第9章:迫りくる闇と、王子の覚醒(中編)
ルキの歌声は、私を優しく包み込み、私はその心地よさに、全ての力を抜いていく。
そして、歌が、静かに終わった。
目を開けると、ルキが、私を愛おしそうに見つめていた。彼の瞳には、涙が溢れていて、その頬は、今までで一番、赤く染まっていた。
「ほのか……君は、僕の歌を受け入れてくれた。僕の全てを、愛してくれた。君は、本当に……僕の運命の人なんだ」
ルキはそう言って、私を強く抱きしめた。彼の腕は、私を離したくないと訴えているかのようだった。
「僕が君を、この世界から、誰にも渡さない。僕が、君の居場所になるから」
彼の言葉に、私の胸は甘さでいっぱいになった。私は、彼の背中に手を回し、その抱擁に応える。
「私も、ルキが大好きだよ……」
私の言葉に、ルキは顔を輝かせた。そして、彼の唇が、私の唇にそっと触れる。
それは、先ほどのキスよりも、もっと深く、もっと熱いキスだった。彼の舌が、私の唇を優しくなぞり、私の口の中へと入ってくる。
甘く、そして、切ないキスは、私の心を溶かしていく。彼の腕が、私の腰を抱き寄せ、体と体が密着する。彼の心臓の鼓動が、私の胸に直接響いてくるかのようだ。
「……君の全部が欲しい。指も、唇も、体も、心も……全部、僕のものにしたい……」
ルキはキスを中断し、苦しそうにそう囁いた。彼の瞳には、私への抑えきれない情熱が燃えている。
「ルキ……っ」
私は、彼の首に腕を回し、さらに強く抱きしめ返した。彼のキスに応えるように、もう一度、唇を重ねる。
深くて、温かくて、そして焦ったようなキスは、なかなか終わらなかった。彼の唇は、私の唇を愛おしそうに貪り、私の存在を確かめるかのように、何度もキスを繰り返す。
そのキスは、ただのキスではなかった。それは、魂を交わすような、神聖で、そして、とてつもなく甘美な行為だった。
彼の魂が、私の中に、深く深く入ってくる。私は、ルキの全てを受け入れ、そして、私の全てを彼に捧げた。
「君を、僕の魂の伴侶として、迎えたい。ほのか……僕の妻になってほしい」
ルキはそう言って、私の頬に涙を流した。彼の涙は、熱くて、私の心に深く染み渡る。
「……うん。ルキと、ずっと一緒にいたい」
私の言葉に、ルキは満面の笑みを浮かべた。彼の笑顔は、今までで一番輝いていた。彼は私を抱きかかえ、泉のほとりでくるくると回った。その喜びは、まるで子供のようだ。
「ああ、夢みたいだ。僕が、君と……」
ルキは、私の顔を両手で包み込むと、私をじっと見つめた。その瞳には、私への愛と、そして、彼がどれほどこの瞬間を待ち望んでいたかという、深い感情が込められていた。
「もう、君を一人にしない。僕が、君の居場所になる。そして……この世界も、僕が守って、君の安全を保証する。だから、安心して、僕のそばにいて」
彼の言葉は、私を安堵させた。彼の隣にいることが、私の運命なのだ。
私の心は、完全にルキへの愛で満たされていた。他の王子たちのことは、もう、どうでもよくなっていた。
(ああ、このまま、時間が止まってしまえばいいのに……)
二人の時間は、甘く、そして永遠に続くかのように感じられた。