お節介
「それは、私が聞きたいんだけど……」
私がそういうと、シキは目を瞬かせた。
「君も、理由は知らないんだ」
「そうなんですよねぇ」
さっぱりわからない。強いていうなら、平民であることくらいだろうか。
「やっぱり、平等なんて無理なのかな」
シキも同じように考えたようで、そういった。
「そうかもね。……さてと」
そろそろ課題に戻ろう。何と言っても、私の目標は好成績の維持! シキも単純にいじめられている子が物珍しかっただけだろうし、帰るだろう。
けれど、黙々と資料を纏めている間も、シキはこちらを向いて座ったまま。帰ろうとしなかった。
「……どうしたの」
「なにが?」
「いや、帰らないのかなって」
シキのグループは真面目そうな男子学生が多かったから、私の様に放課後に残る必要はないはずだ。
「……ああ、そのこと」
シキは、頷くとぎい、と椅子を揺らした。
「こんな遅くまで残ってる女の子が、一人で帰ったら危ないでしょ」
――つまり。私の自惚れじゃなければ、シキは私を女子寮まで送ってくれるらしい。
「大丈夫だよ。……ほら、私光魔法が使えるし」
魔物にもし襲われても平気だ。
「そういう、過信が一番の問題だよ。……いらないお節介なら、やめるけど」
そういって、シキは横を向いてしまった。
「……じゃあ、お願いしても、いいかな。まだ、もう少し時間がかかりそうなんだけれど」
自分が世にも珍しい光魔法が使えて、ピンク頭という時点で覚悟はしていたけれど。正直言って、一人は寂しい。
誰でもいいから話し相手が欲しかった。
私がお願いすると、シキは、ふわりと笑った。
「うん」
おおー。美形さまの笑顔は破壊力があるなぁ。私がヒロインでなければ、ときめいているところだ。しかし、私は、ヒドインになる可能性があることを自覚したヒロイン。ここでうっかりときめいて、好きにでもなったりしてしまったら、面倒なことになるとわかってる。
なので、煩悩退散、と頭の中で唱えながら、課題に集中した。
◇◇ ◇
「よし、課題終わりーっと」
ん、と大きく伸びをする。できた課題は、なかなかいい出来、だと思う。
「……お疲れ様」
「ありがとう。あと、お待たせしちゃってごめんね」
シキは、首を横に振ると、早く提出しておいで、と言ってくれたので、職員室に足を向ける。
「まさか――で、……が」
職員室が何だか、騒がしい。
「どうする? だが、あの――」
先生たちは会議をしているみたいだ。私が入り口でどうしようかと途方に暮れていると、担任の先生が気づいて、課題を受け取ってくれた。
よし、これで、一件落着。女子寮に帰ろう。
「提出できた?」
「うん、できたよー。ありがとう」
シキにお礼を言って、シキと帰る。初めて誰かと帰った帰り道は、なんだかとても新鮮に感じた。