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変なオンナ

 あれから部屋にこもって、いつの間にか眠ってしまっていた。

目が覚めると、時計の針は夜の11時を示していた。

ものすごく退屈だったので、屋上に行って一服していると後ろの方から声がした。

 

「誰かいるの?」

振り返るとあのガキ、“葉山美岬”が俺の方をじっと見てつっ立っていた。

 

「な、なんだお前 もう寝る時間じゃ」

 

「別にいいじゃん、眠れないんだから」

ガキはそう言うと、星空を眺めていた。その目はなんとなく寂しそうだった。

「たばこ・・」

俺の煙草の煙に気がついたのか、ガキはつぶやいてこっちを見た。なんだ・・吸うのをやめろってか?



「たばこって、吸っている人間より、周りにいる人間の方に害が及ぶんだよ」

ガキはそう言って俺の口からたばこを取り上げると、地面に捨て踏みつぶした。

何…をしているんだコイツ。

自分が何をやったかわかってるのか?こんな病気持ちがこの俺からたばこを取り上げるなんて…。

 

「ぶっ殺す!今すぐ死ねっ」

そう言い放ちジロッと睨んだが、ガキはその場に座り込むと一度溜め息をついた。

 

「あなたにとってはおいしいたばこかも知れないけど、ここには肺を悪くしている子もいるの。その子達にとったらあなたのたばこは毒なの…それくらいわかるでしょ?」

と、言うとまた空を眺めていた。

 確かにコイツの言っている事は正しい…。

だったらフロアにも灰皿を置くなよ…。あれは

「どうぞここで吸って下さい」

って言っているようなものだ…。あそこにも何人か患者はいるし。

 

「あぁ…俺も気をつけるよ」

 

「ん、あんたが気をつけても一緒だけどね」

く…口の減らないクソガキだな、オイ!しばき倒してやろうか…この(一応)女。

そう思っていると、突然俺の前に現れて、目をじ〜っと見てくると、

 

「そういえばあなた名前は?」

そう言って、また目を見てきた。

 

「人に名前を聞く時は、先に自分の名前を言うのが礼儀ってもんデショ、おじょーちゃん?」

そしてガキの額を突いた。ガキはムッとしながら

 

「葉山美岬…18歳」

…18〜?コイツ18歳か?俺よりたった2つ下…。15、16くらいと思っていたのに。

 

「あぁ…18歳か。俺は相田真夜、20歳」

するとコイツもキョトンとしていた。

まさかコイツも同じ事を考えていたのか…。そう思うと腹が立つ。

 

「ねぇ?周りの人から聞いたんだけど…少年院入ってたってマジ?」

 でた…。コイツも他の奴等と同じか。ったくどいつもこいつも、モノ珍しそうに聞きやがって。

 

「あぁ、マジマジ!おじょーちゃんの年齢の時から入って、ついこの間出て来たの。ナイフで違う族のメンバー切りつけて、入ったの!わかりました?」

もう、うっとおしいくらいこのセリフをいろんな奴に言った。そしてその反応は“ひく”奴もいれば、

「そして、そして?」

とさらに聞きたがる奴もいる。

さて…コイツはどうだろう…とガキの方を向くと、ガキはじ〜っとしたまま突っ立っていた。

 

「そう…切られた人痛かっただろうな…」

そう言うと、うつむいた。


 

「まっ俺が切られた訳じゃないから、痛いかどうかはわかんねぇな」

俺はしゃべりながら、こんな反応初めてだと思った。

ガキはうつむいていた顔を上げると、こっちをジッと見ていた。なんか気味の悪い女だな…。

 

「じゃあ、俺行くわ。お前もさっさと寝ろよ」

そう言って立ち上がり、ドアの方に行こうとした時ガキは

 

「ねぇ、あなたって優しい人?それとも冷たい人?」

と問い掛けてきた。俺は振り返り、ガキを睨み付けると

 

「冷たい人に決まってんだろ。優しかったら患者のオメーをそこに置いて行かないよ」

そう言い放つと、再びドアの方へ行き階段を降りていった。

 

「変なオンナ…」

 “あなたって優しい人?”

そんな事聞かれたの初めてだ。

今までいろんなな女と付き合ったりしていたが、こんな事聞く奴はいなかった。

だから実際目の前でそう言われた時、一瞬どう答えればいいかわからなかった。

それでつい、あんな風に答えてしまった。

 でも本当に俺は冷たい人間だ…。

俺の周りにいる奴、三田も加賀もババァもすべていなくなればいいと思った。優しい奴はこんな事考えもしない。

 

「はぁ…」

溜め息ばかりが出てきた。

そしてイライラも募ってきた。

できるだけ葉山美岬にも会いたくないという気持ちでいっぱいだった。

あのガキと会うと、何だか俺が俺で無くなる気がしていたからだ。

 自販機でコーヒーを買い、部屋に戻った。

コーヒーを飲んだせいか、その日は眠れなかった…。

眠れなかったが俺はベッドに潜り込み、その中で髪をぐしゃぐしゃにかきまくった。

その心の中はすべての“雑音”を消したい気持ちでいっぱいだった。

 ―こんなの俺じゃない―


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