現と幻(5)
――そうして、可憐な花は安心したように旅立つ。みんなが待ってるよ、と俺に言って。
意識が、ぼんやりと覚醒していく。
「聖っ!」
その声にハッとする。
「……レン、レイ……」
同じ魔導騎士団所属、男勝りなレイヴィアと、中性的で娘のような男のレン、真逆な双子がそこにいた。
「ったく、やっと起きたわ」
レイの言葉にレンは何も言わず、静かに俺を見つめる。
「…で? おまえが寝坊とか何かあったのと見に来てみたおれらに何もなし?」
そう口にするレイ。
「……着替える」
そう返す俺に眉を寄せて不満なのが分かる顔になるレイ。レンは……行くよ、レイ。と言って部屋の扉まで動いて。
レイはレンの方を見た後俺に目を戻す。はあ、とため息を零してレイは言葉を続ける。
「……おれが言わなくても香花さんの願いは解ってるだろ?」
そう言い残して、レイは部屋を去った。
覚えている香花さんとのやり取りを思い出しながら、俺は室内用のサンダルを履く。
(……香花さん……)
外着に着替えて、朝食を軽く取る。
支度の仕上げに着慣れたマントを羽織った。
願わくば、またあんたと旅が出来ることを――
そうして、俺は与えられた家の玄関を開ける。
作者の藤咲梗花です。最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございました!
もし宜しければ、後日譚の本編もよろしくお願いいたします。
さて。この作品を書き始めたのは1年と半年前でした。2ページ目は1年前に書いた文章そのままだったりします。
そして、ラストの真逆な双子に起こされるシーン。あそこも、実は1年前に書いた文章だったりします。
始まりと終わりだけ書いて、香花と聖が精神の中で会うシーンの始まりだけ書いた後、眠っていた作品でした。
当初の予定では紫桔舞が登場する予定も、ルーカスが聖に向かって話すシーンもありません。それに加え、香花と聖が精神の中で会うシーンも、当初の予定では香花本人ではなく、聖の夢で終わらせる気でした。
それが、1年という時が過ぎたことにより後日譚の本編が進み、登場人物の設定がより固まったことによって、こういう形にまとまったのです。
やはり、語彙が豊富な聖の方が、後日譚の主人公アメリアより書きやすいし楽しかったです。本来の語彙力を活かせるので、難しい言葉に表現、漢字も使える聖はとても書いていて気楽でした。
それに加え、とてつもなく濃厚な想いを書くのは書いていてとても楽しかったですね。
長い年月をかけることにはなりましたが、作品としてまとまったのは本当に良かったです。出せるモノは、想いは全て詰め込めた気がします。
聖がラストに繋がる心持ちになってくれたのは本当に良かったです……そのためには、やはり香花自身と対面させる必要があるなと思いました。
そうして、聖は香花と話した結果、香花のワガママを胸に刻んで、日々生きていく事になるのです。
最後になりますが、作中で登場した現団長の紫桔舞やルーカス、真逆な双子、もちろん聖も、本編で登場していますので、お時間あれば本編の方にもお立ち寄り頂けたら幸いです。
ブックマークや評価、感想を下さった読者の皆様、モチベーションを保つ為の力を注いで下さり本当に感謝しております。
いつか下書きにしてある外伝や、香花と聖の物語である本当の前日譚を公開していきたいと思っておりますので、もし良ければお気に入りユーザーに登録などして頂ければこの上なく嬉しいです。
また他の作品でお会い出来れば嬉しい限りです。この作品も、思い出した時に再びご覧頂けるなら、作者としてこの上なく嬉しく思います。
ここまで読んで下さり、本当にありがとうございました!!
2022年12月24日(火)