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作者打たれ弱いので、作品への誹謗中傷は一切見なかった事にします。酷い場合は警告無しに対処したりもしますのであしからず。
誤字脱字や引用の間違い指摘などはとてもありがたいので、知らせてやろうという奇特な方は宜しくお願い致します。
また、全ての作品において、暴力や流血などの残酷な描写、性的な表現がある可能性があります。不快に感じる方、苦手な方は読まないでください。
面倒臭がりで、流され気質の脇役気質で、根暗な小心者が、前向きにやる気を出して能動的に活動したりしたら、普段起こらない事が起こる。それも、悪い事が。
その現実をとても痛く、再認識した。
こんなことなら、大人しくしてりゃ良かったのに。
しかし残念な事に、この年になると、それがただの甘えた逃げ文句だと言う事も分かっている。情けない恥ずかしい非建設的な自己愛なのだと、理解出来てしまっている。
だからそんなに、真っ直ぐ私を見ないで欲しい。
バルバトリア王国領土内に存在する全ての街、町村、里、集落には、囲いがある。中と外をはっきりと分ける囲いの質は、基本的にその街の規模に比例する。効力のほども、その規模に大抵準じている。
効力っていうのはつまり、魔獣を閉め出す力だ。この囲いは防護壁と呼ばれる、自動魔導具なのである。
王都のそれは高さ5メートル以上はあって、中で人が生活出来るぐらいの厚みで、広大な街をぐるりと完全に覆っていた。これにより街の中での魔獣に関する騒ぎは、人災以外では全く発生しないとか。
転じてフリード大街道沿いにあるラーゲフェルト市のこの宿場町の防護壁は、私の脇腹辺りまでの木製の囲いだった。防護壁と呼ぶにはお粗末過ぎてどう見たって防護柵だけど、これはきっと敢えてコストを抑えた結果なのだろうと思う。
この町の中には1日中、屈強な場馴れした傭兵さん達がうろついてるんだから、多少対魔獣防衛に手を抜いたって大丈夫だ。その分、その傭兵さん達の起こすトラブル処理に、金と人を使いたいに違いない。
等とつらつら考えていると、今にも夜が明けそうな時間になってしまった。
ひとつ息を吐いて、踏み出す。
小心者のキャリアの所為で、防護柵から出る直前でちょっと躊躇ってしまったのでした。なんてお粗末。
お仕事お仕事・・・。
呪文の様に脳内で唱えながら、町の中と外を隔てる境目を跨ぐ。でも、やっぱりだからってどうってことは無かった。そしてこの一部始終をチャランスに見られているんだよね。恥ずかしっ。
照れてしまいながら西へ向けて歩く。町の明かりが微かにしか届かず暗く、眼前の大街道も人通りが殆ど絶えていた。むしろ街路灯が無い石畳の道路事情でこの時間に、1~2台馬車が通って行った事に驚くべきか。ヘッドライトの代わりに超明るい魔導ランタンぶら提げてたよ。
それほど大きな町では無いので暫くすると端っこに行き当たり、目的のテント群は然程待たずに見付かった。来た時に窓の外を覗いてたら見えて記憶に残ってただろう。そうしたら暗い中で不安にならずに済んだのに。
今日からもうちょっと外を見る回数増やそうっと。
町の西側の少し離れた場所に、北へ伸びる道がある。フリード大街道とは比べるべくも無い、馬車2台すれ違えるだけの土の地面の道だ。大街道と裏街道と呼ばれる道とを繋ぐこの道、これと防護柵との間に綺麗に収まっている色取り取りのテント達。まるで、予め彼らの為にそのスペースがあったかの様にぴったりだ。
そうこうしてる内に、案の定東の空が白んで来た。きっと丁度良い時間と思うんだけど。
朝市があるとしたら、もう起きて準備してる店もあるよねえ?
