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かけがえのない友情

 「俺はその時、本当にゾクッとしたよ。こいつを敵にしてはいけないって心底思ったよ・・」

ケイゴは少し微笑みながら言った。

そんな事も、そう言えばあったよな・・。その後、確か俺が族に入っている事も教えたらマジで驚いていたっけ・・。それから何回か会う内に少しずつ“親友”に近付いたよな。

 「俺はお前がずっと隠してきた“あの事”を・・自分が受けてきた辛い事を、俺なんかに打ち明けてくれた時は本当に嬉しかった。その時やっと俺達は親友になったんだって思ったよ。」

 ケイゴはどことなく、悔しそうな表情を見せていた。話している内容は懐かしく、嬉しいものなのに・・。

 「あれから・・お前は何でも俺に話してくれると思っていたのにな・・」

そう呟くと、ケイゴは手で顔を覆っていた。

 「ケイゴ、俺は何でもお前に話しているじゃ・・」

ガッッ!!

 俺が言い終わる前に、ケイゴは殴りかかってきた・・その拍子で俺は椅子から倒れた。

 「なっっ・・」

起き上がろうとしたが、すぐにケイゴは俺の上に乗りシャツの襟を掴むと、

 「だったら何で黙っていたんだ!お前が今サナトリウムにいる事を!」

・・・・・・っ!

 一瞬頭の中が真っ白になった。ケイゴは手を離すとフンッと笑い、

 「何故、知っているんだって顔しているな。そのサナトリウムにこの間まで俺の甥っ子が入院していたんだよ。退院する時、遅れて顔出してみりゃ、上のテラスにお前がいるじゃねえか!」

 ケイゴはさらに話し続けた。

 「帰って、その子に聞いたんだよ。“あのお兄ちゃんはどこか悪いのか?”と・・。そしたら思いもよらない言葉が返ってきたよ、“あのお兄ちゃんは、あそこで働いているんだよ”って」

ケイゴの言葉1つ1つは、どれも震えていた。怒りが込み上げているのがよくわかった。

 甥っ子っていうのは、まさか昨日俺が倒れる前に退院したあのガキか・・。まさかケイゴと繋がりがあったなんて・・。

 「俺が!俺がその時どんなにショックを受けたかわかるか?お前を信じていた俺の気持ちがわかるか?」

 ケイゴはもう1発殴りかかろうとしたがカイに押さえられていた。

 「俺だって、お前等の事親友だと思っている。」

 「だったら何故言ってくれなかったんだ!本当の事を・・なぜ・・」

ケイゴはカイに押さえられながら言い返してきた。

 「言おうと思った・・けど知っているだろ?俺の事・・。信じたい奴に対しても100%信じる事が出来ないって。不安がある事・・親友ならそれ位気付けよ・・」

 そう言うと、俺はそのままうつ伏せになり顔を隠した。

今、言った事は本心だった。俺には100%信じる事が出来る人間はいない。あの真砂に対してもだ・・。いや、俺がこうも人を信じられなくなったのは、真砂が俺に黙って姿を消した事が原因だった。

 ケイゴとカイはそれから何も言わなくなった。

しかし、最近何かと荒れていた俺にとって今回のケイゴの行動は嬉しかった。これは嘘ではなく本当に嬉しかった。そう思うと、余計顔が赤くなってきた。


 それから10分くらい俺達は沈黙を続けていた。

カイは相変わらずグラスやカウンターの手入れ、ケイゴは座ったまま、俺はうつ伏せで顔を隠したまま・・。何を話したら良いのか・・。よく分からなかったが、ただ1言自然に口から出てしまった。

 「腹減った・・」

 「腹減った・・」

 「腹減った・・」

俺たち三人とも同時に同じ事を発していた・・。一瞬3人ともキョトンとしていたが、すぐに顔を合わせるとだんだんと笑いが込み上げ・・

 「ぶっ・・わっはっはっはっはっ!」

と、笑ってしまった。これはもちろんケイゴもカイも同じだった。

 例え、言い争いをしていても考える事は同じだった。

 カイは笑いながら、キッチンへと向かうと3人分の食事を作ってくれた。そして、それを食いながら俺は2人に年少を出てからの事を全て話した。

 

 俺が全て話し終わった後、ケイゴとカイは少し黙っていた。ケイゴは1回天井を見上げると、

 「わかった、これで全部なら今度こそ俺等はお前の事を信じても良いんだな?」

そう念押ししてきた。俺はその問いに深く頷いた。

 「それならいいんだ。お前がそのサナトリウムで何をしでかそうと考えても、別に俺は止めたりしない。1つ言っておく、俺とカイはお前の味方だ。それは覚えとけよ。」

 ケイゴがそう言った後、カイも頷いていた。

 「水原の方はどうするんだ?もうここには来ないと思うが・・。ひょっとしたらサナトリウムの方に・・」

 「それはねぇよ。いくら水原が優れていても、そこまでは探り出せねぇ。俺がサナトリウムに入った時、三田と加賀には強く口止めしたから・・。」

 カイの一言に対して、俺は否定した。しかし内心は不安だらけだった。

もしかしたら、今頃俺の居場所を付き止めているのかもしれない・・。そんな俺に2人は万が一また水原が来ても、とぼけたフリをしておくと言ってくれた。

 DEAD ANGELの入り口で、俺は2人に何かあったら必ず相談すると約束し、サナトリウムへと帰っていった。

 その時の俺は体の中につまっていた重いカタマリが一気に無くなった様にすっきりしていた。





更新が大幅に遅れてしまってすいません。続きを待っていて下さった皆様、お待たせいたしました。

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