6 ダンジョン攻略下
「ふむ、そろそろボス戦ですね。」
神父とダンジョンを探索しつつ、現れた敵を狩ること数時間。
とある大きな扉の前に着いた時、神父はそう言いました。
作業の繰り返しはキツイ物がありましたし、気分転換にちょうどよさそうですね。
と言うか神父、わざわざ言わなくても大丈夫ですよ。
よほどのバカでない限り、こんな大きな扉があれば誰でもボス戦を警戒します。
「では、行きましょうか。」
「えっ? 私今日始めたばっかりなんですけど……。」
「安心してください。ある程度強いので私が倒しますから。」
ハイエナ行為というか、そういうのはあまり宜しくないとは思いますが寄生される側が良いと言えば問題はないのでしょうか?
まあ、にこやかな笑顔で告げる神父の顔を見てるとまず問題が無さそうですし。
気楽に見てますか。
「そういえばボスドロップは要りますか?」
「え? くれるのですか!?」
「所詮ここのボスドロップも大したものでは無いので。今の私が得られても嬉しくはありませんしね。」
正直、私がもらえるなどと思っても見なかったので驚いてしまいました。
実際、確かにこの初心者用ダンジョンのアイテムなんか神父がゲットできても嬉しくはないでしょう。
「ですが……。」
「このダンジョンで貰えるモノなど所詮ゴミ、貧民擬きが欲しがる様なものしかありませんので。」
「そうですか、それなら……。」
本当に善意のみで協力してくれているようです。
口の悪さ的に、疑ってしまいますが。
「では参りますか。」
そう言い、扉を開くと中は大きな広間になってました。
真ん中にはいかにも強そうなボスがいます。
「さあ、入ってください。どうせ雑魚ですし瞬殺しますよ。」
「は、はぁ。」
ボスの見た目は筋骨隆々のコボルトが玉座のようなものに座っています。
見た目からして大きく強そうです。
恐る恐る入ってみると、部屋が一瞬何かの紋様を写し出しそして扉がひとりでに閉まりだしました。
えっ!? ちょっ、閉じ込められましたけどッ!?
そんな私の驚愕など見ようとせず、今まで武器にしていた鉄製の聖書を直します。
「では、早速。」
私が扉が閉まる様子を呆然と見ている横で神父がそう言います。
慌ててそちらを見てみると、その瞬間突風が吹き荒れ
「え、?」
神父が、コボルトの頭部を破壊していました。
殴っていたではありません。
破壊です。
具体的に言うと爆発四散です。
え? えぇ?
マジですか? 強すぎません? 神父。
ワンパンですか? ふざけ過ぎてません? 確かに道中の敵をワンパンで倒してましたけど。
ボス戦ぐらい少し苦戦しても良いのでは? と言うか強いとか言ってましたよね? どこが強いんですか?
「こんなものですか。生とは呆気ないものですね。」
「えぇ?」
自ら生を潰した人が何を言ってるんでしょうか?
私は理解したくありません。
「と、宝箱も現れたみたいですし開けてみますか?」
その言葉を聞いて、先程までコボルトがいた場所をみると宝箱が一つ。
「神父様が開けてはどうでしょう?」
「私が? まぁ、良いですが別に欲しいものなど無いですしね。それなら初心者の貴方にはまだ有用なアイテムを渡した方が良い気がしますが……。」
慈悲や情けではなく本当に不必要らしいです。
うーむ、そう言うことなら私がゲットしても何の問題もなさそうですね……。
「でしたら私が貰います。」
「ええ。」
若干、焦ったそうな声でそう告げたのを聞きつつ少し緊張しながら、宝箱に手を掛けます。
そっと、(重さで)震える手で開けてみると中には金銀財宝が!!
無く、あったのはいくつかの小瓶でした。
「回復薬ですか、しかもレア度1のランクE-とか、マジで不必要でしたね。」
「回復薬ですか?」
「ええ、そのレベルなら軽い怪我程度のものなら治せますね。まぁ、正味私の魔法を使えば部位欠損以下の怪我なら直せるので不要ですが。」
「えぇ……。」
私の初宝箱が……、アイテムがゴミだったなんて……。
悲しい話です。
と言うわけで、再度ボス戦をしようと……。
「と、どこへ行こうとしているのです?」
「部屋を入り直せば再戦できるのでは?」
「そんなことはありませんよ、再度戦いたい場合は30分待たなくては。」
はぁぁぁぁぁあああああ?
クソゲーですか? このゲーム。
いえ、クソゲーです。
他の言い分は認めません。
なんて考えていた時でしょうか? その振動が伝わったのは。
「ほぅ。これはこれは。」
ゲーム内で地震? 気のせいか? などと一瞬頭をよぎった疑問符。
その疑問に答えるかの様に神父様は鉄製の聖書を取り出します。
「死にたく無ければ逃げ惑いなさい、子羊よ。さまなくば、」
やはり、その振動は気のせいなどではなく、振動がより大きくなります。
真剣味が増した声に比例するかの様に笑みが深まります。
そして神父に呼応するかの様に新たな音も。
「守りきれません」
直後何か手の様な物が地中から現れると同時に、
「照準決定、銃弾掃射開始」
「聖守護領域」
銃弾の雨と、それを阻む聖なる守護領域がぶつかり合いました。
やっと俺が出てきたー!!