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作者打たれ弱いので、作品への誹謗中傷は一切見なかった事にします。酷い場合は警告無しに対処したりもしますのであしからず。
誤字脱字や引用の間違い指摘などはとてもありがたいので、知らせてやろうという奇特な方は宜しくお願い致します。
また、全ての作品において、暴力や流血などの残酷な描写、性的な表現がある可能性があります。不快に感じる方、苦手な方は読まないでください。
2012/4/4:行頭空白挿入(内容変更無し)
2013/1/6:脱字訂正(内容変更無し)
伯爵様ともあろうお方が、まさか、人の子一匹への食事提供をケチる筈も無く。
いつの間にかやってきて、うとうとしていた私を起こしたアンナマリア侍女は、その時既に伯爵様に命じられて私の朝食を持ってきてくれていた。感涙である。
「お食事がお済みになりましたら、包帯を替えさせて頂き、お体を拭かせて頂きます。 その後、ヴァレンティヌス伯爵様がお見えになります」
相変わらず有無を言わせぬ事務口調だが、適切な速さで聞き取り易い。無論余計な情報を一切漏らす事も無く、じっと見詰めてみても無反応。侍女の鏡だ。
「分かりました。ご丁寧にありがとうございます。 よろしくお願いします」
営業用の笑顔を取り出し軽く会釈して言ってみると、頷くような仕種をして、私の膝に朝食の乗ったトレイを置いてくれた。そして自身はこの部屋唯一の窓辺へ歩いて行く。その背中を眺めていると、どうやら換気してくれるようで、丁寧な動作で灰色の分厚いカーテンを片側へ寄せた。カーテンの仕組みは私の知っている物とほぼ相違無く、その後ろに現れた窓も違和感無い形と構造だった。アンナマリア侍女は木製のそれを音を立てずに押し開く。外向きの両開きだ。私の居る場所からは、その向こうにぼんやりと土のような茶色しか見えなかったけれど。
早朝の清々しい陽光とそよ風が入ってきて、部屋中に満ちる。日本が1月の真冬だったので、春のような暖かさに驚きより軽い危機感が迫った。同時に、流石にノースリーブワンピース1枚では外気は寒く、身震いを起こす。換気は嬉しいけど何だろう、嫌がらせ要素が見え隠れしてるような気がするのは被害妄想か。
「・・・?」
あれ?・・・なんか、獣臭い?
仄かにだけど、風の中に動物の臭いがして、思い出した。ここは騎士団の「騎馬師団」本部だ。そう遠くない場所に大量のお馬さんが居るのだろう。おっきい動物って好き。
慣れているのか、獣臭混じりの風を気にするでもなく、アンナマリア侍女は次に壁に生えている燭台へ向かい、これまた音も立てずに息を吹きかけて明りを消していった。その一連の動作は、きっと毎日のようにしているものなのだろう。動作のどこにもブレが無かった。そして全ての動作が途切れず無駄無く繋がっていて、超細かい台本があって、その通りに「侍女役」を演じているようにすら見える。某鼠の国のスタッフがすっごいライバル心を抱きそうな感じ。
何より、凛とした姿勢がとても綺麗。
女としてもかなりの高偏差値保有者だ。
モデル体型の美人さんだし。
燭台を全て消し終わった後、彼女はこちらへ向かってきた。目が合うと怖いので、そこでやっと私は手元へ集中する。いや、匂いはしてたんだけどね。トレイを通して膝に温もりもあったんだけどね。重みもかなりあるから存在を忘れてた訳じゃ無いんだけどね。
つまり、異世界初の食事、である。
昨夜、というより先ほどまで水を飲んでいたコップと、そっくり同じ物が新しく用意され、中にはこれまた新しく用意された水が入っている。痛みで寝ては覚めを繰り返し、その度チビチビ飲んでいた所為か、脱水症状はすっかり収まり、体調事態も結構改善した。
