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謎の組織と言わずと知れたハンサム

 俺は南国のビーチで女に囲まれながら、ドリンク片手に優雅な日々を送っていた。


「半寒さん、キスしてえ~」


 甘える声が、俺の右から聞こえてくる。

 彼女はボンキュッボンのナイスバディを上手く着こなした水着で俺を求めてきた。

 その豊満な胸元をガン見しながら、俺は返事をする。


「ああ。良いぞ」


 ジュルルルルルッ、ジュッポォ! と激しく唇を女と重ねた。


「ずるい~私にもしてえ~」


 左からもキスを求めてくる女がいた。

 彼女も水着を着ていた。しかし、胸は先程の女とは違い、ぺったんこだった。

 でも、無問題イエスハンサム

 俺はぺったん子だって大好物なのだ。


「しょうがないなあ」


 ンジュルルルルッッジュッポオオオオオオオオ!! と濃厚な接吻をする。


「半寒さん、ドリンク補充致しますよ~」


 上の方からまた女の声がした。

 彼女は先程知り合った、ナイスバディの眼鏡お姉様だった。

 彼女も大胆な水着を着ており、俺が持っているワイングラスにオレンジジュースを注ぐ。

 お礼にまた、ンンンンジュッッッポ、ポポオオオオオ!!! と舌と舌をぶつけ合わせた。


 ああ。何て贅沢な日なのだろう。

 さっき銃で頭を打ちぬかれたと思ったんだけど、この状況を見るに気のせいだったんだな。


「んじゃ、俺ともキスをして貰おうか」


 渋い声が真正面から聞こえてくる。

 そこにいたのは、俺を発砲した男だった。


「お前――! 誰か助けてくれ!」


 周囲を見渡す。瞬間、空間が暗闇に染まった。

 俺に求愛行動を示していた女性たちも消え、ここには俺とおっさんしかいなかった。


「また俺を撃つつもりなのか?」


 訊ねる俺に対し、男はかぶりを振る。

 そして唇を尖らせ、顔を俺に近づけてきた。


「キスがしたいと言ってるだろうがああああ」

「ぎゃああああああ!!」


 ※


「うわあああああ!」


 悲鳴をあげながら、俺は上体を起こす。

 ハア……ハア…と乱れる呼吸を整え、俺は現状を理解した、

 そうか、さっきまでの南国ビーチでハーレムしていたのは夢だったのか。

 そして、今が現実だ。


「何にもねえな」


 周囲を見渡し、感想を述べる。

 うす暗い空間だった。コンクリでできたその部屋はとても殺風景で、辺りには何も存在しない。

 ここはどこだ? それより、今は何時だ? 

 早くしないと、しおりちゃんとムフフな行為ができなくなってしまう。


 立ち上がろうとしたが、俺はそこである事に気付く。

 手足が縛られている。

 そして、謎の部屋に閉じ込められている。

 これは、監禁だ。

 完全にただ事ではない。


「ったく、変な夢見た上に誘拐までされたのか?」

「どんな夢を見たんだ?」

「女のとバカンスしながらキスしてたら、途中で怪しいおっさんにもキスをせがまれるという悪夢さ」

「おい待て、そのおっさん、まさかこんな顔をしてねえだろうな」

「ん? というか、あんたはいったい何者――」


 声の方を向く。

 そこには、俺の顔を銃で打ち抜き、さらに悪夢で遭遇したおっさんの顔があった。


「うおおおおお!」


 思わず叫んでしまった。

 さっきから取り乱してばかりだ。

 この醜態はとてもハンサムではない。


「ガハハハハハ!、そう驚くな」


 おっさんは気さくに笑う。


「なに笑ってんだ? 人をいきなり発砲しやがって。顔以外に当たったら死んでたんだぞ!」

「いや、普通は顔に当たるからこそ即死になるはずなんだがな」


 冷ややかな突っ込みをおっさんは入れた。

 そうだった。

 普通の人は顔を攻撃されたら傷付くんだ。

 俺の場合、殴られても、蹴られても、刺されてもハンサム過ぎて顔には傷一つつかない。

 それに慣れてしまっていたせいで常識を忘れていた。


「俺を縛ったのはお前だな? いったい何が目的なんだ? 娘が俺にオイタされたのか? それとも嫁か? その恨みだろ!」


 俺の意思で彼氏や夫持ちの女には手は出したことはないが、たまたま素顔を見られて惚れられるというケースは沢山ある。

 そのため、外では覆面を被っているのだが……。


「いや、どっちでもない。そもそもお前に恨みはない」


 男は首を横に振る。

 いや、恨みがないのに発砲して、さらに監禁するとかそっちの方が怖いんだけど


「なら、俺の身体が目当てなのか? 生憎だが男は許容範囲外だ。可愛らしい中性的な美少年なら抱いたことはあるが、お前みたいなマッチョは生理的に受け付けないぞ」

「それはこっちからお断りさせてもらう」


 じゃあ、何が目的何だこいつ

 この顔面国宝である地球史上最高の顔と、それに見合った美しい肉体美を堪能する以外で俺に用がある人間なんて存在するのか?


