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作者打たれ弱いので、作品への誹謗中傷は一切見なかった事にします。酷い場合は警告無しに対処したりもしますのであしからず。
誤字脱字や引用の間違い指摘などはとてもありがたいので、知らせてやろうという奇特な方は宜しくお願い致します。
また、全ての作品において、暴力や流血などの残酷な描写、性的な表現がある可能性があります。不快に感じる方、苦手な方は読まないでください。
翌朝、案の定寝不足の瞼に苦労しつつ、隣へ朝一の仕事に伺ったら意外な事に、師団長野郎が戻っていた。てっきりまだ不在か、もう不在かだと思ってたけど。
予想通りだったのは、既に服を着替えていたところだ。軍服の上着だけまだ着ておらず、風通しの良さそうな生地の紺青色の清潔なシャツが、上から3つもボタンを開けた状態だった。ゴツい胸筋まで丸見え。
・・・珍しいな。割かしきっちりしている人なのに。
シャツもズボンも洗いたてっぽく髭も無いから、さっき戻って来て着替えと洗顔だけしたのか。この階に風呂場は無く、師団長と言えど1階の団員用の大風呂を使っているらしいので、もしかすると本宮からの帰りに入って来たのかも。
朝帰りではあると思う。充血した目元を見るに、ちゃんと眠った様には思えない。
その所為だろうか、私を見下ろして来るその眼差しが、いつも以上に鋭く、暗い感じがするのは。
「おはようございます。朝食は如何致しますか?」
「手早く」と言いながら既に踵を返している背中へ、「畏まりました」と答えながら部屋へ入る。もう結構慣れたと思っていたが、うなじがヒリヒリするような緊張を感じた。師団長野郎の機嫌が悪いのか、昨夜掃除をしに来た時より部屋の空気が重い気がする。
怖いので、ご注文通り普段の手順を飛ばして、テーブルへ朝食をさっさと並べて水をコップへ注ぐ。椅子に座りもせず書類片手に朝食を摘む師団長野郎を横目に、とにかくまずカーテンを開けに行った。室内は燭台が灯っているが、陽光に敵う明るさは無い。
よーし今日も快晴!あははは!
それから普段の作業に入る。桶や布巾を変えたり、洗濯物もいつからだったか私の担当になったから回収して・・・と立ち回っていると、ふと視線を感じた。
「・・・・・・」
うん!無視!
怖過ぎるのでスルーしてみる。アンマリちゃんに見られているのだと脳内変換し、お食事中不快にならぬよう静かに動く。極力気配を殺し、自分は今妖精か小人なのだと自己暗示し、時間の経過を冷や汗の数で計った。
なんだろう、本当に、今日の師団長野郎は怖い。
暫くすると視線も感じなくなり、ほんの少し息が吐けた。結局師団長不機嫌野郎は普段の大食いが嘘の様に、最初に並べた物の半分も食べない内に「下げろ」と言って、そのまま執務室の方へ行ってしまった。
あ!上着忘れてるよ!
「師団長様っ」
「何だ!」
「っ!」
間髪入れずに怒鳴られた。慌てて呼び止めたのがそんなに失礼な事だったのか、完全に殺気立った氷の瞳に射抜かれて、身も心も凍り付く。あの時の恐怖が蘇りそうになって、慌てた。同時にまだ克服し切れて無い自分に、心底呆れる。
「失礼、致しました。上着をお忘れですが、よろしいのでしょうか」
大丈夫。声は震えなかった。ただもう、目線は彼の足元で精一杯だ。これ以上は無理。吐く。そんな不甲斐無い私に呆れたか、一拍置いて届いた返答は怒鳴った瞬間の苛立ちをたっぷり引き摺っていたが、心底鬱陶し気な溜め息交じりだった。
「そこへ置いておけ。用が済んだら下がれ」
「畏まりました」
彼の足元に落ちる影が、あの夜広い背中に見たのと似た闇色に見えた。
出発日が明後日と迫り、高まる緊張と不安をどう処理するかが一番の問題になってきた。だが、2~3時間置きに悪夢に魘されて目覚めるような状態でも、魔法の指輪のお陰で体調が崩れるような気配は微塵も無い。
本当、手放すのが日に日に怖くなる代物だ。
次の日には、クリスたんにオネダリしたご褒美が用意された。その証拠となる書類にサインをしても、もちろん気分が晴れる事は無かった。
だって私のサインは、カレン・コーザックは実在しないのだ。この瀟洒な書類には、何の効力も無い。
ご褒美の内容は、戦争が終わったら日本へ帰る方法探しに、王妃の名において協力する事。つまり国を挙げて手伝えよ、って事なんだけどね。これって言外に私の身の安全を、王妃様自らある程度保証してよって事なんだけどね。
この書類に何の力も無い上、前提として戦争が終わったらってなってるから、私にとってこのご褒美はあの場を取り繕う為だけのものでしかない。もちろんアワヨクバ的な打算は無くは無いけど、可能性は塵に等しいって考えてる。
しかも国中が反帝国色、戦争歓迎色に傾いている以上、クリスたん自身の立場も盤石では決して無い。伯爵様との繋がりがバレなきゃそこそこイケるかと思ったが、この日、伯爵様がもう既に相当駒を進めている事も知ってしまった。
王妃擁護する新しい派閥、戦争止め隊の隊長がパパ侯爵様で、ここに来て一気に活動を表面化、周知され始めたのだとか。副隊長の伯爵様も中立派だの穏健派だのと様子見していた派閥を幾つか取り込み、最早クリスたんはただの美少女お妃では無く、名実共に国母として起ち上がっている。らしい。
