その四十八 思いっきりの肩すかし
お久しぶりです。
ようやく続き… でも、変な方へ行っちゃいました…
「うわあぁぁぁぁぁぁ~~~~!!!」
飛び起きた途端、あたしは思いっきり叫ぶのを止められなかった。
アレクが。
アレクがアレクがアレクが!
やっと、アレクと、会えたって言うのに!!
思い出して、思わず七転八倒して転げ回って悶えじぬ。
「なんで、眼、覚めるかな~~~~!???」
―――― ええ。帰ってきてしまったんですよ、あたくしは!!
いや~~!! もう、泣きたい。
本当に泣きたい。
あの時、ユーリーの体ごと引きずりこまれた暗闇の中。
微かな蝋燭の炎の中に浮かび上がってきたのは、間違いなく、あれほど焦がれた銀の髪。
その途端、あたしってば急激な覚醒感に囚われて、あろうことか、眼を、醒ましてしまったんですよ~~~~!!!
「あ、ありえない~~~!!!」
ああもう、本当に有り得ないだろうが~~~~!!!
なんなのよ、これ!
本当に、何、なんですか、この事態!
確かに、あたしの夢の世界って、見ているあたしの思うままには絶対にならなかったりしたけどさ。
このタイミング!
この状況下で!
なんで目、覚ますかな、あたしは!!!
ベッドの横、おそらくこの覚醒を引き起こした元凶たる、がなりたてる目覚ましを思いっきり力一杯殴りつけるようにして止める。力の有り余ったその一撃は、まんまるボディの目覚ましを大きな音をさせて床に転がさせてしまうほど。
ガシャンと言う耳障りな音と同時に、背面から中に有った乾電池が飛び出して冷たい床に転がる。
思った以上に大きなその音に気を取られ、あたしはまるでスローモーションを見るように自分の引き起こした事態を眺めていて――――
急激に膨れ上がってきた罪悪感に、慌てて、落ちて散らばった時計と電池を拾い上げる。ぽっかりと空いた電池入れのその場所にちゃんとプラスマイナスその方向を確認してもう一度電池をセットして。
すぐに、きちんと動きだした時計の秒針を確認してホッと一息溜息を吐く。
―――――― 時計に八つ当たりしてどうすんの…
目覚ましは職務に忠実に働いて、決められた時間に音を鳴らしただけじゃない。
あたしがちゃんと起きるように、仕事に間に合うように。
仕事…
ああ、今日も、仕事行かないと。
これが現実。
こっちの方が、あたしにとっては間違いのない現実。
気まぐれに、行って帰って行って帰って行って帰って…
でも、必ずあたしが帰ってくる場所。
夢の世界はどうしたって夢でしかない。
ユーリーもガイもそしてアレクも、夢の世界のあたしだけが知ってる住人…
―――― アレク…
そう。
「アレクだ…」
あれは、確かにアレク。
あたしが、ユーリーが間違える筈がない。
眼を覚ます前、暗闇の中で聞いた声。小さな光の中で、一瞬この目に飛び込んできたのは、間違いなく、あたしのアレク――――
「~~~~~~…!!」
声に、ならない。
嬉しくて。
嬉しくてうれしくてうれしくて―――――
「…やっ、たあぁぁぁ~~~~~!!!!」
今日一番の大声で、あたしは思わず叫んでいた。
「アレク!アレクだ!!」
間違いなんかしない。あれは、アレクだ。ずっとずっと会いたかった、あたしのアレク…
生きてた。
会えた。
動いていた―――――― それだけで。
もう、それだけで嬉しくて、舞い上がりそうになる気持ちを抑えられない。
「うるせーぞ!このバカ! 朝っぱらから何やって…」
バタン!と大きな音を立てて部屋のドアが開く。
パジャマのままで乗り込んできた兄貴に、いつもだったら「ノックの一つもしなさいよ!」と悪態の一つも吐く所なんだけど。
「ええ?ああ、なに~~?」
今日のあたしは気分がいいのさ。
なんたってアレク。
アレクが、アレクがちゃんと生きてたんだもん!!
確かにね~
感動の対面ってとこで、思いっきり弾かれちゃったのは、業腹なんだけど、この際、そんなささやかな事はぽいっと横に置いておこう。
アレクが、アレクが生きていた…!
