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カレン  作者: f/1
異世界
17/62

16

作者打たれ弱いので、作品への誹謗中傷は一切見なかった事にします。酷い場合は警告無しに対処したりもしますのであしからず。

誤字脱字や引用の間違い指摘などはとてもありがたいので、知らせてやろうという奇特な方は宜しくお願い致します。

また、全ての作品において、暴力や流血などの残酷な描写、性的な表現がある可能性があります。不快に感じる方、苦手な方は読まないでください。




 この建物の天井の高さを換算すると日本人感覚の5階程度の騒ぎでは無いので、初めてそれを見た時は大袈裟で無く尻もちを着きましたよ、私。ええそりゃもう無様に、ぺしゃん、って。

 初めて師団長野郎の執務室に連れてかれたあの日の午後、昼食も抜きでぶっ通しの説明会兼尋問の最中に、あの窓があの大きさだった理由を知ったんだ。

 予定が入ってる時間だ、とか何とか言って窓へ歩み寄った師団長野郎が窓を開けて、普通の音声で普通に喋るみたいに「クロガネ」と言った途端、その開いた窓から、5階の外から、巨大な馬が跳び込んできた。

 私の知ってる地球のお馬さんの、たぶん2回りは大きい。ただ、基本的な外見はお馬さんに違いなかった。昔学校行事で牧場行って、お馬さんとは一緒に遊んだ経験が有るからはっきりと言い切れる。これは紛れも無く寸分の狂いも無く、ただデカ過ぎるだけの馬だ。

 濃い灰色の艶やかな毛並みで、同色の豊かな鬣とふっさふさのしっぽと、円らで静かな瞳が印象的な、物凄く聡明そうな顔をした巨大馬。お名前はくろがねと仰るそうで、脳内で相当した漢字は「鉄」だった。うん。確かに鋼鉄って感じのルックスね。超カッコイイ。

 座り込んだままクロガネさんをガン見していた私を立たせながら、伯爵様がどこか懐かしむような表情で、あれは2代目のクロガネさんなのだと教えてくれた。聞けば伯爵様の実家の名馬のお孫さんなんだとか。思いの外この2人のお付き合いは古く、深いんじゃないかしら。

 そのクロガネさんをリーダーとする騎馬の群れは、この建物のすぐ外、本宮とは反対側にあるこれまた世界有数規模の厩舎で暮らしているそうなのだが、日の出と共に目を覚まし、寝ている間に固まった筋肉を解す為、この時間にこの棟を周回するように跳ね回る習性があるのだとか。

 その跳躍力と体の大きささえ無ければ地球と同じ生物なのに・・・。

 まあこの時、その背に人を乗せている事は無いので、暫くその美しい様を眺めていても問題無いから不満は言わずにおこう。動物は好きなんだってば。

 数分、寝ぼけた頭がはっきりしだすまでお馬さんを眺めて過ごし、明るくなりきった頃には服を着る。この部屋の窓は北西向きなので、太陽はドア側から昇ってくるけど建物の構造上全く見えません。

 ちなみに、東西南北の感覚は殆ど通用するので助かってます。厳密に言うと太陽の位置からしてちょっとズレがあるんだけど、許容範囲って事にしとく。私だってワイルドなところあるんだからね。ふふふ。

 そして着替えもだいぶ慣れました。私に与えられた服は1種類3着分。下着も無事貰えたし、念の為洗濯待ち分として3着ずつも用意して頂くという破格の待遇。なんだけど、やっぱり色んな考えが交差しているのか、全部同じ物、それも、貴罪者用の物だけだった。貴罪者というのは、犯罪を犯した貴族という意味らしい。

 なので、ちゃんとした作りをしているが、艶消しの黒一色で一切遊びが無いどシンプルな長袖膝下丈ワンピース。でも今度はタンクトップじゃないし、ざっくりもしてません。サイズぴったり柔らか素材で、形は緩めなマーメイドライン。品がある感じ。貴族じゃないのに申し訳無いですー。

 慣れるのに時間が掛ったのは、結構な伸縮性があって1枚着たらはい完了のワンピースでは無い。下着だ。

 これは一悶着あった。アンマリちゃんが着替えを全部手伝うと言って聞かなかったのだが、下着すら自分の好きに着脱出来ないなんて冗談では無かった私が伯爵様を使って懐柔したのだ。では何故アンマリちゃんがそこまで世話を焼くと主張したかと言うと、例の失魔症の話になる。

