スカーレット爆死
雨の降る工事現場…コンクリートの隙間から、雨水が滴り落ちてくるのを眺めながら…
その時、事務員をしていた高市は、今日も休憩時間を持て余している…
「私…操り人形が欲しいの…」
そう呟くのは、彼が密かに憧れていた同僚の女性…とはいえ、まともに口をきいた事も無く…いつも赤い服を着ている事から、心の中でスカーレットと呼んでいた…
「スカ…いえ…どう言う意味…」
自分に話かけられていたのか、分からないままに返事をしてしまう…
「今から…買いに行こ…」
手をつかまれ、立ち上がる高市…
「でも…休憩時間あと…少ししか…」
「大丈夫…すぐ近くだから…」
慌ててロッカーから、傘を取りに行き、彼女の後を追う…相合傘を一瞬期待したが、彼女は無言で自分の傘をさし、前を歩いてゆく…
「ここなんてどう?」
店名の見当たらない、怪しげな雑貨店を見つけ…立ち止まるスカーレット(仮称)。
「ひとりで入る勇気無いよね…」
高市の問いかけに、照れくさそうな笑顔で頷く彼女の意識は、ここから離れてゆく…
雨音がもたらす記憶の再生…
「先生…私…好きな人がいるんです…」
そう医師の前で呟くのは、高市がスカーレットって仮称している女性…国宝サメである。彼女は、自分の名前にコンプレックスを持っており…人に伝えようとはしない…
「一カ月です…あなたが生きられるのは…それまでに、やりたい事を全部しなさい…」
(それは…私の意思で決められる領域の話…相手の気持ちを変えるのに…一カ月じゃ、足りない…)
時間は、ふたりの恋が発展したと、錯覚させる…
晴れた工場の屋上…
「私に言いたい事は?」
「僕は…君が…」
「ハイ…時間切れです…」
両手を広げ…空を見上げる彼女の視線は、遥か彼方を見据えている…
「私の寿命は…今日でおしまい…もう少し早く言ってくれれば…何か展開があったかもね…」
「スカーレット…」
「そんな名前じゃないよ…」
彼女の背中から生えた、天使の羽は…彼女自身の心臓を、その羽先で貫く…
「あ…」
高市の顔に鮮血がかかり…五十音の一つ目以外の言葉を失う…
バシャ〜ン…ビチビチ…
一匹のホオジロサメに、生まれ変わった彼女を、天空に仰ぎ見る…
「僕は…」
彼は即座に…自分の胸元に、突如現れた…自爆ボタンのスイッチを、押した…
ズドドドド〜ン




