その始まり
始めてしまいました、新連載。
最初の二三話は思いっきりネタばれ満載の状況説明から。
よろしければ楽しんでやってください。
恋をした。
したくもないのに、初めて真剣な恋をした。
あたしが正真正銘、初めて本気で惚れこんでしまったあの人は、
十歳年上の上司で上官で。
信じられないくらいの綺麗な顔に、信じられないくらいにカッコいいお姿の、まごう事無きイケメンで。
国内五指に入ろうかと言う毛並みの良さと、国王に継ぐ莫大な領土をお持ちになった大貴族様。
おまけに、これが極めつけ。
なんと、非の打ちどころのない婚約者までいらっしゃる。
初めから全部、ぜ~んぶ解ってた癖に、惚れこんでしまうのを止められなかったあたしと言えば、
十歳年下の、ちびでちんくしゃで、貴族とは名ばかりの地方のどん詰まりで生を受けた下級貴族の端の端。ドジで無鉄砲で、まあ可愛い所がない訳じゃないけれど、此処の所、迷惑をかけ続けまくりの部下兼従僕――――― それがあたし。
おまけに、これこそが本当に極めつけ―――――― 紛れもなく、あたしは男なんである。
男なのに、「あたし」とかって可笑しいそっち系?とかって聞かないで欲しい。
あたしだって、ちゃんと自分の外に向かってはきちんと「僕」と一人称は使っております。ええ。もう絶対間違えることなしに。ついでに言うと、あたしには本来そっち系の趣味はこれっぽっちもございません。
そりゃ、人さまの趣味趣向を、どうのこうのと咎めたり、声高に非難したりはしないけれど(だって、恋愛はあくまで個人の問題だと思っちゃってますし)それが、こと、自分自身に関わってくるとなると話は別です。その手のお話は、もう、はなっから「無理!」―――――との結論に達してしまうんですね、これが。
――――― じゃあなんで?
…はい。ごもっとも。
あたしだって、『何故?』とは、一度誰かに聞いてみたかった事ではあるのだけれど。
……えっと…
これを言うと、絶対なんか文句を言われそうな気がするんだけど、あえて言わせていただきます。
ゆめ、だから。
はい、夢。
しょーがないじゃない。夢だもの。夢の中なんだからしかたない。
男が男に惚れたって、惚れちゃったものはしかたないでしょーが!
夢――――― そう、ゆめ。
Ambition(これって、大望って意味なのね)じゃなくて、Dreamの方。
あの、バタンとベットの横になって、「おやすみなさい」って言ってから見てしまう夢でございます。
見ようと思ってみる訳じゃなく、勝手に人の頭に入ってきてしまうある意味とんでもなくお騒がせなその世界の中で。
あたしは、初めての恋をした。
そんなとんでもなく、どうしようもないシチュエーションにもかかわらず、
あたしは恋に落ちてしまっていたのだ。悲しい事に。