2 神父
どうも、案内のNPCと別れて謎の広場に送られた雅です。
さて、話をゲームに戻しましょう。
ぱっと見だ感じ、この世界のグラフィックが非常にいいです。
一昔前のビデオゲームが宣伝していた現実と変わらない作画。
なんてレベルではありません。
あまりVRゲームをしたことのない私でもこの技術は非常に素晴らしいと言うことがわかりますね。
やはり、ヒットするゲームには相応の理由があるものですね。
「おや? お嬢さん、どうかしたのかい?」
「はい?」
「いや、少し困ってるような顔をしていたからね。ちょっとしたお節介だよ」
「ああ、まだ来たばかりなんです。何をすればいいかもわかってなくって……」
「来たばかり......?ああ、そうか。君は異邦人か。」
男はそういうと納得したような顔をしました。
ふくよかな顔を,見ると私も笑ってしまいそうです。
そういや、ふと思ったのですがこのゲームにクリアという概念はあるのでしょうか?
「このゲームってどうやったらクリアできますか」
「げぇむ......?ああ、異邦人特有の病気かな? うーん、解決法も僕は知らないしなぁ。あ、そうだ!! 教会にでも行けば何かわかるんじゃないのかな?」
「わかりました、教会まで行ってみます。ありがとう」
「いやいや、お礼なんて要らないさ」
そういうと、軽く太った体をポヨンポヨンと弾まさながらおじさんは去ってゆきます。
その様子を見送った私は勇んで歩き出す。
が、教会の場所を聞きそびれたので迷ってしまったみたいです。
我が事ながら詰めが甘いですね。
「わーい!! 神父さん!! もっと何かして!!」
「俺!! この前見たスッゲーのもう一回見たい!!」
「何よ!! 私は光の魔法の絵をみたいわ!!」
ん? 子供たちの声が聞こえますね。
その声に誘われるように私はふらふらと歩いてゆくと大男というのがふさわしいほどの巨体を持った方に出会いました。
「おやおや、子羊たちは今日も元気ですね。そしてアリスちゃん、リーヤくん喧嘩は良くありませんよ?」
まるで向日葵のような笑顔はとても眩しく、まさに神父らしい神父です。
叱る姿も聖職者らしく、尊敬できる姿です。
これなら、私の質問にも答えてくれそうです。
「あの、すみません」
「私ですか? 見たところ貴方はプレイヤーの方のようですね。」
優しく微笑みながら言われた言葉は心地よく胸にスッと入ってくる。
「はい、今日から初めまして」
「申し遅れました。私はガスコンロ。ガスコンロ神父とお呼びください。貴方のお名前は?」
ガスコンロ神父? 変わった名前だな。
話し方からはプレイヤーだとは思わないし、多分運営が用意したネタNPCだろう。
「あ、すみません。雅って言います。教会への行き方を知りたいんです。私は何をしたらいいのか知りたくて」
「雅さんですね。教会へは私も向かうところです。
良ければご一緒しましょう。」
「何をしたら良いか……という質問ですが、まずはご自分の魔法適正を知るところから始まります。適正の診断は教会でも可能です。まだおやりになられていないのならばやってみてはいかがでしょうか?」
「へー、教会でも出来るんですね! じゃあ最初に適正から見ていこうかな。それから決めてもいいんですよね」
そんな話をしながら、神父さんがせがむ子どもたちをなだめ、私の案内の準備に取り掛かってくれようとしていた。
「また後日、ゆっくり遊びましょう。今日はこのお姉さんを案内しなくてはならないのですよ。」
「えー!! 神父さん!! 今日は遊んでくれるって約束だったじゃないか!!」
「そうだよ!! もうちょっと遊んでよ!!」
「まあまあ、我儘なのは子供の特権ですがいうことを聞かないのは美徳ではありませんよ?」
「もっと簡単に言ってくれよ!!」
「では、我儘は私は嫌いですよ? 遊んで欲しいのなら我儘は言わない事です。」
「……、わかったよ。けど明日は遊んでくれよ!!」
「ええ、当然です。」
そうやってにこやかに微笑む顔を思わずまじまじと見つめる。
「おや? どうかいたしましたか?」
「い、いえ。ただその体格からしてそこまで優しいのは意外だな……、と。」
