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カレン  作者: f/1
光と闇
53/62

51

作者打たれ弱いので、作品への誹謗中傷は一切見なかった事にします。酷い場合は警告無しに対処したりもしますのであしからず。

誤字脱字や引用の間違い指摘などはとてもありがたいので、知らせてやろうという奇特な方は宜しくお願い致します。

また、全ての作品において、暴力や流血などの残酷な描写、性的な表現がある可能性があります。不快に感じる方、苦手な方は読まないでください。




 この街のすぐ西脇を通っている、南北に伸びる空追い街道。それを北上すると、帝国との境目に大きな砦が在り、そのほんのちょびっと先に国境線がある。国境線の王国側には国境の砦と連動している魔導装置が仕掛けてあり、帝国側には柵や壁が張り巡らされ、どちら側も24時間体制で軍が見回りをしている。

 と言う事もあり、主に魔導的な理由から、カルヴァート市にとってその砦と国境線はほぼ同義で、砦の名前は「竜骸」って言うのだそうだ。

・・・なにそのネーミング。強いのか弱いのか分かんない。

 一瞬伯爵様が名付け親かと疑ってしまったが、曰く、エミリオの森に関する古いお伽噺がこの地方にはあって、それに関連してるらしい。地図上でも確かに、砦は森の北西の端っこと目と鼻の先だ。ちなみに空追い街道って名前もそれと関係あるんだって。竜と空、ね。

 ともあれ、アークライト様達がまだ現場に居た今朝の時点での戦況から、竜骸の奪還はもう決まったも同然だそうで。

・・・ん?あれ?・・・えーっと・・・。

 エミリオの森の騒動鎮圧に向かったのは、黎明師団の一部と英雄様だ。件の東軍援軍フォローに、森へ出張中の部隊からも半分以上出したので、明日森で私達を迎えてくれるのは残りの十数名らしい。

 そして、東軍の人員が減ったのもあって、急遽師団長野郎は前線の竜骸奪還戦に戻って指揮を執ってらっしゃるけど、明日には森へ戻って来るってさ。

うっわー・・・すっごいスケジュールじゃないの、アノヒト・・・。

 全く寝て無いんじゃないのか、と怖くなってきた。だって一昨日は森で戦闘と徹夜の魔獣狩りでしょ?そんで前線に取って返して防衛戦でしょ?そんで明日にはまた森・・・彼の機嫌が良いワケないよ、この流れで。

 伯爵様のグラスの様な花瓶の様なコップにお代わりのお水を注ぎながら、嫌な予感に一瞬上の空になってしまった。もちろん、表面上はアンマリちゃんのモノマネ給仕編続行中ですが。

 私とは違う方向の思考に集中力半分持ってかれてる様な赤い瞳で、その流れ落ちる清水を眺めるとも無しに眺めている伯爵様は、騎士様に他の詳細もご所望になった。

 分かったのは、国軍東軍がどこまでも中将中心に動いているという事。

 まず、戦力全部きっちり使ってるのだとかで、表向き不審な部分は無い。多少フレドホルム市寄りな配置だが、それは平素からそうらしい。

 開戦宣言後は、総司令官フレドホルム中将閣下がヨハンソン市国境城砦の本隊を、副司令官のフランシス・ブルィンツァロフ准将が最前線カルヴァート市国境へ前線部隊を、それぞれ自ら率いて善戦している。

 東軍も大変なんだよー、くらいは言える体裁を整えてるって事なんだってさ。

・・・なんだかなあ・・・。

 帝国軍はカルヴァート国境に黎明が到着した事を受け、体勢の立て直しを図る方向へシフトしつつあった。

 本来なら黎明師団は帝国軍が引け腰になっている内に一気に攻め込み、特攻隊としての面目躍如、最低でも帝国軍最前線基地まで侵攻したかったが、フレドホルム中将のお陰でそうも行かなくなった。下手すると、国境の東軍が半分減ったこれを機に、リ・リーから増援を得て攻勢に切り替えてくる恐れまで出て来た。

