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その四十 会えない時間

大変ながらくお待たせいたしました。


いない…


いない、いない、いない。


居ないったらいない。ぜっんぜんいない。

居ないから―――――― 会えないでしょうーが!!




どっかのギャグ漫画じゃないけれど、きーっ!!っと、ここに、布でもあったら歯に挟んで思いっきり引っ張っちゃうような気分。

もちろん思うだけよ、思うだけ。

だって、あたしの自分で動かせる手足ってものが此処には無いからね。


はい。

今日も今日とて、ころころすっとん。おやすみなさいのごあいさつの後、すっとこちらに来てしまってるあたしなんだけど。

会えないの… 会えないのよ~~~!! こっちに日参できるようになって、もう二週間近くにもなるのに、会えてない。

誰よりも会いたい人に、あたしは一度も会えてない!


―――――― アレク! あんた、一体何してんのよ!!


一番最後に会ったの何時だったっけ? ――――― そうよ。剣を磨きながら、ユーリーの父上の話をアレクがしてくれたのが一番最後…

あれって、すったもんだのお見合い騒動の最中だったっけ? え? 現実あっちの時間で、もう二カ月近くも前の事じゃん! だったら、こっちの時間で考えたりなんかしたら、どうなのよ! 一体いつから会えてないの!? 季節変わっちゃってるじゃんか!!


――――― 確かにね~ 忙しいって話は聞いてますけど~…

宰相の補佐に、揉め事が解決しないままの領地。お父上の公爵様のお具合も、なんだかすこぶるよろしくないって話だし… 確かに話聞いてるだけで、体がいくつあっても足りないって感じ。

でも、だからってこの放置状態はちょっと許せないんじゃありません? おねーさん、マジでキレちゃうよ?

ほら、ユーリーだって、少なからず落ち込みぎみ。この子ってば凄く真面目だから、自分の仕事の手抜きとか、そんな事は一切しないんだけど、ちょっとした拍子には~とため息なんかついている。

そんな時は、お互いの状態なんか関係なくシンクロしちゃうからね。わかっちゃうんだよね、この子の状態ぐらい。


今まで、ユーリーは見習とはいえアレクの従僕も兼ねてたから、第一騎士団ここにアレクが居る時は、それなりに近くでお仕事してたりなんかするんだよね。これはもう、あたしにとっても凄くラッキーなことだったんだけれども。

だから、なお一層この不在はこたえる。憧れの団長の、その姿すらこんなに長い事見ないなんて、いまだかつて無かったからね。

何と言うか、所在ない? 遣り切れない? まるで、自分はアレクにとって、こんなに会わなくても平気な存在なんだって思ってしまったりなんかして…


そんなこと思うの理不尽だ。理不尽だよね。でも、近くにいられた時間が有るから、なお一層、その不在が腹立たしいって思っちゃわない?

そんな感情をユーリーは一生懸命抑えようとしてるけれど。


――――― 寂しい。

そう、寂しいん、だ。ユーリーは―――― あたしは、凄くすごく寂しくて、かなしい。


ヤバいヤバいと思いながら、感情がシンクロしてる。ユーリーと違って一応大人のあたしには、アレクの抱える事情も、どうしようもない事が起きる大人の社会も解って入る筈なのに、思わず、一緒になって誰かに訴えたくなる気持ちがわきあがってくるのを抑えられない。


あたしがこっちに来てるのは、決してアレクの為だけじゃないけれど。

でも、アレクに会える。それだけで、この不可解な状況に我慢していられたんだってわかる。


何故かいきなりこの世界に連れてこられて、

それも、心だけを自分で無い違う人間の中に放り込まれて。

確かに、本来のあたしなら、おそらく絶対に目にすることなど無かったものを実際にこの目で確認して、色々な出来ない筈の事を体験させてもらって。きっと、凄く良い思いをしているんだろうけれど。


それでも、自分自身で思うように動けない。

自分の意思を生かせない。

その状況は、あたし自身が心で思っている以上にキツイ。いままで、考えないようにはしてきたけれど。


どうしたって、割が合わない。納得できない。

思考するだけで暮らす。何もできないままで、考える事だけしかできない。――――― なんか、改めて思い返すと、凄く悲惨な状況なんではないですか?

まあ、普通はありえない事だから、他の誰とも比較できない事だけど… でも、ちょっとねぇ…? 

もしかしたら、本来なら発狂モンではないのだろうか。

あたしってば、夢の間だけだって事と、一目ぼれしたアレクの美貌とに思いっきり惑わされ…て…たかな…?――――― 責任者、出てこい…


――――― うわぉ!! 

い、いけない、いけない!! 思考のマイナスループはあたしにとったら鬼門よ、鬼門! こんなこと、考えてるだけで、ストレス、溜まっちゃうでしょうが! もうちっと、物事をプラスに建設的に…

そう! そうよ! この先、アレクに会える日の事でも考えるの! 

団長辞めたとかじゃないんだし! 日参してれば、きっと、会えるし! 絶対、絶対に会えるわよ!! 恋する女は強いんだから!!


でも……

良く考えたら、おかしいんだよね。

いくら忙しいからって、あの目立つ人をこんなにも見かけないなんて。


確かに、王宮と領地を行ったり来たりって話だけど、厩でもとんと見かけないし。

そう言えば、お気に入りの葦毛の馬もこの頃見ていない。直接、王宮の厩にでも置いて行ってるのかな? これまで、王宮に行く時でも馬だけはこっちの方に置いて行ってたのに…

おかげで、厩番のじいさんのご機嫌が悪いんだよね。めったやたらに八つ当たりとかするタイプじゃないんだけど、「…うちの世話の何が…」とかって言ってたから、かな~りプライドを刺激されちゃってるみたい。

いや、別に、アレクの馬が、王宮専用の方に行っちゃってるって決まった訳ではないんだけどね。ほら、どうしたって噂って言うか、人の口って言うか、いろいろ、言葉って先走っちゃう訳ですよ。いらない事をわざわざ言いに来る人もいる訳だし―――― あ~あ、な~んか、や~な雰囲気。


これまでもアレクの留守って結構あったけど、こんなに長い期間顔さえ見せない事ってやっぱり誰に聞いても無かったみたい。その所為でか、第一騎士団自体の空気って言うか、雰囲気自体も少しだけ変わってきてるみたい。


や~だな~ こ~ゆ~の。

この頃、アレクが居ないから、城下へのお使いも無いし。此処んとこ、一の郭の塀の内側しか歩いてない。用がある訳じゃないから、あんまりむやみにうろちょろ出来ないし。その所為か、ガイにも会ってないしな…


う~う~う~…

こちらの楽しみの二大イケメン様にお会いできないなんて、一体どうなってるんだか。


毎日が単調だねぇ…

せっかくこうしてこっちに来れてるんだから、なにかこう、ドキドキとか、ワクワクとか、そう言ったものを出来れば用意していただけないでしょうか?



――――― な~んてね。


そんな事を考えていたからでしょうか。


ほほほ… 会えたんですよぉ! 

いっちばんの人じゃないけどね。


会えました。あの方に。






やっと、更新できました。

長…かった… よかった、書けて…

とりあえず、明日にはもう一話更新する予定です。

なんとか、今月中に、あと二三話は更新できそうです。

来てくださっている方、お気に入り登録を下さった方、ありがとうございます。

のろのろとですが、進んでいきたいと思っています。


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