また、私の自宅のお茶碗より一回り大きなお椀には、様々な形と色の具材がカレールウみたいな茶色の液体に浸されて入っていた。スープだと思う。匂いは不思議とコンソメ系だ。ただ私の知ってるどのスープともちょっとだけ違う。他には大皿があって、そこにはコッペパンそっくりの深緑色の物体と、紫色で小さなひし形の葉っぱらしき物の小山と、橙色のマッシュポテトのような塊が乗っていたが、どれもが知っているようで知らない匂いを発していた。
正直、あんまり食欲をそそる匂いでは無く、色も形も、私の価値観からすると歪だ。
しかし私は底辺の犯罪者。これだけの種類と量を朝から与えて貰っただけでも僥倖なんでしょうよ。無論顔にも声にも一切不安や不満を出さず、極普通に「いただきます」を言って、トレイの隅に置いてある物を手に取った。
余談だがこれら食器類全ては全く同じ材質の木製である。濃い茶色の木目で、さらりとしてる。
「・・・」
これは、たぶんスプーンだ。と思う。きっと。レンゲ並みに深さと厚みがあって、片側に浅いぎざぎざの刃が付いていて、口いっぱい広げても半分しか入らないくらい大きいが、きっとスプーンだ。しかしだからといって気軽に扱えば、口の中がズタズタの大惨事になるに違い無い。
慎重に慎重にスープを掬って、ギザギザの無い方へ唇を寄せて口に流し込んだ。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
び、微妙な味だ。しかし匂いを裏切る異質感は無い。微妙な匂いに相応しい微妙な味と触感はしかし、他の全ての料理にも当て嵌まった。生野菜を連想させる瑞々しいひし形葉っぱがそうなのだから、恐らく、この世界の食材は素材自体が私の知らない無い物ばかりで、私の味覚を戸惑わせて止まないだけのようだ。これらが全て一般的なものなら、という前提だけどね。囚人用だとか嫌がらせ用の料理という可能性はゼロでは無い。
うん。贅沢禁止。
元々昨日の今日で食欲が無かった上に、微妙な匂いと味で更に参ったけれど、食べなきゃ人間生きてけないのです。底辺の犯罪者だけど、まだ容疑者要素もあるのだから、滅多な事は無いだろうし。たぶん、っていうかそう願う。
ともかく、腹痛とか吐き気とかしない限り、黙って食べよう。
うっぷ。完食。ただし物凄い時間が掛った。体内時計で1時間くらい。OLの分際で朝食に1時間とか。逆に自慢だ。朝は食べられない派のミキちゃんに言ってみたい。彼女は朝食を食べないんじゃない、食べられないのだ!寝坊して時間無いから!
毎朝寝坊なら、それはもう寝坊じゃなくて普通の起床なんじゃないかしら。
ナイフレンゲ(私命名)の扱いが覚束無いままちびちびと食べ続ける私を、用事を済ませたアンナマリア侍女は何も言わず傍らに立ってじっと見ていた。昨日はあれでも平常心じゃなかったのか、今朝の彼女は一段と事務的で気配が薄い。気を抜けばそこに居るのに忘れてしまいそう。素晴らしい。プロフェッショナル。侍女の何たるかなんて微塵も知らないけど。
そして食べ終わったのを見届けるや否や、ちゃちゃっとトレイを下げ、私の着ていたざっくりしすぎのワンピースをぺろんのすぽんで脱がしてしまった。一応律儀に断りを入れてくれるのは有り難いんだけど、断りの言葉と同時に動作が始まるのは如何なものか。しかも窓全開ですがー。んー、変に丁寧で変に雑い。
やはり彼女は迷っているのかしら。ちょっと確認。
「あの、すみません。体力が落ちないように、自分の事は極力自分でさせて欲しいのですが、可能でしょうか」
