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カレン  作者: f/1
異世界
19/62

18

作者打たれ弱いので、作品への誹謗中傷は一切見なかった事にします。酷い場合は警告無しに対処したりもしますのであしからず。

誤字脱字や引用の間違い指摘などはとてもありがたいので、知らせてやろうという奇特な方は宜しくお願い致します。

また、全ての作品において、暴力や流血などの残酷な描写、性的な表現がある可能性があります。不快に感じる方、苦手な方は読まないでください。




 通勤が面倒で、執務室と続きの応接間改造して住んじゃったらしいが、能率重視の騎士団内では特別珍しい事でも無いのだとか。この階には他に2部屋ほどそういう部屋があるらしい。

 何れにしろ、今用事があるのはこの部屋で、既にアンマリちゃんがノックをしてしまっていた。

あああああ心の準備を確認して欲しかったよ!

 慌ててこっそり深呼吸する。そうこうしている内に扉が開き、寝起きでしかめっ面全開の三白眼が睨み下ろして来る。その人相の悪さたるや、もうなんか「目が合ったから」とかそんな理由で私をうっかり殺しそうなレベルだ。怖い怖い怖い!脳内妄想が過ぎて「言い掛かりだ!」と言い掛けたけど、オトナな私は表面上はちゃんと営業用の微笑を保っておりますよ。

「おはようございます。ご起床のお時間です」

「・・ああ」

 もう声も嫌々出してるんじゃないかというくらい低い。あ、これも被害妄想過ぎますか?ええ、まあたぶんコレは単純に寝起きで掠れてんでしょうね。どうでも良いけど、一々迫力有り過ぎなのよ。怖い。

 でも、これで意思はまともに疎通してるらしい。ひっくーいおっもーい返答の声と同時、扉をそのままに室内へ取って返す。続いて「失礼致します」とアンマリちゃんのモノマネをしながら入室し、後ろから本物がワゴンと一緒に入って来るのを扉脇で待つ。ワゴンは部屋の出入り口すぐの所で止め置き、そこから必要な物を手で運ぶのだ。

 そう、私に与えられた1日の最初の仕事は、師団長野郎の身支度手伝い。彼は自分で殆どやるのでほんとに手伝いって感じだが、それでも嫌な仕事には違いない。いや、嫌って言うか、怖いって言うか、怖い。

 そもそもこの仕事はコヤツの嫌がらせ・・・師団長としての監督義務的な意味合いが主なのだろう。上流階級な師団長野郎の身の回りの物は殆ど魔導具なので、むしろ私は居るだけ邪魔にしかならない。

 ちなみにこの部屋には専用トイレが有る!ずるい!でもこれも魔導のやつなのだとか。どのみち私には使えない。

 なので私が実際にやる事と言ったら、彼がカーテンを開けたついでみたいな勢いで引っぺがしたシーツを受け取ったり、自分でやりたいらしいのでアンマリちゃんが持ってきた新しいシーツを手渡したり、備え付け用の洗顔用桶や布巾を取り換えたり、顔を洗ってたら顔拭き用の布を手に傍で待つとか、テーブルへ朝食を運び、並べ、水をコップに注ぎ、食事が終わるのを待って、終わったら下げて・・・的な給仕?みたいなものとか、着替えの最後を見計らって制服の上着を肩へ掛けてさし上げるとか、本当に必要なのかどうか怪しいどうでも良い雑事ばかりだ。勿論その間会話も無いし、私は侍女作法として始終俯き加減なので目も合わない。

 しかもしかも、私がそうしている間中ずっと、アンマリちゃんはワゴンの傍で棒立ちなのよ。魔導具の部分は彼が自分でとっととやっちゃうので彼女は一切出番無し。人材、しかもその道のプロを余らせてますよ。なんてもったいない!

 てゆーか、体の傷が全て癒えて健康元気になってしまった私には、片手間にやる雑用ばかりじゃ思考が空回りする。これがキツい。

 だから1週間記念の今日は、先日閃いた事を実行してみる事にした。なに、特別な事はしないよ。ただちょっと全力出して頭空っぽにするだけ。

 全力で、お世話をする。

 アンマリちゃんを見てて気付いたの。人のお世話って、物凄く考えて、物凄く体を動かす事だって。対象者の動きを観察し、何を欲しているか読み取り、何なら先読みまでして、先回りで準備しておく。これって言うは易しってヤツで、実際しようとしたら余計な事考える余裕くらいは無くなるよね、って思ったの。

 で、実験。

 そりゃあもう全力でさせてもらいました。この1週間でアンマリちゃんにしてもらった以上の事を、アンマリちゃんになりきってやってみました。もちろん、傍から見てそうと気付かれるようなやり方はしない。頑張ってる感が出ないように気を付けた。いつも通り根暗で気弱な私のまま、全力出しました。ふう。

 思った通り、途中でアンマリちゃんは気が付いたみたいで、ワゴンへ食器を下げに行ったら真正面からじっと見詰められてしまった。でも、対象者である師団長野郎が全く気付いた様子が無かったのでオールグリーンだ。目的通り、余計な事考えずに済んで、無駄に彼の存在感にビビる事も無かった。

よっしゃ、今後コレ採用!