 私に用意された厚めの綿っぽい黒い下着は4つ。ブラとパンツとペチコートと靴下。実は下着好きの私にとってそのどれもが意外にもほぼ見慣れた形をしていたのだが、装着に魔力が必要だったのですよ、信じらんない。

 全ての下着に、調節紐と呼ばれるリボン状の物が付いていて、これが発動条件になっている。リボン結びの概念は存在しないので、くるっと適当に結ぶだけだが、この結ぶ時の強さによって、生地が自動的に体の形に添って締まるのだ。お好みの締め具合が決まったら、結び目を固定する為に固結びに。脱ぐ時は単純にこの紐を解くだけ。魔力さえあれば、たったこれだけの事だが、魔力を失う病にかかるとそうはいかない。

いや、だから私は病気じゃ無くて最初から無いだけなんだって。

 でもね、下着全部魔導具って、どうよって話。

 試しに伯爵先生に聞いたら、魔導師の絶対数は多くは無く、やはり魔導の下着は最高級品との事だった。そりゃそうだ。だって、魔導具の精製は手作業なのだから、世界最大国の全国民の全下着にまで魔導具が普及するはずが無い。普通の庶民は普通の下着なのだ。

 その確証を取り付けて、私はアンマリちゃんに出来る限り民間人用の魔導具で無い物を調達して貰うよう頼み込んだ。とっても嫌な顔をされたけど、3日目くらいには希望に答えてくれた。下着だけではなく、化粧品だの生理用品だの顔剃りだの、細々とした必需品を全部揃えてくれた。流石気配りのヒト、仕事が早い。たぶん伯爵様かクリスたんが口を効いてくれたんだとも思うけどね。ありがと!

 ちなみに生理用品は素材が全く分からないゴワゴワパンツ(使い捨て)で、無駄毛処理に剃刀は普通使用しないとかで軽石みたいのを渡された。そういや日本でも見掛けた事あるなあ。剃りたい毛の上でそっとくるくるすると、毛がぽろぽろ取れるっていうヤツ。私乾燥性敏感肌なのに大丈夫かしら。あ、脇毛とかすね毛とか、体の無駄毛は私、脱毛処理済みなので放置でOK。

 肌が弱いからってビビらずやってて良かった、永久脱毛。

 しかし、態々作らせたのかしらと思ったのが、最初に用意された下着類と、新しく用意してくれた下着類が、全く同じ色とデザインだった事だ。そこまで拘りがあるのか。謎。

 元々好きで色んなのに手を出してるので、デザインに関しては全く何も感じませんでした。確かに、全部綿っぽい生地でちょっと分厚いなあとは思ったけど、ワイヤレスベアトップみたいなブラも、極小なヒップハンガーぽいパンツも、太いガーターで吊るニーハイ(ハイサイ?)なソックスも、可愛げが全くない腹周りだけニッパー状態なペチコートも、全然抵抗ありませんでした。

 後に聞いたところによると、本来貴族とは言え囚人用にデザインされたこれらは、普通の女性なら青褪めるかヒスって身に着けるのを嫌がる質感と形なのだとか。・・・ふうん。

 だって素材だって柔らかくて肌もチクチクしないもの。問題無いのだもの。ナマ足でミニスカートとかなら泣いて謝りますけど。

 だもんで、アンマリちゃんの本当の目的は服の中に何か仕込まないか監視する事だったんだろうけど、私は彼女が来る前にさっくり着替えを完了してしまうわけだ。ごめんね。今は懐中時計以外仕込まないからね。

 いつか他の何かを仕込みたくなった時のために、私はこの一件を適当に流しておいた。

 そして初日の裸足が嘘のようにあっさり渡された靴は、編上げのロングブーツ。もちろん、庶民用の魔導具で無い物です。素材はとってもしっかりした何らかの動物の皮だ。何の動物かは考えない。しかし色はこれまた真っ黒に塗り潰され、ワンピに合わせたように光沢も無い。

 履き心地は本革のジョッキーブーツが近いかなあ?セールで買った3万円のジョッキーよりちょっと硬く、新品な所為か足首などの稼働が狭い。しかも微妙にサイズが大きい。浮腫みとムレとの戦いが今、始まる!