では他にどんな派閥があるかと言うと、現王を筆頭とする戦争大好き過激派と、現王の腹違いの弟を擁する隙あらば王座貰います派の2つが代表的なんだってさ。
国内外問わず寒々しい。しかも王様君全然こっち側じゃないじゃん、って伯爵様に訴えたら微妙と言われた。
王様君はシェルツェリア帝国が大嫌いで、滅ぼしたくて仕方が無い。でも、それ以上にクリスたんが大好きで、彼女が戦争ヤダって泣く度にぐらんぐらん揺れているらしい。なるほど、現実とは、人の心とは複雑なのである。
しかし、現王がある程度孤立した立場になったのは否定出来ないと、伯爵様は苦く吐き捨てる。ただでさえ王弟の母親の母国を攻め獲るのに、やり方が雑過ぎて火に油注ぎまくってるのだ。
詰まる所、クリスたんが自ら起ち王妃派が活動を活発にせざるを得なかったのは、伯爵様が表舞台に顔を出さざるを得なかったのは、ここで王弟派が一気に攻勢へ出るのを封じる為でもあったのだ。開戦に加え内部が割れたのでは、流石の大国も拙かろう。三竦みにして、どちらへも転ばない様に支えた。
実際はもっと複雑なんだろうけど、私の理解はそこまで届きません。
伯爵様はその裏で火元へ出向き、問題解決の糸口を掴みたいのだとか。それらしく濁されたが、素人考えでいくとその糸口とはたぶん、人間だと思う。
大帝国シェルツェリア皇帝その人か、その首、か。
今回開戦に至った直接的な原因が、その皇帝なのだから。
私がこの世界で生活しだして5日目の日、皇帝は自ら軍を率い、無宣言で突然国境付近へ向けて進軍した。宣戦布告が無くとも帝国軍の半分近くを引き連れたのだから、これは事実上の進軍だった。この事に刺激されて、各国境線の小競り合いも激化した。
そしてこれを受けた国内外の動きから、王様君は半分くらい仕方無しに開戦せざるを得なかった、という側面もあったようで。
事の最中に突然放り込まれた完全部外者の私には、計り知れないアレコレが渦巻いている。日々覚えられる範囲で情報と状況を叩き込まれるが、本当に理解できているかどうか自信は無い。そもそも叩き込んでくれる人が派閥の1つの裏番長なのだ。公平性も正当性もあったもんじゃない。
と言うより、得体の知れない私にここまで内情喋って、この人の首もだいぶ心配になってきた。
が、要するに、クリスたんは皇帝をどうこうする以外の、もっと平和的な終戦のきっかけを模索してるんだ。誰の首も欲しく無いって事なんだと思う。
その為に隠し玉のひとつとして打ち出したのが、私ってワケだ。
・・・なんて割高に見積もられてんの、私・・・。
その日の終わり。
一応全ての準備をお勉強会の時に済ましていたので、夜はいつも通りお勤めに励んでおいた。クリスたんには一言ご挨拶をとも思ったが無理でした。そりゃそうだ。おいそれと会える御身分の方ではない。
二人とも生きて再会出来る可能性は、とても低いのだけど。
伯爵様曰く、クリスたんとパパ侯爵様へは定期的に魔導手紙を出すので、その時一緒に私の報告も載せてくれるらしい。それで良しとしとくか。
せめてもと思い、いつものポジションで私を監視しているアンマリちゃんへは、折を見てちゃんと挨拶をしといた。反応は言わずもがな超絶事務的だったけど。
でもその日の最後、いつもなら「では失礼致します」とだけ言って、私の部屋の燭台全部消して立ち去る筈なのに、この時は燭台を1つだけ残してくれて。
「それでは失礼致します。お気を付けて」
そう言ってくれた。最後に着け足されたその言葉がただの社交辞令でも、凄く嬉しかった。
また、会えるのだろうか。この世界で会った誰よりも、気が合いそうだったこの娘と。
あ、もちろん私が一方的に気が合いそうだと思ってただけなんだけどね。えへ。
ちなみにこっそり付いて来るチャランスはいつもと全く変わらず、何事も無く「おやすみなさーい」と言って去って行った。今後はストーカーと呼んでやる。ストーカーって元々軍事用語らしいからそのまんまか。ちぇっ。
て言うか、なんでこっそりなのかチャランスに聞いてみたら、伯爵様の性格上その方が自然だからってのと、伯爵様が何かお考えだから、だそうだ。ロクなモンじゃないだろうけど、チャランス自身は深く知らない様だった。
本人には聞いてもはぐらかされたしね。知らないよ?
師団長野郎には会わなかった。忙し過ぎて、自室に居る間が無いらしい。伯爵様でさえ、今日は流石に日中1度退席したくらいだから。
ご飯とか、食べてんだろうか。現地で恋人役として再会した時、疲れと栄養失調でイライラしまくってたら堪ったもんじゃない。
かと言って、私に出来る事は何も無いけれど。
駄文お目汚し致しました。申し訳ありません。ありがとうございます。
以下小ネタ・小話
主人公にとってこの世界の食べ物がイマイチ以下の物ですので、料理の詳しい描写が殆ど無いです。
せめてそれによるストレスだけはちゃんと書きたいのに、主人公が現実や自分の感情から目を逸らしがちの人なので上手く書けず。。。
ともあれ、バルバトリアの食事は日本人の味覚にはほぼ適しません。という設定です。
食材からして日本にある物とは味や形状や匂いが少しずつ異質ですから、出来上がりは言わずもがなです。
もちろん個人の好みによりますが、イメージは、外国の方にとってのワサビや餅です。納豆です。