「ははは、よく言われます。では、教会に向かいましょうか。安心してください。すぐそこですよ。」
そうって、私の前を歩く。
歩く速さは私よりも早く、早歩きしても少し遅れてしまう。
少し、小走りになりながら神父の後を歩きいくつかの角を曲がった先に教会があるのが見えました。
「あそこ、ですよね?」
「そうですね。あっ、すみません、私は少々用事ができてしまい付いて行くことができません……。中にシスターが居るはずなので彼女に声をかけて貰えば鑑定できますよ。」
「わかりました、ここまで親切にありがとう御座います。」
「いえいえ、神父ならば当たり前ですよ。」
そういうと、教会の横の建物に入ってゆく。
ガランガラン〜。
扉を開けると鐘が鳴る。
古く、音も決っして良くないものだ。
だが、その音は教会によく似合っていると私は感じた。
教会の中は清潔ながら経年劣化により老朽化しているのは見てとれる。
「す、すいませーん。誰かいますか?」
神父さんは、シスターが一人いると仰ってましたが、姿が見えないというのは不安になるものです。
声をかけて数秒後、ドタンバタンという音とともに裏のドアから一人のシスターがやってくる。
「す、すいません。お待たせしました!! 本日はどのようなご用件で?」
髪や服は乱れ少し、埃をかぶってる姿はドジっ子という印象を受けざるを得ない。
「魔法適正を調べてみてはどうか、と神父さんにお薦めされまして。」
「そうなのですか。魔法適正ですね? えーと、主の足元にあります宝玉に触れてくれませんか?」
そうして指差された場所はおそらくこの教会が祀ってある神像の足元にある宝玉を指差しました。
その宝玉は透明でいながら何か惹きつけられるものがあり、そこには神々しさを感じる。
確かに言われたそのままの様子ですね。
これに触れば宜しいのですか。
そっと、触れると水晶は眩いまでに黒に光り輝く。
「おおっ、珍しい。闇属性ですか。」
「何か特別な属性ですか?」
「ええ。あっと、その前に魔法の基本的知識はありますか?」
基本六属性とか、そう言った話だろうか?
認識の差とかを埋めるために聞いておきたい。
「あるにはあるのですが、教えていただけませんか?」
「分かりました。まずは基本属性の火、水、土、風、光、闇はご存じですか?」
「ええ、その程度は。」
「はい。その中でより一般的な属性が火、水、土、風で、光と闇は持っている方は少ないのですよ。」
「ほー。」
「その中でも貴方は特に、適性が強いようですね。これほど光るのはかなり珍しいです。」
「そうなのですか?」
「はい。私もここまで光ったのは4,5回程度しか見たことがありませんね……。」
どうやら私はかなり珍しい部類の人間だそうです。
やったー、嬉しー。
「闇魔法ではどんなことができるのですか?」
「基本的には相手の行動を阻害したりすることができますね。魔術協会で詳しく説明されてますので是非、お行きになってください。」
「場所が分からないのですが……。」
「まぁ、最近こちらに来られた方でしたか。となると神父様のご紹介で?」
「はい。」
「そうですか。うーん、困ったなぁ。」
彼女はそういうと頭を悩ませる。
茶色癖毛がそのたびにフワッと動き、思わず手が伸びる。
「キャッ!!」
「あっ、すいません。」
つい、首元に手を伸ばしていたようで驚かせてしまったようです。
失敗、失敗。これではダメですね。
「おや? 魔法適正は判明したのですか?」
「あっ、神父様ッ!! はい、ちょうど今終わったところです!! よろしければ魔術協会まで彼女を贈ってくれませんか?」
「ふむ、迷える羊を導くのも我々聖職者の役目です。それぐらいのことはこなして差し上げましょう。」
そういうと、神父は手招きをする。
「早くこちらへ、時間とは有限なものです。」
「あっ、すみません。今すぐ向かいます。」
そう言われて、供物の近くに置かれていたモノを取り慌ててついてゆく。
「あっ!!」
石畳につま先が引っかかり転倒してしまい、手に持っていた果物ナイフが、神父に突き刺って……、え?