「手荒な真似をしてすまなかった。俺の名は黒田直哉。お前に危害を加えるつもりはなかった。あれは麻酔銃だ。お前に話したいことがある」


 黒田と名乗った男は頭を下げ、謝罪をする。

 麻酔銃だからOKという訳ではないけどな。

 でも体は無傷だし、俺も生きているからそれについては許してやろう。

 というか、そんな事もうどうでも良い

 詩織ちゃんとの約束を果たさないといけない使命があるんだ! 


「危害を加えるつもりがないのなら、今すぐ縛ってる縄を解け」

「それは、これから話す内容をちゃんと聞き、承諾して貰ってからだな」

「お前の話なんか聞きたくないわ!」


 友達ならともかく、こんな怪しいおっさんと二人きりで話す事なんてない。


「わかった。それなら女を読んでこよう」


 そう答え、黒田は「赤沢!」と叫んだ。

 上から、コツコツと足音が聞こえてくる。

 まさか、夢に出てきた巨乳眼鏡お姉様が来るのか?

 これはまずい。今の俺は手足が縛られ、芋虫みたいな状態。

 これは、とてもハンサムではない


 待て、せめて手足をほどいてくれ、と懇願しようとしたが、もう遅かった。

 扉があく音がする。同時に、赤沢と呼ばれた眼鏡のお姉様と目が合った。


「え、嘘……」


 彼女は眼を見開き、手で口を塞ぐ。

 こんな芋虫みたいな状態では、きっと俺のことを哀れに思うに違いない。

 くそ、鼻を穿っている時だけではなく、芋虫になっている時でもイケメンに見える角度やポーズを探しとくべきだったぜ。


「イケメンが縛られてる! 何てシチュエーションなの! こんなのエロビデオでしか見れないわよ!」


 鼻血を溢れさせ、彼女は倒れた。


「はあ? この状態のどこがイケメンなんだ? ただの芋虫じゃねえか!」


 困惑しながら、黒田は赤沢を起こす。

 俺は安心する。

 芋虫でも、無様な格好でも、俺ってやっぱりハンサムなのだと。


 ※


「貴方をここへ連れてきたのには、きちんと理由があります」

「はい! その理由を教えてください、マドモアゼル」


 黒田に代わって、赤沢が説明を始めた。

 俺はとても上機嫌で返答をする。


「ったく、女の話じゃないと聞く耳を持たないなんて、どうしようもねえ奴だ」


 黒田は不機嫌そうに呟き、右手を自分の額に付けた。

 瞬間、手が発光する。

 そして、光の中から木製の椅子が現れ、それに腰かけた。


「……は?」


 どこから椅子出したんだこいつ。

 驚愕しながら、俺はその光景を見つめる。


「気になりましたか?」


 赤沢が訊ねてきた。いや、誰だって気になるわ。


「私にも似たような事ができますよ」


 そう言って赤沢は手を光らせる。

 発光が終わると、そこにはナイフが出現していた。


「黒田が手荒な真似をしてしまい、申し訳ありませんでした」


 ナイフで俺の手足を縛っていた縄を切る。

 まあ、貴女のようなレディにはむしろ俺を固く縛り上げて欲しいと心の中で思い、何なら俺の股間も、亀頭から同様のセリフを復唱していたのだが、その行為はノットハンサムなので表には出さない。


「あんた等、特殊な能力が使えるのか?」


 漫画とかで不思議な力を使うキャラクター達は沢山いたが、現実でお目にかかるのは初めてだ。


「そうだ。俺達は裏で地球の平和を守り、世界を闇から救っている異能力組織【夜明けの会】だ。俺がリーダーだ」

「その割には、めちゃくちゃ目立つ場所で俺を襲撃していた気がするん――」


 あれ? そういえば、俺が襲撃されたときに周りに人はいなかった。

 コンビニの中にも客はおろか、店員すらも存在してなかった。

 いつもなら俺が大声で叫べば必ずメスが近寄ってきたはずだ。

 覆面を被っているため、人間は近寄ってこないが、ハトや猫。昆虫など多種多様のメスが俺に群がってくるのだ。


 以前、不良に絡まれたとき大声で叫んだら、動物や昆虫は勿論、女性が干していたパンティーですら風になびきながら俺の元へ馳せ参じたことがあった。

 無論、窃盗は良くないためそれに関しては、交番に届け、俺は下着泥棒扱いされた。

 まあ、そんな過去はどうでも良い。

 とにかく、大声を叫べば何かしら寄ってくるはずの状況が、今回起こらなかった。

 これは奴らの仕業だろう。


「あの時、誰もいなかったのはお前らの仕業だな?」

「察しが良くて助かります。人払いの能力を使いました」


 赤沢が首肯する。


「で、その力を使ってまで俺と話したかった理由はなんだ?」


 こいつらに特殊な力があり、その力で俺を誘拐したのは分かった。

 では、何故そのようなことをしたのか?