 まあ、師団長野郎は本当に良くも悪くも軍人気質みたいで、動作の全てが端的で無駄が無く、毎日ちっとも変化が無いから、これもいずれ慣れてしまってまた手持無沙汰になるのだろうけど。

 私にとってこの世界での未来は、例え一歩先でも具体的に考えるのは無駄だ。

 希望的な目標や大まかな目安は要るけど、唐突に放り込まれた世界では、いつまた唐突に放り出されるかも分からないのだから。今目の前で、私が上着を掛けようとしている大きな背中も、手の中のこの大きな上着も、次の瞬きの後には掻き消えている可能性があるのだ。

 明日の予定を深刻に考える余裕は、今のところどうしても持てない。


 その「明日」とやらが、どこのものとも知れない内は。


 不意に、この部屋に微かに漂う爽やかなような穏やかなような香りが強まって、物思いに沈みかけた自分を内心叱咤する。ダメだ、ちょっと手が空いたらこれだもの。と、見上げた先では師団長野郎が、馬を宥める効果があるという香油を両手に塗って短い白金の髪を掻き上げていた。前髪が幾筋か戻っちゃうけど、彼は頓着せずいつもそれで終了。そのくせそれが様になっていて何か腑に落ちない。たぶん男性に好かれるタイプの男性だと思う。おとこくさい。

 手元にある洗顔の時に使った布で手を拭いたら、私がスタンバイしている上着の出番。それで漸くこの朝一のお勤めが終了する。腹時計的に30分経って無いくらいかしら。軍人さんの身支度の速さって有名だけど、それは異世界でも一緒なのね。

 余談だが、この部屋は私の部屋と違って誰でも出入り出来るらしい。緊急時のためだそうだが、扉が魔導具な時点で私にとっては出入り不可能領域だけど、だから彼は、完全なプライベート空間を持っていないんじゃなかろうか。ってちょっと思った。独り好きの私にとってそんなの地獄でしかないけど、軍人さんは平気なのかな。

 手を拭き終わったのを見計らって、上着を厚い肩へ。今日はちゃんと腕を通せるよう、少しこちらに意識が向くのを待ってから、下から掬い上げるようにしてやった。すると何の躊躇も無く腕を後ろへ出してきたので、あっさりと両腕とも袖に通り、とっても完璧な感じで上着を着せる事が出来てしまった。昨日までは肩に乗せるだけだったから、期待してなかったレベルの出来栄えだ。びっくり!

 と、うっかり固まってしまうような可愛さは私には無い。彼が振り返りながら前合わせを留めるせっかちさんと知っていたので、上着から手を離すと同時にとっととその場を去る。危ない危ない。流石に固まりはしなかったけど、ほんの一拍だけ動作が遅れた。目が合ってたらどうするつもりだ!怖い!

 仕上げに使用後の手拭き布を回収してワゴンまで下がり、廊下側の扉の前で最後のお伺いを立てる。

「他にご用はございませんでしょうか」

「無い。下がれ」

「はい。それでは失礼致します」

はい終了!完了!撤収!

 師団長野郎は執務室へ直接行くので、この部屋の左手奥へ向かう。退室の礼から顔を上げれば、もう大きな背中はそちらへ向かっている。

ほんとに世話され慣れてるのね。

 私の部屋を3段階ぐらいグレードアップしたような、でも基本似たような造りの師団長自室。異世界人の囚人の部屋ばりに、私物が無く、生活臭がしない。重厚な茶色を基調とした寝室で、唯一個性的なのは香りだった。

 愛馬のための香油は、如何にも動物がほっと目を細めそうな、草木を連想させる穏やかな匂いで。


 彼の本性はそれだ、と言われたような気がした。




稚拙極まりない駄文にお付き合い下さり、本当にありがとうございます。



こんなグズグズな無駄小説ですが、余程の苦情等が無い限り、完結まで書き続けたいと思っております。

ラストシーンももう決まっています。意欲だけはモリモリなのです。

ただ文書力がついてかない。。。こんなんですがよろしくお願いします。

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