 そして、これはいよいよ喪服っぽくて意味深だと黒尽くめ伯爵に問うたら、黒い色自体には大した意味は無く、喪服という概念も無かった。冠婚葬祭は区別無く、正装なら色形は何でも良いんだってさ。でも、全身全部黒くするのには、風習とか古い伝統的な次元で意味があると教わった。

 彼は冗談ぽく「虐められたいアピール」的な解釈を交えて言ったけど、違う。冗談で誤魔化したのは、踏み込まれたくないからだろう。

 身を黒く纏うのは、謹んで罰を受けます、という意思表示になるのだそうで。

 私はそんなつもり無いけど、そもそも罪を犯したつもりも無いけど。


 魔導師伯爵様は、自分の意思で黒を纏っている。一部の隙も無いほどに。


 なんて事を考えながら、着替えが済んだ後はのんびりベッドを整えます。ベッド自体は焦げ茶色の木製で、ちょっと現代日本では値が張りそうな重厚な素材感。大きさもダブル以上あるんじゃなかろうか。これは単純に、この階層の部屋にはこれ以上安っぽい物が無かったからで、決して容疑者に快適な眠りを提供しようとしたわけじゃない。彼らの名誉の為にもしっかりそこは理解してますとも。ケッ。

 ベッドマットは全く素材に当たりが付きません。何で出来てるのか、弾力は固めだが、体が痛くなるような粗末さとは程遠い。むしろ腰が弱い人なら「体が沈み過ぎ無くて助かります」くらい言いそうな感じだ。

 その分か、シーツに使われているのは毛布ばりのふっかふか素材だった。パジャマを貰えなかったので真っ裸で寝る現状の私には大助かり。風邪引かないで済みます。それともこの国では皆寝る時は裸族化するのかしら?肌を見せるのははしたない的な思想だから、囚人服が膝辺りまでしか丈が無いと伯爵先生がチラっと言ってたのに。

 やっぱ私が凶悪犯だからパジャマ貰えなかったに5千円賭けとこ。そして当たってたら日本に戻った時、5千円のランチを食うのだ!超豪遊!

 もこもこシーツを整えて、掛け布団を手に取る。裸で寝るのに、どちらも洗濯は5日に1回しか許されていない。寝汗万歳!肌寒い気候で本当に良かった。

 そして掛け布団は柔らかい、これまた綿っぽい素材の一枚布だ。ベッドを覆い尽くして余り有る大きさの。うん、大きさが意味不明なので、私は二つ折りにして使っている。

 お察しの通り、カーテン開けたりお馬さん観賞してる時はこれを体に巻き付けてますよ。決して真っ裸で窓辺に突っ立ってたりとかそんなまさか王宮本宮へ向けて猥褻物陳列しちゃったりなんて滅相もない。もちろん、三十路女の全裸なんて見たかねえよ的な事言うヤツは、ピンヒールで全体重掛けて足の甲をにっじにじにしてやる!

 失礼。こういう話題の最後にはそう言い足しておくよう、ミキちゃんに徹底指導受けてまして。

 さて、これら寝具類も全部茶系色です。目に優しいが、なんかとっても精神的に老け込みそうだ。全世界の茶色好きの方、ごめんなさい。ほんと言うと私の自宅の家具も木目のベージュとライトブラウンが基調なので、馴染み易さは半端無いんだけど。

 1週間目で、気が付いた。

 ここには白が無い。いやある。え、無いよ。


・・・んー・・・あ、お城だ。


 お城だけ真っ白で、他のどこにも白い物が無い。大きな家具から小さな雑貨、消耗品に至るまで、完全な白色は一切存在しない。極淡いクリーム色や水色とかはあるけど、純白は本宮の壁の他に目にした記憶が無かった。


 罰の黒。王の白。


 なんかちょっとゾッとする。怖いので気を付けておこう。




根気良くお付き合いくださっている皆様には、感謝の言葉もありません。



今執筆中の辺りが趣味全開なので、この辺りのを読み直すと我に帰ります。

つまり今後はもっと偏った内容になるという警告です。ごめんなさい。

どうか見捨てられませんように。。。

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