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第一章 ・早乙女 梟SIDE

 幸せの森は、私とたっくんが育った、児童養護施設の名前だ。施設にきてからの私は泣いてばかりで、一人で外に出ようだなんて考えは、自分の中から全く湧き上がってこない。

 そんな引っ込み思案だった私をいつも引っ張っていってくれたのが、たっくんだった。泣いていたら何処からともなく現れて、私の涙を止めてくれる。何をするにも自信がない私に、お前もいつか誰かを助けてやれる人になれると、そう言ってくれた。たっくんがいたから、今の私は笑っていられるのだと思う。

 私にとってたっくんは太陽な存在であり、神様のような存在だ。

 たっくんは、いい意味でも悪い意味でも、施設の中でかなり浮いている子供だった。淡々としていながらも、やるべき事を見据えている、というのだろうか? 早くからPCを触り、PCゲームの上位ランカーとなった。まるでそれが、両親のいない、何も持っていない自分が、一人で生きていくための最短の近道だと予め知っていたかのように。

 結果、たっくんは独り立ちをして、幸せの森を出ていった。私を残して。

 あの日の事は、今でも昨日のことの様に直ぐに思い出すことが出来る。

 明日から、太陽がなくなった世界で生きてください、と言われたら、他の人は皆どんな事を思い浮かべるだろうか?

 私が思い描いたのは、暗黒だ。漆黒であり、真っ黒な絶望。あの日から私は、太陽のない世界で生きていた。人間が、沈みゆく太陽を走って追いかけても、追いつける道理はない。私は太陽がない世界で、生きるしかなかったのだ。

 最もそんな世界、何でも出来るたっくんには、想像も出来ない世界だろうけれど。高校生になっても、それは変わっていないのだろう。

「きょーねーちゃん、じかんだよ」

 自分へと投げかけられた言葉に、私は慌ててREDで時間を確認する。もう、仕事に行かなくてはならない時間だった。羽枇高等学校普通科に転校する少し前から、私はある仕事に就いている。今日は転校初日だったので、一度幸せの森に戻っていたのだが、いつの間にか時間がかなり経っていた。私は返事をする前に、少しだけ鈍く痛む目頭を押さえる。

「ありがとう。すぐ行くね!」

 自分を呼んでくれた施設の子供に笑顔を振りまき、私は幸せの森を後にした。施設は、決して多くない補助金や寄付金で運営されている。働き手は、少しでも多い方がいい。

 たっくんの言う通り、私を引き取りたいと言ってくれる人たちは、確かにいた。でも、私にとっては、私とたっくんが育ったこの場所こそが、私たちの家なのだ。例え太陽に追いつけなくても、かつて太陽を眺めたその場所に居続ければ、また昇った太陽を見ることが出来るのではないか、と思ったのだ。

 そして結果、そうなった。

 転校先の羽枇高校で果たしたたっくんとの再会は、私が求めて止まないものだ。何処かの誰かが言っていた。沈んだ太陽は、必ずまた昇る、と。本当に、その通りだと思う。私は今、この目で見えるものを大切にしたい。

 だから私は、私が出来る最善の事をしよう。もう決めたことなのだから、後は前に進むだけだ。そう思うと、仕事に向かう足も少しだけ軽くなる。きっとそれは、私の世界に太陽が戻ったからだ。

 例えその太陽には、どれだけ手を伸ばしても届かないのだとしても。

 私には、太陽を眺めるだけで、今眺めれるというただそれだけで、十分なのだ。

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