「お前にこの世界をサキュバスから救ってもらいたいんだ」


 そういい、黒田はまた手を光らせ、タブレットが出す。


「これを見てくれ」


 渡され、俺は画面に出ている映像を眺めた。


 動画には一人の少年が映っていた。

 場所は田舎っぽい穏やかな山の中だった。

 山を歩き続け、次第に現実離れした古代遺跡のような建物が映る。


「これが、ダンジョンだ」

「ダンジョン?」


 ゲームによく出てくる遺跡か?

 この世界にも存在していたんだな。


 動画視聴を続ける。

 少年は全身を光らせ、姿を変える。

 銀色に輝く鎧をまとい、左手には円型の縦。右手には短剣を持っていた。

 そして遺跡の中へと入っていく。


「ほお。またゲームでしか見たことのないキャラが出てきた」


 ゴブリンと呼ばれる魔物が数匹ほど画面に映っていた。

 少年はゴブリンの首を剣で切り、バッサバッサと倒していく。

 無双中だ。こいつやるじぇねえか。


「……で?」


 この少年が強いのはわかった。

 地球にダンジョンやゴブリンがいるのも理解できた。

 で、何故俺にこれを見せてきた。サキュバスもでてこねえし。


「黙って視聴しろ」


 黒田がどなるので、大人しく視聴を続ける。

 少年は圧倒的な強さでゴブリンを倒し、遺跡の奥へ進む。

 そして、そこにいたのは美しい女性だった。

 銀髪の長い髪に、紫の瞳。現実離れした蠱惑的なスタイルに美貌。

 画面に映し出された豊満すぎる胸やお尻は、この俺ですら未だお目にかかれたことはない。


「このサキュバスめ! 今日こそお前を討ち取ってやる!」


 少年は威嚇するも、その美貌には逆らえないのか、既に下半身は膨れ上がっていた。

 そして、そのまま剣を激しく発行させ、刃を振り、赤く飛ぶ斬撃を放つ。

 おい、そんな事をしたら、彼女の美しい体が真っ二つになってしまうだろ――


「え? 無傷?」


 斬撃を浴びても、彼女は無傷だった。そして獲物として認識された少年を睨んで嬉しそうに舌なめずりをし、今度は逆に襲い掛かる。

 そこで、画面は暗くなった。


「これでわかったろ? サキュバスの強さを」


 黒田は俺に問いかける。正直俺としてはサキュバスの強さ何てどうでもよかった。

 サキュバスといえば、物凄くエロい種族だと聞く。

 少年への眼差しも、なんかエロかった。

 少年がどんなエロいめにあったのか、その詳細しか興味がわかなかった。


「ちなみに、この少年は惨殺されています。貴方が思っているようなセクシーな展開にはなっていません」


 俺の思考を読み取っていたのか、赤沢は眼鏡をくいっと上げて答えた。

 そうか、エロい目にあっていないのか。残念だ。


「まあ、強さはわかったが、俺にどうしろと? まさかこいつら相手に戦えって?」


 ゴブリンに無双していたあの少年ですら敵わなかったんだ。

 喧嘩をしたこともない俺には無茶な話だと思う。


「あいつらは強すぎる。あの少年もこの組織ではトップクラスの強さだった、あいつらには、我々の異能力が通用しない。勿論、現代兵器も全く効かない」


 めっちゃ強いじゃん。


「あいつらがダンジョンを設立したのは3年前。いきなりこの組織にやってきて、俺らに宣戦布告をしてきた。準備ができ次第、この世界を支配すると。しかし、私達に匹敵をする強者がいれば、そいつを花婿として差し出す代わりに地球への干渉はやめてやると」

「……おいおい、まさかとは思うが」


 このイケメンとハンサムを足してそこから顔面国宝を掛けて更にナイスガイで割った最強の顔を持つ俺を花婿として差し出すつもりじゃねえだろうな。

 あんな攻撃的な奴等と結婚なんて嫌だぞ。


「いいや、俺がお願いしたいのはさらに難易度の高いものになる」

「何だって?」


 これ以上俺に何を求めるんだ。


「サキュバスの得体の知れない力は我々の役に立つと考えています。サキュバスをここから追い出したいのではなく、取り入れたいというのが私達の本音です」

「と、いうと?」


 赤沢はメガネをくいっと上げて、夜明けの会が出した結論を答えた。


「貴方の顔で、サキュバスを恋に落として頂きたいのです」

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