卑屈になり過ぎないよう、淡々と言ってみた。いや、言った内容は本心だから、騙そうとしたんじゃないよ?深夜トイレした時、件の指輪のおかげか、右肩以外は軽い鈍痛程度で動かせたけど、疲労感で足腰が信じられないほどダルかったのだ。萎えない様にしないとな、と本気で思ってる。
でも、素直に躊躇われるとなんかちょっと罪悪感が。
しかしやはりそこはプロ。逡巡の間は一瞬だった。
「畏まりました。ご不都合の有る場合のみお手伝いさせて頂きます」
その返答に、「ありがとうございます」と返しながら内心苦笑する。
本来の主である正妃は「わたしの客人」と呼ぶ。その夫の国王と軍の高官は「重罪人」と呼び、正妃に命じられた貴族の魔導師は「保護対象」と呼ぶ。
そんな存在をどう扱えというのか。
隠し切れない困惑が少々顔に出てしまっても仕方無いよ。むしろここまで迷う素振りを伏せられるなんて、年のわりに本当良く出来た娘だ。親しみを込めて「アンマリちゃん」という愛称を贈ろう。脳内愛称だ。残念な意味では決して無いし、実際には絶対呼びません。たぶん。
食事の後は包帯を替える的な事を言ってたので、素っ裸である羞恥は何とか飲み込み、上から順に包帯を外していく。やっぱどう見ても灰色だよなあ、とか感想しながら、右肩を動かさないよう慎重にと心掛けた。そのせいで動作の一つ一つがやたらとスローテンポでまた無駄に時間が掛るけど、アンマリちゃんはここでも何も言わずに待ってくれた。
師団長野郎に絨毯へ叩き付けられた顔の左側、額の左側から頬までと、王様君ににじにじされた鼻筋、唇、顎先は擦り傷と青痣が出来ているらしい。あくまでセルフ触診結果だけど。鏡無いからね。
「あ、鏡、借りられませんか?」
アンマリちゃんの立場を少し冷静に考えられたからか、彼女に対する恐怖心が激減して、思った以上にすんなりと我儘を言えた。予想通り、アンマリちゃんは簡潔な返事をして、特に躊躇う様子も無く、自身の懐から掌サイズの小さな円盤を取り出して貸してくれた。
懐っつっても、茶色のシンプルなワンピースのお腹部分でもポケットでも無い。いや、ポッケなんだろうけど、場所が日本人に馴染みが無かったのだ。背中の腰の辺りに手を回して取り出したのだ。彼女の後姿を眺めた時に、お尻の上部分から腰辺りまでの生地が、丸く膨らんでるなーとは思ってたんだけどさ。まさか、ポッケとは。
礼を言って受け取った円盤は、しかし、使い方が不明だった。たぶん手鏡よね?厚さが5ミリくらいある真円形の金属なんだけど、全然光沢が無い。むしろ表裏どちらにも複雑な彫り細工がしてあって、覗き込んでも影すら映さなかった。蓋かな?と思って指に力を入れてもビクともしなかったので、壊す前にと素直に聞いてみる。
「・・あの、お手数ですが、使い方を教えてくれませんか?」
すると予測していたんだろう、即座に教えてくれた。
「掌で撫でてください。どちらの面でも結構です」
「あ、魔導具なんですね」
映画のスパイの秘密道具みたいだな、とちょっと楽しくなってしまいながら、言われた通り細工の上を掌でさっと撫でてみた。
「・・・・・・」
反応無し。何か間違ったのか、もう一度、今度はゆっくり拭う様に撫でてみたが、やはり何の反応も無い。あれえ?と思う間もなく、見守っていたアンマリちゃんの気配が変わって。
「お待ちを。一旦お返しください。私が」
言いながら私の手から取り上げ、さっと撫でると、撫でた先から曇り一つ無い綺麗な鏡に変身した。びっくりして凝視する私の目の前で、アンマリちゃんが今度は蓋をするように鏡になった面を塞ぎ、その手を外すとそこには元の彫り細工が戻っている。手品みたい!なるほど、と感心しきりの私の前で裏返し、同じ動作をもう一度繰り返した彼女は、納得したのか再び渡してくれた。
