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作者打たれ弱いので、作品への誹謗中傷は一切見なかった事にします。酷い場合は警告無しに対処したりもしますのであしからず。
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2012/11/25:「味合わなくて」→「味わわなくて」に訂正
このバルバトリア王国の首都、国王のおわす広大で強大な宮殿を北に背負う王都は、国の名を冠する世界最大規模の大都市である。らしい。地理的にも物流が楽な位置にあって、それはそれは栄えていて、市民の生活水準に至ってはブッチギリで世界一。らしい。
うん。遠目にも見た事無いどころか、私この建物から一歩も出た事無いので分かりようもありませんです。
で、地理的に楽、というのは気候的にもって事で、この王都らへんの気候は非常に安定しているようだ。四季は無く、年中通して肌寒い春先並み。長袖暮らしで、外出時もスプリングコートかジャケット程度。気温に対する感じ方は地球とほぼ変わりないようで、人によって多少の差異があるものの、特筆すべき事態は無い。とても過ごし易くて助かるが、雨期があるようで、それだけは気を付けるよう言われている。
私、梅雨と台風の国出身なので大丈夫。雨期に油断なんて絶対しません。
難しいのは時間感覚だ。
日本は、温暖化等で乱れてきているとは言っても四季が有り、1年を数える事に全く苦が無い。留学経験がある友人の受け売りだけどね。心理学だか何だかの分野では、日本人の気質が細かい理由が『四季がはっきりしているから』との説もあるそうで。
つまり、私はこれまでの31年間で培った年月の感覚を、この世界基準へ寄せていかなければならなかったのだ。これが地味に難しい。
まずこの世界にも年月を数える概念があってほっとして、1年毎に暦が進むという事にもほっとして、1年がきっかり300日でちょっと驚いたけどまあ良いとして、1日が5隔と言われて愕然とした。1年の日数が65日差程度で済んでいるのに、1日の時間感覚でここまで大きくズレるなんてどういう料簡だ!しかも「ごかく」って何!「隔」って!
与えられたのは懐中時計。言うまでも無く私の知っている物とはちょっと違って、色と手触りは鉄っぽいのに妙に軽い不思議材質だったが、時計盤の見方は説明されなくても分かった。
まあ基本、この世界の生活必需品は見れば分かる単純な構造の物が殆どなのだけど。
この時計の盤は円グラフになっていて、均等に5つになるよう線引きされている。長い針が一本だけあり、とてもとてもゆっくりと孤独に回っていた。その針の動きは聖域と呼ばれる場所にある大時計にリンクするよう魔法をかけてあるらしい。その聖なる大時計の場所と仕組みは国家機密だって。
やあね、じゃあ世界共通じゃなくてバルバトリア国内だけの感覚なんじゃない。
短針も秒針も数字も無い。役割的には、無いのは短針の方。他には何も無い超簡素な懐中時計(ミキちゃんならデコりまくるところだ)はしかし高級品で、平民は普通広場や市場に設置されている時計で時間を見るらしい。師団長野郎は私にこれを与えるのを最後まで嫌がっていた。仕事熱心だこと。
余談だが、時計を始めとする常に動き続けている魔導具を自動魔導具と呼び、桶や鏡のように毎度手順を踏んで発動させる魔導具を手動魔導具と呼ぶ。家電扱い決定です。
ともあれ、この国の人達はその魔法の針が示す通り、1日を5つの間隔に別けて考え、それを基準に生活を組み立てている。だから「5隔」ね。なるほど、やっぱり色々と日本に比べてシンプルなつくり。
1日の始まりは古の日の出。太陽暦だか陰陽暦だか地球のアレはアレしておいて、この世界で大陸暦と呼ばれる1日の始まりは、エヴルで初めて東の地平線に太陽が頭を出した瞬間の事である、らしい。
そんな創世記的な話は現在受付拒否です。私の脳みその容量過大評価しないで。地平線ってどこから目線だよとか、太陽が東から昇るという事にどうリアクションすべきかすら判断を見送ったレベルだ。ああはいそうですか的に、必要な事実・情報だけを頂きます。太陽自体は地球とほぼ同じ。白いなー程度の差異なので問題無し。深く考えない。
世界初の太陽こんちわーから幾星霜、現在のバルバトリアの1日の始まりは夜明けの少し前という、日本人にはとっても嫌な違和感を感じる時間である。中途半端な・・・と脳内ツッコミしておいて、真っ先に体へ叩き込むべき内容であると自分へ言い聞かせた。
1年が300日である以上、1日を24時間で考える利点は無い気もするが、こちらの時間間隔の感覚を数日かけて纏めた結果がコレ。ダジャレじゃないよ?