薄暗い中、ざっと見渡すだけでも十数張り以上はある全てのテントが今は閉め切られているが、近付いて見ると露天として機能する仕組みが見て取れた。皆一様に、テントの一面だけ真ん中が突き出し、上下に外側へ開けるようになってる。朝が来てそれらが開かれれば、テント群の中は客が通る隙間しか無くなるだろう。
町人や旅人達で賑わう様子を想像する。様々な商品と様々な人達と・・・おおイヤだ。人混みきらーい。
行き当たりばったりというか、予定外の行動中なので、より一層チャランスに見失われない様ゆっくりめに周辺を散策する。泥棒さんに間違われない様注意しながら。
でもそれは余計な心配だったらしい。
「おや?早いねお嬢さん。朝市はまだだぞ?」
進行方向奥、北の方のテントからおじさんが出て来て、すぐにそう声を掛けてくれた。如何にも人慣れした感じのその人は、くりくりの金髪が可愛らしい太った熊さんみたいなおじさんだった。すっごい髭の濃さだ。触りたい。
年の頃は50絡み。ふさふさの濃い金色の髭や睫毛の傍に見える笑い皺が、人の好さを物語っている様な人相。固太りで腕っ節にも自信がありそうなのが怖い気もするけど。
「おはよおじさん。親切にありがと。 あのね、ついでに頼みがあるんだけど」
ちゃんと買い物もするから、と素直にお願いすると、怖いくらいすんなり事が運んだ。
「・・・仲間を?構わんよ。つっても、今ちょうど皆起き出したとこだからな。水場に居りゃあその内集まってくらぁな」
金熊さんの言った通り、大街道の側道に走る小川の傍で金熊さんの洗顔風景をガン見している内に、あっと言う間に行商人達が集まって来た。ものの10分もしない内に、十数人の旅慣れた人達に囲まれる。
中にはうら若い少女も居てびっくりした。が、その少女も含め皆、町商人には無い力強い体格と佇まいを持っている。なるほど、これが行商人か。納得。
オナラしながら歯磨きをするおじさま達と、妙にこ洒落た風の20代前半な男性と、私と同年代くらいの癖の強そうな女性と、クリスたんと変わらない年頃のボーイッシュな少女が、一列に並んで身支度をしている。
・・・カオスだわ。
「んで?聞きたい事ってなに?言っとくけど情報も商品だよ?」
先手で釘を刺してきたのは同年代の女性だ。さっき裏路地で会った娼婦と違って、溌剌とした健康的な色気がある。が、言った後渾身の力でうがいし出したので、私は驚きを引っ込めるタイミングが掴めないままだ。
しかしもう夜が明け始めて時間も無いので、驚きながらもやる事はやっておく。私は顔を覆っているので、驚いてガン見している事はあんまり気付かれてないみたいだし。
いや、違う。気付いてるけど、放置してるんだ。
行商人っていうのはどっちかって言うとヤクザな職業に近いのかしら。佇まいや表情からして皆、肝の据わり方が違うタイプな気がする。
いやいやいやいや。飲まれちゃダメだってば。
「もちろんちゃんと買うよー。主にお金、持たされてるから心配しないで」
言いながら、ポンとお尻ポッケを叩いて見せる。誰もがちらりと視線を寄越したが、そこには特に悪感情は見えなかった。助かった。激しい上流階級嫌いは居なさそう。
「でね、聞きたい事ってのはね、えっと、変な物?売らなかった?や、買わなかった?って事なんだけどね」
少し覚束無い感じで喋って、小首を傾げて見せる。と、その場の何人かが「あ~あ」みたいな声を出した。残念そうだ。少女に至っては「ダメだこりゃ」と呆れ返った溜め息も吐いた。
よしよし、大丈夫。この調子。
「落ち着いて思い出しなお譲ちゃん。わしら急に逃げたりせんから。ご主人さまは何て聞いて来いって言ってた?」
金熊さんと似た雰囲気のおじさんが、太く男らしい声で投げ遣りに言う。他の人達はもう身支度に集中し始め、私への警戒も興味も薄くなった。金熊さんは朝ご飯の為だろう、小川脇の地面でバケツみたいな形の魔導具に火を点け、その上に鍋を掛ける。
お!屋外用コンロ?バーベキュー的な?