「もう一度やってみてください」
そう言い足された声が何故か緊張しているようにも聞こえたが、初めての魔法体験に私の方が緊張している。返事もそこそこに、彼女の動作をそっくり真似してやってみた。が、やはり私がやると、途端魔法の鏡は金属の細工と成り果てる。ちくしょう。
両面4回やって落ち込んだ。特別不器用なつもりは無いのに・・・悲しい。
しかし、アンマリちゃんはそれどころじゃなかったらしい。
「先に、手当てと清拭を致しましょう。 この件は後でヴァレンティヌス伯爵様へご相談申し上げます」
慌てたような早口になり、気持ち顔も強張っている。手鏡も取り上げて背中ポッケへしまい、手当てをするための道具らしき箱を棚から私の手元へ持って来た。更に桶みたいな物と清潔感のある灰色の布も自身の足元へ設置する。その動作は素早く、口を挟む隙が無かった。
そして、さっきあまり手伝わないでって言ったのを了承してくれたのに、手早く作業を進めだす。
私が魔法の鏡を使えなかった事は、深刻な事態らしい。悲しみ倍増です。
怖いので黙ってされるままになってみる。せめてもと、彼女の動作はガン見しといた。
道具のセッティングが完了したアンマリちゃんは、まず桶の淵を指先で3回叩いた。すると桶の底から水が湯気を立ててみるみる湧き出してきた。温泉!?透明なお湯が7割ほど溜まると、魔法の桶は湧き出すのを止めた。そこへ彼女は布を浸して絞り、私の体を拭き始める。温かく濡れた清潔な布が、傷がある場所を避けて皮膚を清めて行く。力加減も絶妙で、物凄く気持ちが良い。髪や頭皮から爪先まで完璧。
ただし股間は勘弁して欲しかった。私、拭いてもらう為に自分から立ったよね?普通に立ち上がれてたよね?右腕も肘から下は動かしてたし、左腕はもう全部問題無く動くし、股間とお尻くらいは自分で拭かせて欲しかったよ・・・。
何か、大切な物がまた一つ失われた精神的衝撃に、暫し茫然としてしまった。
その所為か、顔も普通に拭かれて終わった。その布にファンデやマスカラが付着しなかったかも見逃した。やっちまった。もう我儘言える空気じゃない。化粧を落とさずに寝たら、1晩で肌年齢が5年進むと言われているが、丸1日以上だとどうなるんだろ・・・。
まあ皮膚呼吸はしてる感覚があるから我慢我慢。私は犯罪者。重傷人の前に重罪人。
そして一通り拭い終わると、ひと抱えはたっぷりある桶をブレもせずに持ち上げ、窓の外へジョロローっと捨てた。昔のイギリス人みたい!捨てて中身が空になった桶を手に戻ってきたアンマリちゃんは、今度は桶の淵を指先で2回叩く。すると今度は真水が湧いたらしく、それに浸された布で傷口をそっと拭いてくれた。冷たく濡れた布は熱を持った右肩には非常に嬉しい感触だったが、顔は概ね沁みた。ばい菌が入ってる証拠だ。
擦り傷があるのは顔だけのようだった。毛足の長い絨毯の上で、しゃがんだ状態からの取り押さえ劇だったからね。皮膚が破れるような衝撃は殆どなかったのだ。ただ、捻り上げられた右肩が脱臼寸前までいって腫れ、背中の左肩付近と腰に誰かさんの膝がめり込んで鬱血しており、絨毯へ叩き付けられた左脇腹や左足の太腿の所々も打ち身になっている。おっぱいにも痣が出来ていたがもう痛みは無い。魔法の指輪が凄いのか、脂肪が凄いのか、微妙だけど。
なので、この部屋にも漂っている臭いの元である、消毒液そっくりな液体をとても丁寧にぶっ掛けられたのは、首から上だけだった。実際使用されてみて気付いたけど、その臭いの中に微かにフルーティな匂いが混じってる。複雑な気持ち。色んな意味で沁みる。