そう思って浮かれながら、解った。
あたしは解っていて、考えないようにしてたんだって。
何を?――――― 最悪のシナリオを。
アレクの生死を、考えないように考えないようにしていたのは誰でもなく、本当はあたし。
あたし自身が、気持ちの中で、信じないままに思い描いていたんだ。
その事が、きっと無意識のままにあたしの精神安定を阻害して、此処の所の右往左往を呼びこんでいたんだって今なら解る。それほどまでに、アレクの長期にわたる不在は痛かった―――――
―――― でも、もう平気。もう、大丈夫。
だって、帰ってきたもんね。アレク、ちゃんと動いてたもんね!
これでおしまい。
あたしの夢の理想郷での悪夢も、今日でおしまい!
アレクが居れば大丈夫。
アレクが帰ってきたら、何もかもうまくいく。
「やった~~~~!!」
思わず思いっきり万歳を叫んだら、すぐ横から変な声が降ってきた。
「…お前」
「あれ?」
兄貴、居たの。
あ、そういや、さっき怒鳴りこんで来てたっけ?
いや~~~、ごめんごめん!
あんまり嬉しくて、ついついその存在を忘れきってたよ。
「有里…」
「ん?」
お前、大丈夫か…?
なんて、凄く真剣な顔で聞くから、思わずきょとんとしてしまう。
「大丈夫って、何が?」
「なにって、お前…」
「へ? なにかあった?」
そんな心配される事、なにも無いよう!
あたしは現在すこぶる絶好調!矢でも鉄砲でも、持って来いってんだ、べらんめぇ!ってな感じですぜ、旦那。
「…まあ、確かに、体は元気そうではあるけどな…」
な~にか、言いたそうだね、おあにいさん。
いっつもなら、き~~~っ!!って問い詰めるとこだけど、今日は勘弁してあげよう。
あたしの、アレクの無事な帰還に免じてね。
「――――何やってんだい、二人とも!!」
もう、半過ぎてるよ!!と、階段下からわが母上様の声が木霊して。
あたしは慌てて、さっき放り投げた時計を見る。
午前6時、40分―――――
「――――― やばい!」
今日、朝の申し送りがある日だったんじゃなかったっけ?
「ち、遅刻! 兄貴!どいて!」
「ばっかやろう! お前より俺の方が切実だ!今日は、日直だってのに!」
「兄貴は、あたしより近いじゃん! まだ、間に合うよう!」
「このバカ! 時間!良く見ろ!」
競い合って階段を駆け下りて、兄貴と二人なだれ込んだ今のテレビの画面は丁度朝のニュースが始まったとこ―――――
「げっ!マジ!?」
もう、7時じゃん!!
「さっき、40分だったのに~~~!!」
「どこが!?」
「目覚まし!」
「誰の!?」
「あたしの!」
「お前の扱いに耐えかねて、遂にぶっ壊れたか、気の毒に!」
「~~~~~!!!」
くそ~~~~!!!
今日ばかりは反論出来ねぇじゃないの!!
大慌てで、ご飯を掻き込み(朝ごはんだけは抜かせないの!)兄貴と先を争うようにして洗面所へ駆け込む。
「行ってきま~す!!」
迷うことなく、一番上に有ったシャツを被り、さっと髪を整えて口紅だけ塗って玄関を飛び出す。
扉脇に置いていたスクーターからメットを取り出し、慣れた手順でベルトを締めてスクーターのエンジンをかける。
快晴――――
冬の青空は、何処までも澄んだ水のように青くって。
――――― 帰ったら、時計、合わさなくっちゃ…
そう呟いて、あたしは機嫌よく自分の世界へ飛び出して行く。
その時のあたしは、この先に何が待っているのか、何一つ気付きもしなかった。
ようやく更新…です。
いつも読んで頂いてありがとうございます。
え~… 最初に言います。ごめんなさい。何の解決もついてません。でも、こうなってしまいました。
詳しい弁解は活動報告とブログにて。
続きはなるだけお待たせしないで更新したいと思ってます。
いつも読んで頂いてありがとうございます。
…前言、撤回しなきゃならないみたいです…
すこし、更新に時間をください。
詳しくは活動報告で… 申し訳ありません!!