表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/54

その三十

お見合い編。本格的に始まります。

――――― 早まったかな…


いや、思いっきり早まってるだろう。


誰が?―――― もちろん、あたし・・・がだ!


しかし、そんな事認めたくないじゃないか! この場合! 今、この現状、既に逃げるとか逃げないとかってレベルの問題ではないの…だよ、もう!


今、あたしは、実家から駅三つ先の、この辺りでは一応一流と言われるホテルのロビーにいる。しかも、この日の為に新調されてしまった下ろしたてのドレススーツを着て。


いや~~~~!!

なんで? なんで、こうなるの!?

二週間… 剛史に「お見合いしてやるぜ!」宣言してから、まだ、二週間も経ってないってのに! 


なんで? ―――――― 本当に、いったい、何がなじょしてこうなった…


あの日、剛史の売り言葉を、しっかり買って帰宅して、力強く玄関を開け開口一番、


「あたし、見合いする!」


と、あたしが一言宣言した途端。


「まああ!!!! やっとその気になってくれたのね!!有里ちゃん! おばちゃんはとっても嬉しいわ!!」


と言う言葉と共に、あたしは靴も脱がない状態で、変に柔らかい物体に、思いっきりの笑みと共に抱き締められていたんである。


――――― げ~~~~~っつ!!


「な、なんで、光子おばさんが此処に居るの~~~!!??」


と、思わず叫んでしまっても、もう後の祭り。


「嬉しいわ、嬉しいわ! おばちゃんねぇ、有里ちゃんの為にすっごくすっごくがんばっちゃったのよ!もう、今回は選りすぐり。誰よりも先に有里ちゃんトコ、持ってきちゃってたのよ。どの人?え?どれ?どれがいいの? あ!これ? この人ね! この人は本当にお勧めなの! 真面目で、一流企業にお勤めで、―――― そうだ! 確か、今月の日曜だったらお会いできるって言ってらしたのよ! まあ!なんてタイミングが良いんでしょう! 有里ちゃんの方も…え? 大丈夫? 職場の方にはOKもらってる? それ本当なの、晶ちゃん! これはきっとご縁があるって証拠よね!? ああ!もう、何て上手くいくんでしょ! これは成婚間違いなしね!」


――――― ちょ~~~と、待て!! 待つんだ、皆!


そこにあたしの意見は無いのか~~!――――― と、叫ぶ余裕も、話す余裕も…… もう既になかったんだよ!こんちくしょう!


しかも、敵もさる者ひっかくもの(?)。あたしの気が変わんないうちにとかなんとか言っちゃって、あれよあれよという間に場所から時間から、何もかもが見る見るうちにセッティングされてしまい――――― たった二週間で、もう見合いって…何? …いったい、なんなの、その電光石火の早業は!!


光子おばさん、恐るべし――――って、こうなるって解ってたから逃げ回ってたのに~~!!


その気になった光子おばさんは強かった。ほんとにほんとに、想像以上に強かった。


何しろこの前の週末には、もはや思考放棄を決め込んで、朝寝坊に勤しむ予定だったはずのあたしをば、しっかりきっかり早朝に叩き起こし、そのまま、朝ごはんも食べずに向かったのは値段の関係上、めったに行かない某伊○丹。それこそ、自分だったら絶対に買わないような値段とデザインの服をとっかえひっかえ着せかえられた揚句に、目ん玉飛び出るような値段のスーツ一式と、靴、ブラウス、バックに至るまで、「プレゼント!」と、渡されてしまったんである。


―――― そんなもの、受け取る訳にいかねーべさ!(何弁だ?)


と、どんなにどんなに説得と抵抗を繰り返してやったのに、


「ちゃんと、晶ちゃんからお金は預かってるから心配しないで!」


ほんとは、おばさんが全部あげたかったんだけどね~と言われて、思わずその場で卒倒したくなった。


「―――― だってさ、そうしないと、全部自分が出すって聞かなかったんだよ」


とは、家に帰って泣きついた時のおふくろ様のご言い分。


「流石に、いかなみっちゃんにとは言え、そんな散財、させる訳にはいかんだろうが。まあ、どんな洋服買ったって、晴れ着、和装で一式誂えるよりは、遥かにお買い得だから安心しときな。洋服は使い回しもできるしね~」


と、言われたら、もう反論する気もありゃしない。

こんな高い服、一体どこに着て行けと…


そんでその日のうちに、「次の日曜、するからね」と、おばさんから連絡がきてしまったりなんかして。


「…なにを?」

「や~ね~ お見合いに決まってるじゃない!」


―――― だから、そこから逃げたかったんですが…


なんて、心の叫びはもう誰にも聞いてなんかもらえなかった。


墓穴掘った… 思いっきり掘りまくった。 

誰が?――――― だから、あたしがだって!


キャンセル、キャンセル、今すぐキャンセル… ――――― 出来るもんならやっている。

今さら出来っかよ、そんなこと! 後が怖い… そんなことしたら、あたしの今後の人生がぁ!


