装飾が壊れたりしそうで触れない。

 そしてそれは、城の持ち主にも共通していた。

・・・成金のヒト?

 迎賓館の玄関ホールまで出迎えに来て下さったカルヴァート子爵エミリオ・エル・カルヴァート様は、大量の布と糸と貴金属が使われている物っ凄いもっさりした燕尾服みたいなツーピースを着ていらっしゃった。

 シャラリと揺れる髪飾りから柔らかそうな靴の爪先まで、全体的にラメ入りの青と黄と赤と緑だ。ベースがどの色か分からないくらいの配色率で、たぶんきっと強いて言うなら、目の覚める様な原色のブルーが服の生地の土台で、コーディネイトの基本色なんだろう。

あ、じっと見たら目がチカチカするー。

 怖いのは、如何にも贅沢太りしているこのアラフォー子爵が、成金って言葉から連想される様な人物とは違いそうなところだ。はじめましての挨拶から世間話まででの判断だが、穏やかで大らかな貴人らしい貴人でがめつい感じが一切無い。

 優しそうな垂れ気味の糸目の笑顔に、血生臭さは無い様に思った。別に何もしなくてもお金が勝手に集まって来ちゃうんだよねてへへ的な事を、うっかり言葉の端々へ零している。そしてそのお金を溜め込まずに考え無しに使って還元してる、って感じの話もちょいちょい入った。天然臭い感じで。

 良くも悪くも生まれ付きのセレブ。正真正銘の貴族。お金を集める苦労をした事も無ければしようと思った事すら無いまま、先代から莫大な資金を源ごと引き継いだタイプなんじゃなかろうか。統治に関する実務も政務官任せとかだったらどうしよう。

 とは言え、この国で実際に政務を行っている人は貴族の子弟が殆どらしいから、彼も政治や金策に無関係で無い事は確かだ。この第一印象が化けの皮系の警戒心も捨ててはいけない。

 何れにしろ、初めて訪れたお城がここだったら、完全に半目になってしまったに違いない。月光宮の壮麗さを経験していたからこそ、営業用の笑顔や美辞麗句をド頭から完璧に繰り出せたのだ。

・・・いや、ほんと、向いて無いわ。

 城の雰囲気に飲まれる失態は犯さずに済んだものの、すれ違う煌びやかな貴人達に「侯爵代理ですよろしくどーぞー」って挨拶して回るのは、団体行動大嫌いな私にはやはり苦行だった。すんごい疲れる。

 今すぐこの人達、あの孤児達と会わせたい。イラ付いてそんな迂闊な考えすら脳裏を過ぎる。そのきらっきらの靴かたっぽで、彼らにどれだけ食わせられるか・・・ああ、いかんいかん。

 諸々を必死で飲み込み顔には一切出さない様苦心しながら、目的地の応接室までぐるーっと遠回りしてまでの、子爵による来客への伯爵様と私のお披露目に付き合った。挨拶回りはこの国の上流社会のマナーなんだとは知っていたが、数の多さはこれまでと桁が違ってしんどさ倍増。

 どこどこでなになにをされているほにゃららさま。

 もう脳が勝手に具体的な言葉を排除し始めた頃、漸く迎賓館の中でも更に超貴賓用の応接間に通された。体感時間で軽く2時間以上は掛った筈だが、これはほんの前哨戦。数日後には更に・・・やー、もう考えたくない。

 うっかりげっそりしそうなのを必死でにっこり笑顔に隠し、足を踏み入れた2階大広間脇の応接室は、しかしやっぱり他と同様派手に華美でちっとも気が休まらなかった。

はっ!まさかそれが狙いでこのケバさなのかしら?!

 訪れるカモを疲れさせて気力を削いで思い通りに誘導する、ってのは穿ち過ぎな気がしないでも無い。

 うー、軽く病んで来た。しっかりしないと。仕事仕事。





 お疲れ様でした。お目汚ししました事、心よりお詫び致します。


以下小ネタ・小話

 お久しぶりにてやっとカル市都に着きました・・・というか、無理やり着かせました。

 実はもう1つカル市都までにエピソードがあったんですが、流石にラブ甘詐欺臭が凄まじいのでカッティング。

 焦る余り、この章の内に強引にその手のシーンを捻じ込んでみたら、何か某キャラが別人っぽくなっちゃったので混乱中です。

 なのでやっぱり無駄文削減方向でペースアップを図りたいので、色々この先辻褄が合わなくなるかもですからその時は滑らかにお目を滑らせて下さいまし。。。

 そうです。これでもだいぶ削減してるんです。てへぺろ。

 そういやそろそろてへぺろとかも古くなってるんでしょうが、なにぶんこれの下書きしてたのは1年以上前なのでご勘弁を。

 あ、ちなみにこの物語、イケメンいっぱい出てきます(出てきてます)が、逆ハー的なものには一切なりませんのでそちらもご注意。

 ええまだ出ますよ。超級イケメン、重要キャラだけでも最低後3人は出ます。

 ・・・・・・オッサンに誑かされるピチピチギャル書きたいよー。

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