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手に入れた自由


 何時間か過ぎて、やっと仕事が終わったので部屋に戻ることにした。相変わらず飯は一人で食っていたが、今夜は真砂のおかげで気分がよかった。飯を食った後、俺は真砂のことをずっと考えていた。どんな女性になっているのか・・。もしかしたら、あっちで彼氏が出来ているのかもしれない・・。それでもいい・・ただ会いたい。そして1回でいいからもう一度真砂と歩きたい。一緒に出掛け・・・ん? ん? あっ!

 「三田のヤロウ・・!」

ある事に気がついた俺は、すぐに部屋を飛び出して加賀の元へ急いだ。そして乱暴にドアを開けると、加賀は今の俺の状況とは逆で、のん気にコーヒーを飲みながら書類に目を通していた。

 「おや、どうしたんだい?」

 「オッサン、今すぐ三田にここへ来るよう伝えろっ。今すぐだ!」

 「一体、何事だね?」

 「いい・・から、早くしてくれ!」

加賀のオッサンは、俺の言うとおりすぐに三田を呼び寄せた。俺は応接用の椅子にドカッと座り、一回ため息をついた。

 “何で今まで気がつかなかったんだ・・。”

自分の情けなさに呆れながら、髪をグシャグシャとかきむしりながら三田がここに来るのを待っていた。加賀のオッサンは俺にコーヒーを差し出すと、向かいに自分も座った。

 三田を待つうちに苛立ちが募ってきた。すると、廊下からパタパタという音が響いた。来たな・・・・。

 「真夜!何かあったのか?」

ドアを開けるなり、三田はすぐにそう言いながら俺の前までつかつかとやって来た。

 「何か・・あったのかじゃねぇだろ!俺はお前によって保護監察の身だが、別に外へ出たらダメだと言う訳じゃねぇよな?」

と、問い詰めると

 「ん、まあそういう事になるね・・。君は本来ならある意味自由の身だし。」

三田は首を傾けながら答えた。それを聞いた俺は大きくため息をつき、下をうつむいた。

 「そういう大事な事はさっさと言えや・・。」

てか、気がつかなかった俺も俺だが・・。

 「そしたら、俺は別にどこへ行ってもいいんだな。」

念の為、もう一度問いかけると三田は少し頷きながら、

 「そういう事になるねぇ・・」

と答えた。俺はすぐに加賀の部屋を出ようとしたが、すぐに三田に呼び止められた。

 「真夜、どうする気なんだ?一体どこへ行くんだい?」

俺はゆっくりと三田の方を振り返ると、少し目を細めて

 「“友達”の所だよ」

と答えると、再びドアの方へ向かい部屋を出て、廊下を走っていった。そして、自分の部屋へ戻りジャケットとキーを持ち出すと、サナトリウムを出て近くに止まっていたタクシーに乗り、目的地へと向かった。



    −やっと俺が俺らしくいられる場所に帰れる・・。−

 

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