 一連の動きが黎明に手柄を立てさせない為の策略だったなら大成功です、中将。ただし軍人としても人としても最低ですが。元々勝ち戦なのに、味方が一気に攻める機会を逃させてどうすんだ。

 地形的にリ・リーも帝都も近く、敵将皇帝もすぐそこに居る。長引く戦争じゃない予感は誰しもにある。その分、功を急くお馬鹿が湧き易いのも分かる。

 でも敵方がそれを手ぐすね引いて待って無いワケが無いのに。

 伯爵様が言うには、3公家を始めとする各勢力がもちろん色々動いてるので、そうそう帝国軍に優勢を取られる事態にはならないそうだ。窮鼠猫を噛むって事に気を付けてさえいれば。

 問題なのはその、中将の裏に居る人物。もしくは組織、派閥。その動きや目的を掴まない事には、今後も黎明は満足に活躍してられない。

 でもだからこちとらそんな事は正直あんまりどうでも良いんだってば。軍や貴族がどこまで民間人とその生活を守ってくれるのか、期待出来ないってとこが重要なのだ。

 エミリオの森で人為的に魔獣化させられた動物達の数は極端に多く、対応が遅れていたら帝国側のみならず、国内の森の近隣にも被害が出ていただろう事は確実だったらしい。むしろ国内外問わず、被害が出てから制圧して見せた方が色々と効果的で・・・ああ、考えるのも嫌な発想だ。

 つまり、だ。お貴族様達のお考えには時々、平民の命や生活がモノとして登場するって事だ。ただの利用可能な道具として。

 お伽噺でも、大昔の歴史物語でも無く、自分も身を置く今ここにある現実の中で。


「灰被りお婆の曾孫とゲイルは仲良くやってるのかね」

灰かぶり?!シンデレラが居るの?!

 こっちのシンデレラはご存命でおばあさんの様だ。しかもひ孫までいらっしゃる。そんなばかな。

 この世界にも地球で有名な童話があったのかと驚愕している私に気付かず、アークライト様は恐縮しきった様子になってしまった。突然の話題転換に驚く間も無いらしい。

「導師、どうかご容赦を。 准将は現在、師団長と竜骸に居られるかと。東軍と合流当初、セシーリア様もお元気でいらっしゃると、師団長と准将がお話になっているのをお聞きしましたが・・・」

「まだくたばってないのかあのお婆め!」

 わっはっはっ、と陽気に笑い飛ばす伯爵様と、冷や汗を拭う3名の騎士様。お気の毒に。

 そして掌を返す様にぴたりと笑い止み、奥底が笑って無い微笑みを取り戻した赤い瞳に、皆さん顔を引き攣らせてしまった。

「で? 曾孫殿は何をしているのかね?この状況で」

 怖い怖い。この3人には何の罪も無いのになあ。あ、話題変わってなかったね。

「は・・・いえ、申し訳ありません。東軍、国軍の事でございますので、我々には分かりかねる問題です。が、どうも良い顔をされていなかったご様子。黎明の一層の協力を仰ぎに来られていました」

 んー、つまり前線に立たされている東軍副司令の、えーっとフランシス・発音出来る気がしない名字准将様は、上官フレドホルム中将の完全な手駒ってワケじゃないのか。階級的にも微妙そうだ。

 会話が途切れた隙に訊ねてみる。直接准将の事を訊ねると色々藪蛇っちゃう事請け合いなので、ちょっと遠回しに。

「お師匠様、セシーリア様と仰る方はどうして灰被りなんですか?」

「ん?ああ、魔薬騒動の頃にね、暴徒に焼かれた家々の灰に塗れても構わず、自ら駆け擦り回って自領を守った、という伝説の持ち主でね」

「恰好良い方ですね!」

 底冷えする何かを、取り出した時と同じ位あっさり引っ込めて、伯爵様は普段の飄々とした感じに戻った。若い衆がその様子に目を白黒させているのが気の毒で仕方が無いが、すぐ慣れるだろうからそっとしとこう。私もそうだった。と言うか今はそんな事よりシンデレラの由来のが気になります。

