24
作者打たれ弱いので、作品への誹謗中傷は一切見なかった事にします。酷い場合は警告無しに対処したりもしますのであしからず。
誤字脱字や引用の間違い指摘などはとてもありがたいので、知らせてやろうという奇特な方は宜しくお願い致します。
また、全ての作品において、暴力や流血などの残酷な描写、性的な表現がある可能性があります。不快に感じる方、苦手な方は読まないでください。
5/10:公爵→侯爵へ訂正(内容変更無し)
結局、懐柔出来たのは片方だけだった。
「まあ、まずはこんなものだろうね」
会食が解散してすぐに食器類を私の部屋へ持ち帰り、只今洗浄中。床へ蹲って洗い物をする私の傍で、どシンプルなテーブルセットの椅子へ茶器片手に座る伯爵様が、一つ溜息を吐いた。それが少し物悲しい音をしていた気がして、私は手元に集中するフリをする。
なんで伯爵様、私の部屋に来たんだろう。師団長執務室を出た私とアンマリちゃんと一緒に、伯爵様と侯爵様も退室なさり、食器を洗う為に一旦自室へ戻る私に伯爵様が当たり前みたいに付いて来た。
いつもなら伯爵様はお勉強会の後そのまま師団長野郎の自室へ直行し、師団長野郎のディナー前に給仕準備中の私を巻き込んで、その日の出来事を遊びたっぷりに報告する。けど、今夜は必要無いので、伯爵様はもうこの黎明棟に用が無い筈。ほんと、何で寛ぎ始めてんのこのヒト。
反して侯爵様はというと、王都郊外の先王から賜ったという離宮へ至極あっさり帰られました。流石王妃様のパパ様。持ってるモノも入手経路も半端無い。
やあねー独身は。生活習慣が自由過ぎて傍迷惑。もちろん他人事ではありませんが、私は夜中に上がり込むような仲の友人が元々居ませんから、迷惑掛けようがないのよ。おほほ。
何日か前にこの話題になった時、伯爵様は36歳にして独身の理由を趣味だと言って笑ってたけど、たぶん黒尽くめの服装に関係してるんじゃないかと思って、深く聞けなかった。藪蛇怖い。
洗い終わった食器を異様に吸水性の高いガーゼみたいな布で拭き、メイドワゴンの下部へしまい込んでいく。今夜は3人分だったが、大雑把気質なお国柄(?)、上流貴族のお夕食会だったのに、食器は大皿とスープ皿とナイフレンゲと茶器が3セットだけだ。
後はピッチャーみたいのが水とお茶の2つ分と、料理のお代わりの入った鍋みたいなのが2つ。お代わりを入れる為のお玉っていうか小さめのスコップみたいなのもあるけど、全部丁寧に洗ってもそうそう手間取る量では無い。
それに、私に与えられる物は基本つるんとした木製だが、彼らへ出す食器類は陶器7割金属3割みたいな質感の、ちゃんと美しく装飾された物である。落としても割れそうにない頑丈さで、どちらも魔導具では無く安心してがっしがっし洗えるのも、手早く済んでしまう要因だ。
余談だけど、魔力を帯びた物を体内に摂取するのは危険だそうで、お貴族様の食器などには殆ど魔導は使われないのだそうです。確かに私ですら、顔や体は魔導桶で洗うけどうがいは飲み水だし、魔導桶の水を汲んで飲んだりもしない。
水道は無いらしく、アンマリちゃんが宮廷敷地内の川で汲んだ天然水を入れたお代わり用水差しを、常にたっぷりワゴンに乗せている。師団長野郎なんて洗顔もこの水だ。
犯罪者の私は魔導水で傷口拭かれましたけどねっ。
「聞いてるのかい、カレン」
そっぽ向いてやった。にこやかに応じる気力、今はありません。背後で伯爵様が「やれやれ」と、今度は苦笑交じりの溜め息を吐く。
アンマリちゃんがそんな私達を、戸口の横の定位置に凛と立って眺めていた。固い表情で。
無理も無い。あんな遣り取りをしたんだ。彼女の中できっと、私の胡散臭さは相当レベルアップしたに違いない。
嫌われたかなあ。色んな意味でこの娘は支えなんだけどなあ。
あの後、いつも以上に感情がごっそり抜け落ちたような無表情で黙った師団長野郎の前で、今後の予定が3つ、決定された。結局お開きまで何も言わなかったのだから、今のところ、全てを彼は黙認している事になる。
1つ目は、12日後から行われる黎明師団の東方遠征に、導師ヴァレンティヌスとその弟子が随行する事。名目は、戦地にて行われる魔法・魔導の実態調査の為、宮廷魔導院魔導管理室の筆頭魔導師が同行する、って事らしい。お偉いサンの視察と言うより、実用的な現場検証に近いんだそうだ。
言わずもがな、具体的に何すんのかは分からない。現時点では「私の世話をしてくれたまえ」とだけ言われてる。侍女的な仕事は師団長野郎で慣れたので問題無いけど、実際はそれだけじゃ無いだろうなあ。怖い。
2つ目は、予てより戦争の民草への影響を憂いておられる王妃殿下のご要望により、父君ロレンシア侯爵が戦場となっている領地の領主を訪問し、必要であれば支援を申し出る事になった。しかし自身は義足の身である為、長旅となる直接訪問は断念。個人的に懇意にしている自領民のカレン・コーザックを現地へ派遣。代行を命じる。予定。
そう、私、戸籍ゲットしちゃいます。コーザックですって。違和感全開だけど、この国ではコーサカのが違和感有り過ぎで悪目立ちするから仕方ない。名前だけでも元々欧米でも発音の有るやつで良かった。
ちなみに弟は玲衣と書いてレイです。でもパパは総一郎で、ママは花子です。名付け親はママ。由来が和名コンプレックスだとしても、今、娘は心から感謝してる。ありがとねー。
そして戸籍っても勿論いざとなったらすぐ消せる偽造モノですよ。きっとその時は存在ごと消されるのよね。怖い!