勿論痛い様子なんて微塵も顔に出さなかった自信はあるけど、アンマリちゃんはそこでふと手を止め、また桶の中身を捨てに窓へ行った。お湯を捨てに行った時より歩調が随分遅いので、消毒液による痛みが引くのを待ってくれたのかも知れない。もしそうなら侍女って気配りの達人だ。しかもこんなに動いているのに汗一つかかず、息一つ乱していない。体力も腕力も、見た目通りと思わない方が良いようだ。怖いけど好きかも知れない。
それにしても伯爵様の言った魔導具の利便性は凄い。
息を吹き掛けるだけで音も無く明りが灯り続ける燭台。嵌めると体調不良が軽減される指輪。撫でると鏡になる金属。ダブルクリックで清水、3回でお湯が湧く桶。
有ると無しでは、近未来と江戸時代くらいの生活水準の差が生まれるのではなかろうか。
些かぞっとしながら、今度は右肩全体と全身の打ち身に塗り薬を塗られていく。消毒液もこのクリーム状の塗布薬も、透明な小瓶に入っていた。見た目ガラス製だが、この世界の物は尽くほんの少し地球産の物とは異質だから、触ったりするとまた違う感じがするのかも知れない。けれど、急ぐ様子のアンマリちゃんは最早私に触らせる気は無いらしく、ぱぱぱっと作業を済ませていった。
青臭い葉っぱとカカオ臭が混ざったような妙な臭いの塗り薬は刺激が無く、少量でとても良く伸びた。油分が多そう。油膜を作って成分を逃がさないのかも知れない。じゃあ浸透し難いのかしら?
手持無沙汰に考えながら眺める先では、アンマリちゃんが麻っぽい材質の生地を取り出し、同じ場所から取り出した小型ナイフで切り裂き始めていた。生地を裂くナイフは地球で言うテーブルナイフとそっくりで、銀っぽい素材だった。奪い取れば凶器として使えるかも知れないが、ナイフの凶器的使用方法を私は良く知らない。刃物を調理や食事以外で使った事が無い日本人だ。映画では良く見掛けるけれど、実際目の前にあっても、私の気持ちはそちらに向かわなかった。臆病風の暴風域です。
なんて脳内で茶化している内に切り裂き終わったアンマリちゃんは、実に自然な動作でさっとそのナイフを元の場所より奥にしまい込んだ。あ、ガン見しすぎて怪しまれた?
ともあれやっぱり灰色のその生地は、さっきまで私の体に張り付いてたのと同じ物だった事からガーゼなのだと知る。白ければ一目で理解出来たろうに。めんどくさい。灰色ガーゼは何も塗らないでそのまま塗布薬の上へ被せられた。その上に巻かれる包帯は、日本の物に比べると伸縮性に乏しいが、別にチクチクしたりはしないのでほっとした。実は不安になってきていたのよね。
この世界で至近距離に接近した事が有る人物、クリスたんもアンマリちゃんも、そして白皮症を患ってらっしゃるかも知れない伯爵様も、染み一つ無いすっごい綺麗な白い肌をしている。なんだけど、皮膚が結構厚そうで丈夫っぽかったのだ。
私は典型的な日本人の肌だ。皮膚が薄くて刺激に弱い。直接肌に触れる物は要注意。
日々の美容努力の賜物か、同年代にくらべて素肌が綺麗だと褒められてはデレデレするタイプなので、異世界での容疑者生活はやっぱり色んな意味で苦痛だ。
結局、私に新しい灰色ワンピを着せるまで、アンマリちゃんは淀み無く動き続けた。手早く片付けをする間も、やはり全く疲れた素振りを見せなかった。私ならふーふー言ってる運動量だと思う。
「それでは伯爵様をお呼び致しますので、そのままお待ちください」
言って、桶やら何やらを器用に全部抱えて退室して行った。凄い。
もし侍女をやれと言われても、絶対断ろう。
あ、でも脅されたらやるよ?
駄文・長文にも拘わらずお読み下さった方、本当にありがとうございます。
行き詰っていた執筆中の分がやっと進んだので記念更新。
かったい蓋を握力だけでこじ開けた時のような爽快感です。