 バルバトリアのシンデレラは肝っ玉母さん的な方なのかしら。胸熱。

「しかしその正体は、バルバトリアで最も狡猾な老女狐だよ」

「素敵!」

「素敵かね。悪趣味な」

「私、お会い出来るでしょうか?」

「どうだろうね。ブルィンツァロフ領は国の北部だし、お婆は現役の伯爵で忙しくしておいでだしね」

 濁された。彼女が何者かは必要な話では無いのか、もしくは逆に重要過ぎるのか。准将の話をするのに一々彼女を持ち出したって事は、このお二人はただの血縁者ってだけじゃないって事だと思うんだけどな。フレドホルムの御兄弟みたく、仕事上とかでも影響し合ってるからこの流れで話題に上がったんじゃないのかなあ。

 うん、気にしておいた方が良いかも。覚えとこう。国一番の女狐肝っ玉シンデレラなセシーリア・イル・ブルィンツァロフ様。

 ああ、やっぱり発音出来る気がしない。ぶりんたろふ?

 自動吹き替え状態では、例えば「林檎」も「アップル」も、この世界にりんごが存在しなければ発音だけが伝わり未知の言語とされ、りんごが存在するならどっちでもそのままで会話が通じる。ちょっと本気出して「アポゥ」って発音したら、りんごが存在しなかったらやはり発音がそのまま伝わりきょとんとされ、りんごが存在する場合はとっても変に訛った「アップル」に聞こえ、同時にりんごとして認識される。

 王宮で伯爵様相手に色々試してた時、伯爵様とチャランスから何度か爆笑を獲得しちゃいましたよ。それぐらい発音ミスは地球同様訛るって寸法だ。時と場合によっては、とんでもない恥や誤解や悪目立ちを招くのだね。今更ながら横文字への恐怖心が増す。こっえー。

 准将のお名前の場合、いっそプリンタルトくらいの噛み方を用意した方が安全かしら。

「では、例の件はどうか。そろそろ草の根も知っておきたいのだがね」

 無駄話を切り上げる様、普段より少しだけ難しそうな顔をした伯爵様がアークライト様へ訪ねた。何の事だろうと内心首を傾げながら脳内を切り替え、皆様へ何度目かの水のお代わりを注ぎに行く。

 食事はなかなか減らないが水はガンガン減る。上官とは違う種類の英雄に、半ば無理やりディナー付き合わされて緊張してらっしゃるのだろうな。フォレット様なんて目が喋る人喋る人を追っている。でも食事中なのに料理は見もしない。

「は、全て確認済みです。導師のお考え通りで相違ありませんでした。如何致しますか」

 黎明に随行する導師に、こっそり付けられたストーカーはチャランスだけではない。むしろ、好意的なストーカーはチャランスだけだ、って表現の方が早いらしい。

 そりゃそうだ。急に派手に動き出した大狸を野放しにする勢力があるワケが無い。

 随行って言ってるのに黎明の大々的な護衛を受けなかった理由は、私が居る所為で行軍速度に追い付けないってだけじゃなく、伯爵様をストーキングしたい人達を煽る為でもあった様だ。私が意味不明な単独行動をするのも、彼らの興味を惹いてとってもお役立ちだったらしい。こっわっ!

 そんな沢山のストーカーに愛されている伯爵様だが、お気に召したのは極一部だけ。一通り報告を聞いて、器用に右の眉だけ顰め不快気に言い放った。

「あの想定の範囲を超えんのなら、此度の対応には使えんな。 耳障りなだけの蝿に用は無い。捨て置け」

 その言い捨て方が一瞬、師団長野郎と似ている気がしたけど。

 想定の範囲とか此度の対応とか、話の流れでいくとフレドホルム中将問題とそれへの対応策・・・なんだろうけど、また結構な濁され方をされてる気がする。人死にを減らそう、って言ってくれたのを信じたい。

