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外部組の奮闘と眠るハンサム

 空間は、軋むような微かな音とともに閉ざされていた。

 半寒とエリリカが精神世界へと潜るその瞬間、彼らを包んでいた淡い黄色の結界がわずかに脈動を始める。

 中心部では封印の核となる紋章が浮かび上がり、複雑な文様が脈打つたびに空間全体が鈍く震えていた。


 そこに立つのは、外部組の面々。

 みどり、仁科、サクライの三名。

 全員、半寒とエリリカが精神世界に入ったことを確認している。

 今、二人の肉体は結界の中心に静かに横たわり、精神だけがアレッサの深層意識へと潜っている状態だ。


「いやあ、しかしだな。このでかい結界を、俺たち三人で壊すってマジか?」


「しかも、サキュバスの親玉にバレないように、だろ?」


 仁科とサクライは呆然と、目の前に広がる現実離れした景色に目を向ける。

 視線の先に封印されたアレッサの姿があった。

 幾重にも重なる氷が彼女の身体を閉ざし、まるで時間そのものが凍結されたかのような幻想的な光景を作り出している。


 しかし、この美しき封印は、ただの氷ではない。

 それは強力な魔力を帯びた特殊結界であり、破壊が進むと自動で迎撃型の防衛機構が発動する仕組みだ。


 封印を解くだけでも一苦労だというのに、順調に進行すれば今度は魔物が出現する。

 たった三人で大量の魔物と戦いながら氷を破壊しなければならず、なおかつクイーンに気づかれる前にすべてを終えなければならない。


 その途方もない任務に、仁科とサクライはすでに頭を抱えかけていた。

 だが、みどりだけは違った。目を見開き、決意を宿した瞳で声を上げる。


「よし……私たちも、外側の封印を解きましょう!」


 みどりの気合とともに、三人は一斉に動き出した。

 サクライは間合いを一瞬で詰め、鋭く構えた刀で氷を斬り裂く。

 仁科は滑るようなフットワークで移動しながら、振動の波動を放つ。

 そしてみどりは、両腕のナックルガントレットを展開し、唸るような魔力をその身に纏わせる。


「――はぁッ!」


 氷壁へと拳を叩き込む。

 ナックルガントレットが放つ魔力震動が氷の内部に突き刺さり、蜘蛛の巣状の亀裂が広がっていく。


「破壊進行中! このまま押し切りましょう!」


 三人は連携を取りながら、祭壇を囲う氷のコアに猛攻を加えていく。

 すると、封印の中でアレッサの銀髪がふわりと揺れたその瞬間。


 ギギギギ……ッ!


 空間の魔力が軋み、氷の結界から無数の魔法陣が出現した。

 迎撃結界が発動し、防衛機構として魔物が召喚される。


「来るぞ、魔物だッ!」


 仁科の叫びとともに、氷壁を突き破って無数の魔物が現れる。

 ゴブリン、ホブゴブリン、コボルドなど数こそ多いが、いずれも雑魚タイプ。


「ここは任せて。数ならこっちも負けてない!」


 仁科が放った振動が魔物の聴覚を破壊し、彼らを混乱させる。

 サクライは冷静に急所を狙って次々と魔物を一刀で沈めていく。


 だが、その中でも、最も異彩を放っていたのはみどりだった。


「ナックルガントレット、フルバースト!」


 跳躍とともに振り下ろされた拳が魔物の体内で白の魔力を炸裂させ、内部から粉砕する。

 みどりの周囲にいた魔物たちは、一撃で地に沈んでいった。


 粉砕、粉砕、粉砕。


「みどりちゃん、無双かよ!」


 仁科が驚きの声を上げるが、本人は真顔のまま、黙々と拳を振るい続ける。


「やった……雑魚は全滅か」


 サクライが剣を納めた、その刹那。


 ズン……ッ!


 ドームの天井が砕け、地鳴りとともに巨大な影が落下してくる。


「キング……ゴブリン!?」


 鎧をまとい、金棒を構えた巨体の魔物。

 その威圧感に、仁科とサクライは蒼白になる。

 かつて下層で相対した強敵。

 あのとき、半寒の魅了がなければ全滅していただろう。


「さすがにあれは無理だ……仁科、彼を起こそう」


「さっきみたいに、また半寒にキスしてもらうか……いや、マジで」


 その瞬間。

 封印の中のアレッサから、わずかに魔力の揺らぎが生じる。

 みどりはそれを見逃さなかった。

 そっとアレッサの方は視線を移す。

 眠っているままの彼女だが、みどりには何故か少し怒っている様に見えた。


「……この会話が精神世界で波紋を呼ばなければいいけど」


 そう呟きながら、みどりは一歩前に出る。


「私が倒します」


 彼女は拳を構え、低く宣言する。


 次の瞬間、弾丸のような跳躍。

 回転を加えた拳が、キングゴブリンの胸を撃ち抜いた。


「喰らいなさい――ッ!!」


 ドォンッ!!


 キングゴブリンの巨体が宙に舞い、壁に叩きつけられる。

 砕ける骨の音とともに氷床に崩れ落ち、戦場に静寂が訪れた。


「おお! ナイス攻撃!」


「やったあ!」


 仁科とサクライの叫び声が戦場に響いた。

 勝利の空気が流れる。


 ヒュウウウ……ッ


 氷の隙間から流れ出す魔力の風。

 空間が歪み、青白い炎の中から女の姿が現れる。


「え……なんだ、あれ……」


 サクライが息を呑む。


 それは圧倒的な美と威圧感を兼ね備えた、サキュバスだった。

 幻影であるはずなのに、三人の体が硬直する。


 そう、封印の主であるアレッサの姉。

 サキュバスクイーンの幻影である。


「幻影……なのに、殺気が生々しい……!」


「あの美しさ、封印されてるアレッサそっくりだ……」


 仁科とサクライは、幻影と知っていながらも、その圧倒的な美貌に心を奪われかける。

 ほんの少しでも気を抜けば魅了されそうな錯覚。


 だが、一人だけ冷静な者がいた。

 その名は青空みどり。

 夜明けの会屈指の実力者で半分サキュバスの少女。

 サキュバスを凌駕する美貌を持つハンサムの少年を除けば、唯一サキュバスの誘惑に抗える存在。

 そして、みどりは何度もクイーンと相対している。


「落ち着いてください。目の前にいる敵は、所詮ただの幻影です」


 みどりはハンドレッドに魔力を込め、構えを取る。


「せいぜい、私を楽しませて見せてみろ――人間ども」


 艶やかな微笑みとともに、クイーンの幻影が戦場に降り立った。

お忙しい中、ここまで読んでいただきありがとうございます。

もし面白いと思っていただけましたら、評価やブックマークを頂けますと励みになります。

 何卒、よろしくお願いいたします!

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