1隔は、午前3時から午前8時。
2隔は、午前8時から午後1時。
3隔は、午後1時から午後6時。
4隔は、午後6時から午後11時。
5隔は、午後11時から午前3時。
そう、円グラフ時計は均等な間隔で分けられているから、厳密に言えばこの時間割はおかしい。私の感覚の帳尻合わせは、私が熟睡している時間でさせてもらう・・っていうか勝手にやっといて脳みそさん。
さて、大切なのはここから。
アンマリちゃんが来てくれるのは、伯爵様がくれた懐中時計の針が1隔の終わりを指す頃、私感覚で午前7時から8時くらいだ。日本人のOLにとっては常識的な時間。そして、この世界においても常識を照らし合わせた時間だった。王城の下働きの起床時間が1隔の始まりと同時で、上級侍女等の起床時間が1隔の終わり頃。そこから侍女達が身支度した後担当の主を起こしに行くので、貴族等の所謂お偉いサン達の起床時間は2隔の前半、9時ごろだ。
そんな中、上級侍女達と同じかそれ以降に起こされる(アンマリちゃん以降は確実)って事は、囚人としては厚遇極まりないが、王妃の客としては冷遇極まりない。たぶん当たり障り無い辺りを検討した結果なのだろうが、ドンピシャだ。この時間なら私的にもやり易いよ。多少寝過しても罪悪感は最低限で済むし、基本軽い緊張状態なので大抵彼女が来る前に目が覚めていて、赤の他人に、それも自分を重罪人と思っている人に起床させられるストレスは味わわなくて済んだ。
日本人の価値観を刺激したり宥めたり、ほんと微妙だね。
なので、1隔の後半に差し掛かった辺りでだいたい起きるんだけど、魔導具云々の所為で、私は自分の身支度一つまともに出来なかった。なので自分で出来ないところを飛ばし、出来るところから先にしておく。
顔を洗いたくても洗面所も無ければ魔法の桶に水も出せないので、洗顔と歯磨きはアンマリちゃんが来てからだ。だから起きてまず最初にするのは、ベッド脇のサイドテーブルに置いてもらった羊皮紙(?)に、炭っぽいクレヨンみたいな棒で印を入れる事。カレンダーだ。
ただし、紙全体に300個の枠を書いただけの手製。カレンダーというよりただの日数チェック表は、伯爵様にこっそり紙とペンを強請ってやっと昨日手に入れた。師団長野郎的には私に日数も把握して欲しく無いらしかったが、ざまあみやがれ。ちゃんとこの部屋で暮らし始めてからの分を足して、本日で丁度1週間だ。ただしこの国には週という概念は無いので何も丁度じゃない。残念。
クリスたんに出会い、酷い目にあった初日は0日とし、カウントしてません。黒歴史。
そしてベッドから降りて最初にするのは排泄ですが、これが、未だにあんまり慣れない。なんせ暗い部屋の隅っこで、洗面器みたいな形の壺に向かって致すのだ。もちろん致した後は蓋をしてその場に放置・・・排泄時は本当、自分が囚人なんだなと思い知って気が滅入る。しかも他の場所に居ても、催したらここへ連れ戻ってもらい、これで致すのだよ。近くにトイレが有るのに、使っちゃダメなんだよ。この壺限定なんだよ。尿意を感じる度に負の感情にツボる。いや、ダメだ、それじゃ師団長野郎の思う壺だ。
しまった!上手い事言ってしまった!下ネタで!最低!
よし、排泄行為に関する事象は全て精神から除外しよう。パス!
ということで、日数表書き込みの次にするのは、私に与えられたこの部屋唯一の大きな窓のカーテンを開く事。本当はこれも魔導処理をしてあって、魔力があればさっと一撫でで開け閉めが完了する魔法のカーテンらしいのだが、私は無論普通に窓の両端へてくてくと引っ掛けに行く。ちなみに窓は開けられません。魔法で封じられています。囚人逃亡防止策だそうです。
師団長ケチ野郎なんて一回痛い目見たら良いんだ。私みたく!
んで、何故医務室と違ってカーテンまで魔導具なのかと言うと、ここが5階だから。騎士団幹部の自室自宅となっている区画でもあるので、所謂高級マンション扱いなんだって。まあ王宮内だからね、軍の施設な分これでも相当質素で、本宮なんて壁全部自動魔導具らしい。ここは一部の壁が手動魔導具らしいけど。聞いた瞬間ビビったのは言うまでも無い。
で、カーテン開けたら夜明けの空をバックに、件の白い城壁が見える。言われてみれば、周囲は地球の森みたいに濃淡様々な緑色の森林が地を覆っているのに、鳥一匹飛んでいない。虫の気配も無い。とても不気味な何かが、真っ白でひたすら巨大な壁面から発せられているようだ。
その様子に束の間気を取られていると、目の前の窓ガラスもとい窓ゴムガラスの外を大きな影が過ぎる。師団長野郎の執務室と同じ窓は、瓶と似た素材の、透明ガラスの見た目にゴムっぽい手触りで衝撃に強く、至近距離で巨大な馬が跳躍しても多少振動するだけで何ともない。
ええ、馬が5階の壁を跳躍してますが何か?
拙い駄文にお付き合い下さった方々、ありがとうございます。
最近やっと携帯からの表示を確認しました。やっぱり死ぬほど読み辛い。
でも携帯用の編集は今のところ手を付ける余裕がありません。ごめんなさい。
つきましては、せめて、1話辺りの文字数を若干減らしたいと思います。
話数は増えてしまいますが、何卒ご容赦下さい。