 ほんとは優しい魔導師が、そこへ焦点を中てていないとは思えない。思いたくない。

「ただし、ご立派な首輪が付いている犬に関しては、引き続きそちらでも警戒しておいてくれたまえ。特に王弟殿下と寄生虫は何をするか知れん」

 哀しい王様の哀しい腹違いの弟と、『白い魔獣』の一件で疑いのあるディートリッヒ・シュテンベルク闇夜騎士伯爵も、この人にスパイを放っているらしい。それも、うかうかしてると襲ってくる類のヤツ。

 今この瞬間も、ホテルの中や外でじっと窺ってるのだろう。もしかして私もう会ってたりするのかしら。街中ですれ違った人達の中に居たとか普通にありそうだ。遅れ馳せながらゾッとする。

「了解しました。その2者と3公家直下らしき者につきましては、師団長より既に命令が出ており、昨日の混乱に乗じて個別の監視を放っております。レーダも警戒を強めておりますので、お任せください」

 そうなのだ。怖いストーカーにあんまり本気でビクビクしてないのは、怖くないストーカーが気付いて見張ってくれてるからだ。

 ストーカーしながらプロのストーカーのストーカーも一緒にやっちゃうなんて、良く分かんないけどなんか凄い感じ。凄いストーカー。日本の一般市民には誤解されそうな特技名だが、チャランスはほんとに優秀な人なんだろう。

 しかも彼は交代する仲間が居ない状態で、高速移動するリ魔ジンに着いて来ながらで、ここ数日は完全な野宿だったのだ。ありがとう。たっぷりお手当貰うと良い。

「英雄閣下は慎重だねえ。権力闘争に余程嫌気が差していると見える」

 苦笑しきりでそう言った伯爵様は、ふと遠い目をした。ラーゲフェルトを出た頃から、こうして懐かしむ様な眼差しになる事が増えた。年かしら。

 師団長野郎が政治的なごにょごにょが嫌いなのは先刻承知の筈。だから私に恋人役なんてやらすんだろうに。なのに今更何をそんなに感傷する事があるのか。

「伯爵様、何か心配事ですか?」

 気になってしょうがないし、丁度会話が途切れたのを見計らって窺ってみた。途端、稀に見せる優しい笑顔になる美貌。

「心配で無い事の方が少ないよ」

なるほど。そりゃそうだ。

「そうですね。 では後で気分転換に、私の故郷の童話を聞かせて差し上げます」

 途端、今聞かせろと目を輝かせる伯爵様へ、反射で後でって申しあげたでしょと返しながら、驚きを圧し殺す様な微妙な空気になっちゃった騎士様達へ苦笑しておいた。

「お食事はお口に合いませんでしたか? 宿の者に言って作り直させましょうか?」

 もちろん、そんなもったいない事はさせないけどね。






 本作をお読み下さって、誠にありがとうございます。読み辛くてすみません。



以下小ネタ・小話

 頭がぼんやりするので小ネタとかってより、今回はキャラ妄・・・考察です。苦手な方、すみませんが緊急回避願います。


 作者動物好きです。

 昆虫は吐き気するくらい駄目なんですが、爬虫類とかイケる口です。

 なので、主要キャラとかには大抵イメージアニマルがあります。

 本作では以下の通り。

主人公=女豹にも女狐にも成れなかったいじけ癖のある中型犬

クリス=いつも怯えてぷるぷるしてるくせに実は無敵なリス

リヒト=絞めて失神させて丸飲みして中で消化する毒の無い大蛇

ゲイル=群れのボスに喧嘩売られてうっかり勝っちゃった狼

ランス=色んな皮を被れる超器用な狼

アンナ=滅多な事では爪を見せない鷹

ウィル=遠目愛らしい黒猫かと思いきや近付くと黒豹

王様君=遠目雄ライオンかと思いきや近付くとやっぱり雄ライオン

 キモくてすみません。

 お読み下さった方もこんな妄想してくれてると良いなあ、という願望でした。

 オワリ。


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