……と、とりあえず、見合い、だから。

うん。まだ、見合い、だもんね。


そーだよ。まだ、見合いだもん。そのまま結婚なんてする訳じゃないし… こーゆーのって、こっちがどんだけ頑張ったって、上手くいくってもんでもないし? おばさんがあんだけ進めるんだもん。きっと、ものすごい優良物件だろうから、まあ会ってみるだけでも…―――― って、やっぱりいや~~~!! やっぱりやっぱりやりたくね~~~!!


だって、あたし、好きな人いるし!―――― 片思いだけど。

付きあうなら、好きな人と付き合いたいし!――――― 不可能だけど!


などと、こんなことをぶつぶつつぶやいたって何の解決にもならないのはわかってんの! わかってんだけど、それでも、それでも言いたいの! え~いもう! いったいぜんたいこんな事態に誰がした!


……はい、すみません。すべて、あたしのせいでございます…


わかってるわよ、そんなこと。全部全部、あたしの、このとんでもない考え無しが原因ですよ。


…いや、違う。違うぞ。……あいつだ。あいつが悪い。

そうだ。すべて、奴が、悪い。

絶対絶対、ぜ~んぶ、剛史が、悪いんだ!



あの後、剛史とはなんだかんだですれ違ってばっかり―――― 別に強いて顔を会わせたい訳じゃないんだけど。

なのになんでか知らないが、あたしのお見合いの噂は、三日ののちには病院中に知れ渡ることとなっていて、おかげで、その週の水曜日には、真由美にいきなり事務所へ奇襲をかけられた。


「あんた! いったいどうなってんの!」


―――――はい。それ、あたしの方が聞きたいです。


とにもかくにも、就業時間中に、職場内で詳しい話をする訳にも行かず、無理をして時間を作って真由美と会えたのがやっと今週の金曜日。


「遅い!」

「ごめん!」


日曜日を連続で開けてもらう代わりに、「これとこれ、今週中にお願いね」と、深山さんにしっかり仕事を言いつけられて、このところあたしはもっぱら残業続き。…うう… これって、何の嫌がらせですか…


この日も、いつもの店にあたしが着けたのは、もう九時もしっかり回ってからだというこの体たらく。

真由美には、剛史との冷戦の間に、実は有った事無かった事、すべて全部、既に洗いざらい吐かされていたから、今回も、もう何も隠すつもりは傍から無い。


むしろ、もうこうなったら、誰かに聞いてもらわずにはおられないっていうか、もう、誰か、お願い同情して!っていうような気分だったんだよね、あたしとしても。


だって、こんな時に限って、なんでか知らないけどあっちの世界にはなかなか行けないし。やっと行けたと思ったら、麗しのアレクは領地の方のいざこざで、現在長期に渡る出張中… え~~~ん!なんで~~~!?


せめて、せめてアレクの顔見て、癒しにしたいと思ったのに! 繰り返しになるけど、写真も肖像も手元には何にもないんだよ~! いずれにせよ、何でもかんでも、こっちまでは持ってこれないから、麗しのアレクの面影は、心のカンバスに焼き付けるしか方法がない。


確かに、もう、これ以上ないほどに、焼き付いてはいるけどさ! だからって、そーゆーもんじゃないでしょう!? 好きな顔は何時だって、何時までだって見ていたいじゃない。だれか、この乙女心をわかってよ!


おまけに、ガイまで、一回も顔を出してくれなかった…

ああ、もう! たのむからあたしの心に潤いを。イケメン、カムバック~~~~!!! ―――― い、いかん、遂に理性が…



そんなこんなで思いっきり煮詰まってたもんだから、この日、真由美の顔を見た途端あたしは切れた。はい。きっぱりはっきり切れました。もう洗いざらい、お見合いに至るまでの事情から、剛史がほざいたあの言い草、果ては光子おばさんの強引さの至るまで、何から何まで包み隠さず思いっきりぶちまけさせていただきました!


で、その時の彼女の第一声。


「うわ…っ 最悪…」


――――― おお! ありがとう、わが友よ!


今日ほどあんたが友達で良かったって思った事はないわ~と、思わずすりすりしてやったら、嫌そうに叩き倒して言ってくれたけどね。


「たぶん、あんたが思ってる事とは絶対に意味違うから」


――――― へ? なんで?


「これ以外に何の最悪があるんだよ~」


と、泣きついてみても、返ってきたのは非常に重たいため息をひとつ。

それを思いっきりテーブルに落としてくれっちゃった。


「違うって何よ」

「違うから違うって言ってんの」

「意味わかんない!」

「ああ、はいはい」


あんたは、わかんなくて良いから。


なんか、すごく子供みたいにあしらわれた様な気がしたけど、もうそれから先は思う存分愚痴って、のろけて絡みまくった。


それが、一昨日。

んで、今日。実は、お見合い当日。


うわ~~~~っ! やりたくね~やりたくね~と、もがきながらも、あたしは、おばさんにコーディネートされた格好で、こんなホテルのロビーに座っちゃってるんです…


え~~ん、誰か、助けてよ~







ようやく更新です。

でも、まだ、これって状況説明?って感じですかね。

ゆるゆると、それでもこの後二三話ぐらいは、出来ればあんまりお待たせしないうちに更新はしたいと思っております。

この間にユニーク6万、行くことができました。

読んでくださっている方に心よりの感謝を!

なるだけ早く…更新頑張ります。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