そして3つ目の決定事項は、英雄ゲルハルト・ベーレンドルフが恋をする予定。戦場付近で、戦争で全てを失い途方に暮れる失魔症の民間人を保護し、それが運命の出会いだった系の物語のようだ。
哀れ英雄の愛を独占してしまった失魔症の女は、英雄の妻になりたい貴族令嬢や町娘達からありとあらゆる嫌がらせをされ、それに紛れて政治的に英雄を亡き者にしようとする輩の魔の手が・・・!って感じ。
英雄に相応しい障害の多い恋物語で世間をピンク色に染め上げ、同時に、あわよくば失魔症差別に一泡吹かせようという魂胆である。伯爵様は「戦場フォーリンラヴ」というタイトルで後々バルバトリア英雄伝に加えると仰った。
・・・モノマネだけじゃなく、ネーミングセンスにも問題のあるヒトだったのね、先生。
それにしたって英雄ってのは初耳だ、と厭味ったらしく言ってみたら、私が異世界人だと知らないパパ侯爵様に驚かれてしまった。この世界のどこに住んでても知っていて当たり前なくらい、師団長野郎が英雄なのは有名な話なんだって。
私にとっての害悪が、この世界にとっては正義とか、最悪にも程がある。
しかも下手すりゃ恋人役を演じる事に・・・・・・全怖いを超えた。
かなりな男前で社会的地位も激高で英雄と呼ばれる程有名な師団長野郎が、結婚の早い上流貴族出身なのにまだ未婚なのは事情がある。
嫌だから、だそうだ。
え?事情じゃないじゃん、と思ったけど、本人じゃなく伯爵様と侯爵様が仰るには、英雄の女房になりたがる女性の大半は何らかの野心があり、下手に娶れば政治的パワーバランスに大きな影響を与える・・・のが嫌だっつって、どんなに口説かれても迫られても薦められても断り倒しているのだとか。
一説では黎明騎士伯爵様はゲイのスキモノで、部下を日替わりで食すのが生き甲斐だから結婚しないんだとか。
そんな根も葉もない噂が実しやかに広められ、英雄のおケツを追っかけ回している女性もほんの一握りになっちゃうくらい、もうかれこれ10年以上師団長野郎はこの問題から逃げの一手で来た。
え?17歳以前から英雄なの?何英雄なの?あ、やっぱ知りたくない!
しかし最近、流石に逃げるにも限界が来て、そうこうしてる間にも婚約させられそうなのだと言う。
お相手は3大公家の一つ、フリード公爵の末娘レティーツィア嬢。王妃に次ぐ美少女と言われている17歳。玉の輿じゃないか。しかも若くて美人。政略結婚でも全然いいじゃん。って思いました。
この辺りから、話が逸れてる気がして殆ど聞き流してしまったのだけど、要するに、英雄を利用したくて堪らん連中を刺激して、あぶり出して、ちょっと片付けてしまいたいワケだ。
ちゃんと囮が必要な理由がある、って言いたいワケだ。
分かり辛い駄文に辛抱強くお付き合い下さって、まことにありがとうございます。
ここに書く言い訳すらネタ切れを起こすという才の無さに愕然としております。
と言うのも、後味悪いまま終わる場合もありますので、読後感を緩和する為にここで感謝の気持ちと、その他お伝えしたい事を書くようにしてたのですが。。。
言い訳するくらいなら、物語の裏話という名の補足をした方が建設的かなあ、とも思う次第です。はい。良くあるパターンです。考え中。