なぜか、不自然にそこに壁があるかのようにナイフは突き刺さらない。
「神の御加護に感謝ですね。ここが教会でなければ貴方の四肢は四散していましたよ?」
先程と変わらぬ笑顔で私を見る。
さっきは安心感を覚えたが今の私にその笑顔は恐怖しか無い。
「ご,ごめんなさいッ!!」
「いえいえ、ただの事故でしょう? ならば問題ありません。しかし、ゲームシステムを知らないのは問題ですね。協会に赴くついでに簡単に説明いたしましょう。」
「お,お願いできますか?」
ええ、というと教会を出て街を歩き始める。
その足は早く私は着いていくのが大変ですね。
「全く、危ないものですね。神の慈悲がなければ私は死んでいましたよ?」
「ほ,本当にすいません。」
「別に構いません。偶然で犯した罪は罪ではないですしね。まぁ、もしも貴方が私を刺していたら貴方のカルマ値が増えていたでしょうね。」
「カルマ値? なんでしょうか? それは。」
「おや? 知らないのですね。教えて差し上げましょうか? 無知は罪ではなく無知を無知のままにするのは罪と私は思いますのでね。」
そういうと、神父は色々話してくれました。
簡単に言うと、街と判定されている場所の中で一部のプレイヤー以外を殺すことは不可能だそうです。
「ほー、そんな設定があるのですね。」
「そうですよ。ついでに私はNPCではありませんからね。」
「えっ?」
思わず驚いてしまう。
あそこまでNPCと旧知の知り合いのように話しているのにプレイヤーということが信じられません。
そう思いながら神父の後ろを追いかけつつふと、辺りを見渡す。
現実離れした光景であるのに全てが細かく描写されておりその質量が私を押しつぶすように視覚に押し寄せる。
「わぁ、大変綺麗な街ですね。」
「そうでしょう。後ろ側も見てはどうです?」
そう勧められ、後ろを見るとそこには……。
「この街、ローディル随一の建造物でありこの街を治める領主の館。有体に言えばお城です。」
「これが、お城です……か?」
「ええ。」
私は人生で初めて見る、それも現実の世界ではないプログラムの世界ででも、初めて見るお城に圧倒されていました。
そして、このフレイヤ・オンラインの認識を改めざるを得なかったです。
所詮、ゲームはゲーム。
現実とは大幅に乖離し、何もかもが多少なりともストレスを与えるものだと思っていましたが。
実際は違いました。
現実と寸分違わぬ精度で体が動き、我々が想像し妄想するしかなかった中世でファンタジーな世界がここには広がっています。
なんと素晴らしいことでしょうか。
だからこそ、壊したい。
「どうでしょう? 素晴らしい街でしょう?」
「です、ね。」
「現実世界では決して見られない世界ですよ、本当に。」
再度歩きながら神父はそう言います。
その姿は誇らしげに胸を張ってそのことに誇りを持っていることがわかります。
貴方の功績ではないでしょうに。
「私もこの街の安全を守っていましてね。」
少し恥ずかしそうに頭を掻く神父の姿は人間味があり非常に好感が持てます。
確かに自分の功績を広めるというのは気恥ずかしいものですよね。
というか、先程貴方の功績でないと思ったことを許してください。
「それは凄いですね。」
「いえいえ、それほどでもありませんよ。さて、そろそろ魔術協会ですね。」
そう言われて、前を見ます。
渡っていた橋はそろそろ終わりかけでその先には大通りが広がっています。
「さて、到着しましたね。」
「ここですか?」
古めかしい石で作られた時計塔のような建物が前にあります。
ここがそうなのでしょうか?
「ええ。我々プレイヤーが魔法を使うために必ず来なくてはならない場所でもありますね。早速入ってみましょうか。」
「わかりました。」
こうして私は、魔術協会に入ることとなりました。
ロールプレイというか誰がどのキャラを操作してるか分かりやすくするためここに書いておきます。
雅=白犬
ガスコンロ神父=ガスコンロ神父
俺? 俺はまだ登場しません。