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俺のいるべき場所

 アパートに戻った俺は、単車に乗り換えると“目的地”へと向かっていった。

 しばらくして目的地に着くと、単車から降り目の前にある店を前にして、ただ懐かしい気持ちでいっぱいだった。そしてドアを開けると、中では大音量の曲が流れ、俺と同じ年代の人間共がたむろっていた。ここは、酒・煙草・女・・何でもOKと最悪極まりないヤロー共のタマリ場・・そう、ここは俺がいた族のタマリ場で“DEAD ANGEL”という店だった。

 俺は階段の上から大きく手を叩くと、それまで騒いでいた奴等が一斉にこっちを見てきた。一瞬シ・・ンとしたが、

 「真夜じゃねえかよっ!おい」

 「やっだー真夜じゃない!」

 「いつ出て来たんだよ!」

と、いった声が聞こえてきた。俺は手を上げると、

 「久しぶりだな!」

そう言いながら、階段を下りていった。すれ違う1人1人に声を掛けながらカウンターへと向かっていった。カウンターにはバーテンのカイと俺のダチのケイゴがいた。

 「よおっ、久しぶりだな!元気にしてたかよ」

と、声を掛けると、

 「ああ、オメーも変わってねえな。」

ケイゴがそう言うと俺の肩を、強く叩いてきた。ああ・・やっぱり俺にはこっちの方が落ち着くかも・・。周りにいる奴等も同じような人間だし、あのイライラもない。どれだけ加賀や三田が俺の事を変えようとしても、所詮俺は“こっち”向きなんだ。そう今改めて実感した。

 「2年経つのにまだこの店あったのかよ」

 「そうなんだよ、よく続いているだろ?」

俺とケイゴの会話を聞いていたカイが、俺たちの顔にタオルを投げつけた。

 2年前俺はここでは、いわゆる“王様”だった。どいつもこいつも俺の言う事を聞いていた。どうやらそれは今でも変わらないらしい・・。実際、俺が2年前まで座っていた俺専用のシートも誰も座ることなく、今日を迎えていた。俺はカイから酒を手に入れると、ソファにドカッと座り酒を飲み始めた。

 そんな俺の元に、昔からの常連で同じ族のメンバーであるカオルがやってきて、隣に座ってくると、俺の肩に手を置き

 「真夜〜2年も寂しかったぞ。ホント久しぶり〜」

と、耳元にささやいてきた。

 「そうそう、お前が年少にいる間カオルずっと愚痴ってたんだぜ?」

ケイゴの言葉に、カオルはうっせえと叫んでいた。だが、カオルはもちろん彼女でも何でもなかった。俺はただの店の常連で、同じ族のメンバーと思っていたが、ケイゴの話によるとどうやらカオルの方は違っていたようだ。2年・・いやもっと前からカオルは俺の事が好きだったらしい。だが、俺にはもちろん真砂がいたし・・。カオルがこうして近づいてくるのは、真砂が傍にいないから出来ることだった。

 カオルは相変わらず、俺に寄り添っていた・・。俺は1度上を見上げると、カオルの肩に手を回し俺の方に寄せるとカオルにキスをした。それを見ていた周りのやつらからは、冷やかす声とカオルへの野次が聞こえてきた。そして1人顔を赤らめているカオルの耳元に

 「もうすぐしたら、真砂が帰ってくるんだ。」

と、囁いた。それを聞いたカオルは、また別の意味で顔を赤くして俺の顔を見ると、

 「なんだって・・?あの女が?」

そう言うカオルの手は震えていた・・。カオルが真砂の事を邪魔に思っていたのは知っていた。

 「真夜・・まさかあんた、あの女とよりを戻そうとしていないよね?」

と、少し落ち着いた感じで聞いてきた。俺はただ黙って煙草を吸い微笑んでいた。

 「ケイゴォ!真夜を何とかしてよ!あの女は合わないよ」

と、カオルはケイゴに叫んでいた。しかしケイゴもまた、ただ笑っているだけだった。俺は煙草の煙をカオルに吹きかけると、

 「カオル?どんなに待っても俺はお前にはなびかねえよ。一生・・」

それを聞くと、周りにいた女共がクスクスと笑い始めた。カオルはさっきよりも顔を赤らめると、何度も俺の胸元を殴っていた。そんなカオルを無視して、腕時計を見るともう3時を過ぎていた。ヤベッもうそろそろ戻らないと、三田や加賀がうるさいからな・・。

 「ケイゴォッ!」

そう叫ぶと、カオルを引き離しケイゴに向かって押し付けた。そしてジャケットを持つと階段を上がっていった。

 「真夜?どこに行くの?」

カオルはそう言うと、俺の後についてこようとした。

 「金魚のフンじゃねえんだから、付いてくんなよ。」

そう言うと店を出て、単車に乗りそのままサナトリウムへ戻った。久しぶりに会ったが、あの女相変わらずベタベタくっつきやがって。うっとおしい・・。

 ふと、さっきカオルとキスをした事を思い出すと、唇を手の甲でゴシゴシとふき取った。


 サナトリウムに着くと、単車を駐輪場に隠すように置き、煙草を吸った。こうしてサナトリウムを見ていると、やっぱり俺にはDEAD ANGELにいる奴等と一緒にいる方が合っていると、思ってしまう。結局俺はここでどうしたいのかもわからないし・・。

 フーっとため息をつくと、煙草を灰皿に捨て自分の部屋に戻り、ベッドへ倒れこむとそのまま眠ってしまった。


  −俺は結局・・何がしたいのか・・−

こんにちは。山口です。やっと、第10部分を執筆完了いたしました。この作品を読んで下さり本当にありがとうございます。これからも頑張りますのでよろしくお願い致します。感想等お待ちしています。

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