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遺された音源  作者: なやまじ


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人捜し

 裕一はゴールデンウイークの後で、四十九日の法要のために再び大館に帰省した。

 納骨のため墓石の下のカロートと呼ばれる納骨室を覗くと頭蓋骨など多くの骨が重なり合っていた。骨壺は先に分解され土に還ったのか、一見すると人骨以外は確認できなかった。

 納骨の後は、家族と親戚数人と日本料理店で故人を偲びながらささやかなお斎を終え、実家に戻った。しばらく実家でゆっくりしたかったが、翌日には仕事があるため十八時には大館能代空港から羽田空港に向けて発たなければならなかった。

 坂本探偵事務所が請け負う企業信用調査の依頼者はほとんどが法人である。目的はもちろん取引の可否判断であり、端的にいえば相手に支払い能力があるかどうかを知りたいのである。一方、調査される企業の側も取引予定先から信用調査を受けることは想定内であり、取引が破談になると困るので取材には概ね協力的で、財務内容に自信がある会社ほど財務諸表を積極的に公開してくれる。現代ビジネス界で信用調査は常識であり、調査されて憤慨したり取材を断ったりする会社は、ただの世間知らずか内情を公にできない理由がある会社ぐらいである。

 裕一も何度か企業調査を経験しており、相手が大企業でも負い目を感じることはなく、むしろ隠された事実を白日の下に晒してやるぐらいの気持ちで取材をしてきた。しかし今回は警備会社が発行する業務報告書の控えを確認させてもらうという極めて特殊な取材だから、相手は当然警戒するだろうし、応じてくれない会社も多いだろう。

 そこで裕一は極力相手に警戒させないよう、人探しだということにした。自社が調査対象でないと知れば相手は安心する。さらに協力してもらう可能性を考えて、訪問履歴がある会社を優先的に訪問することにした。名刺交換の事実があれば協力してくれる確率は飛躍的に上がる。過去の名刺ホルダーをめくると、中野区内の建設工事会社の名刺は九枚あった。

 裕一は田舎の親御さんが警備員をしている息子を探していることにした。訪問を繰り返してわかったことは、男性のほうが疑い深く拒絶的な雰囲気の者が多いということだった。中には以前面談した人物が出てきて、お宅の報告書のせいで取引が破談になったと怒り出す者もいた。一方、女性の事務員は総じて協力的で、比較的簡単に業務報告書の控えを見せてくれた。息子を探しているという調査目的が母性本能をくすぐるのかもしれない。

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