そういった道具類は全て年季が入ってるのに、皆衣類は結構綺麗で新しいっぽい。旅暮らしだと逆に服のサイクルは激しいのか、それとも店を出す接客時だけ身綺麗にするのか。
この国の一般人の服装は、私の旅用の服を多様化させた感じだ。つまり形は肌を出さないどシンプルなワンピースが主流。生地や染色は様々だが、前合わせ型のボタンや帯が有る物は外衣にしか無いのが普通の様だ。
女性だけでは無く、男性もツナギみたいな物が一般的で、男女共にツーピースはちょっとしたお出掛け着以上の存在らしい。だからお貴族様のお召し物は普通ツーピースで、ボタンとかが必ず付いている。
王宮の外へ出て、貴罪者用の膝丈ワンピの意味が良く分かった。
行商人達の中には、原色のボタンや帯をたっぷり使ったシャツやレオパードみたいのを着てる人も居るが、そういう人達は服飾類を取り扱う店の宣伝も兼ねてるんだろう。それ以外の商人達は、綻びや色褪せは無いものの、一切遊びの無いワンピースだった。
誰一人として、足首より上を晒している人は居ない。男性なんて、上半身裸の人も居るけど、ツナギを腰元で纏める形にして下半身はちゃんと着てる。足を出す事に余程不快感がある様だ。
観察しながら、全身全霊で肩の力を抜く。ちょっとチャラい感じを意識してみた。
「んーっと、だからね、変な物売り買いしてないか聞いて来いーって言われたのよ。たぶん。国境の近くとか、今危ないら辺とかで、危険な物が行ったり来たりしてたらダメだから、ちゃんと情報収集しなきゃーって話」
同年代の女性にはとっても嫌な顔をされたが、ボタンいっぱいな美しい青系グラデーションカラーのツーピースを着た青年は、見事なホワイトゴールドの髪を靡かせながら取り合ってくれた。なんとなく師団長野郎を思い出す色合いのヒトだ。
って!あああっ!根元が茶色い!染めてる!
「まるで市警軍の捜査みたいじゃないか。君のご主人様はどなたなんだい?」
「黒色の染髪剤があったら売って下さい!主は魔導院のヒトよ」
「あるよ・・・って、えええっ?!」
言う順番間違ったかと思った矢先、青年の驚く声に他の人達の声も混ざった。巻物の縁からこっそり見渡せば、全員が私への興味を取り戻している。いや、それ以上だ。
しまったー、行商人なめてたー。
きっとこれだけで気付かれたのだ。その主とやらが誰なのか。当たり前だ。伯爵様が戦地に赴くのは公的な仕事なのだから、忍んでも隠しても無いんだもの。あちゃー。
「なるほどね」
「そういうことか」
「ふうん・・・趣味わるーい」
各々好き勝手に言うのは、私が頭の悪い残念なヤツという印象が崩れて無い証拠だ。じゃあ問題無い、続行しよう。ええ、実際ボロ出しちゃうアタマワルーですが何か?
「えっと、あの・・・とりあえず染髪剤くださいな」
「へ?あ、ああ。はいよ。ちょっと待ってな」
私と青年のその遣り取りを見て、更に残念な空気が辺りを包んだ。
お読み下さった皆様、本当にありがとうございます。読み辛くてすみません。
以下小ネタ・小話
今回の本文で、バルバトリアの一般市民は女性がマキシワンピで、男性がツナギってありますが、あくまでもその場で主人公が抱いた感想です。
ほんとは男性の半分か1/3くらいはマキシワンピです。ただしデザイン(シルエット)がツナギに近いので遠くからだと分からなかったり。
服の事だけじゃなく、一人称なので全ての物事に対して主観でしかありませ・・・当たり前ですねごめんなさい。
その当たり前の事をちゃんと本文で説明出来ている気がしないです。
本作は主人公が比較的年齢が高めで、物事を客観視しようと試みるタイプですので、ある程度は信憑性のある事言って(思って)んですが。。。
しかし彼女は結構自分の気持ちとか誤魔化すの上手いタイプですから、鵜呑みにせず疑いながら読んでみるのも一興ですよ。
と、つまらない駄作を読者様の力で面白い風にしようと画策してみました。名案だと思うのですが!
でもあくまで「風」なので、疑いながら読んでも何も得る物はありません(笑)。あしからず。




