表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

20/22

第9章︰迫りくる闇と、王子の覚醒(後半)

 その時だった。


 空気が、一瞬にして変わった。

 甘く、柔らかな空気が、氷のように冷たく、そして鋭い殺気に満ちていく。


「見つけたぞ、ノアリウムの王女!」


 泉のほとりに、一人の青年が降り立った。

 彼は、ノアリウム界の者ではない。

 その身にまとうのは、見慣れない奇妙な紋様が刻まれた、深い紅色の装束。


 そして、彼の瞳は、獲物を狩るかのような、冷たい光を宿していた。


「貴様が、星の鍵の少女か。我らが教国の王女として、迎えに来た。さあ、大人しく、我らと共に来い」


 青年の言葉に、ルキが私を庇うように、その体を前に出した。彼の表情からは、今まで見たことがないほどの、激しい怒りが感じられた。


「…何者だ。ここは、お前が立ち入っていい場所じゃない」


 ルキの言葉に、青年は不敵な笑みを浮かべた。


「俺は、教国の王子。名を、アスタ。星の鍵の聖なる伴侶となるべき存在だ。そして、お前は……鍵に寄り添う、邪魔な存在。消えろ」


 アスタの言葉と同時に、彼の掌から、漆黒の魔力が放たれた。それは、ルキを狙って放たれた、危険な魔術だった。


「っ!?」


 ルキが、私を守るように、その身に魔力に受けた。彼の体が、衝撃で吹き飛ばされる。


「ルキ!!」


 私は、思わず叫んだ。ルキは、泉の水に体を打ち付け、苦しそうに顔を歪めている。


「……くそ……」


 ルキは、私を守ろうと、再び立ち上がろうとする。だが、アスタは、彼に容赦なく、次々と魔術を放った。ルキは、その度に吹き飛ばされ、体に傷を負っていく。


「ルキ、やめて! もうやめて!!」


 私は、ルキが傷つくのを見るのが辛くて、アスタに叫んだ。だが、彼は私を一瞥すると、冷たい笑みを浮かべるだけだった。


「お前が大人しく俺と共に来れば、この男は傷つかずに済む。さあ、選べ。この男の命か、お前の自由か」


 アスタの言葉は、私に究極の選択を迫った。ルキは、私を守ろうと、体を張ってくれている。私が、彼をこれ以上傷つけたくない。


 私は、決意を固めた。


「わかった。私が行く。だから……ルキに、手を出さないで!」


 私の言葉に、ルキは絶望したように目を見開いた。


「ほのか、ダメだ! 来るな!」


 ルキが、私を呼ぶ声が聞こえる。彼の声は、悲しみに満ちていた。

 私は、アスタの前に進み出た。彼は、満足そうに微笑むと、私の腕を掴んだ。その手は、冷たく、そして、支配的だった。


「では、行こうか、我が王女」


 アスタが、私を連れ去ろうと、体を浮かせた。その時、私の手の中で、ルキがくれたペンダントが、激しく輝きを放った。


「誰が、君を連れて行っていいと言った」


 ルキの声が、聞こえた。彼の体から、赤い魔力が、激しく放出されていた。その魔力は、私とアスタを包み込み、そして、アスタを吹き飛ばした。


「なっ……」


 アスタは、ルキの魔力に驚き、後ずさる。


「僕は、君を誰にも渡さない。たとえ、この命に代えても。僕が……君の星になる」


 ルキの言葉と同時に、彼の体から放たれた魔力が、星の泉に流れ込み、泉の水が、激しく輝きを放った。そして、ルキの体が、光に包まれていく。


「ルキ!?」


 私は、驚きと、そして、不安で、彼の名前を呼んだ。

 光が収まると、そこに立っていたのは、一人の青年だった。

 彼の姿は、今まで見ていたルキとは違う。銀色の髪は、星の光を吸い込んだように輝き、彼の体には、王族の証である、金色の紋章が浮かび上がっていた。

 彼の瞳は、まるで燃え盛る炎のように、赤く輝いている。


 彼は、ノアリウムの王子としての、真の姿を現したのだ。


「さあ、お前が僕の敵となるなら、相手になってやろう。そして……」


 ルキは、私に優しく微笑むと、私の頬にそっと触れた。


「僕を、もう一度、愛して」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