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ヒドインに転生したけど、さすがに嫌われすぎじゃない?

「ええええー、嘘でしょー!?」

 私の悲鳴が、せまい家に響き渡った。

 私の名前は、ミシェル。


 15歳。

 なにげなーく、ピンクの髪──可愛くてお気に入りだった──を鏡をみながらとかしていると、ふと、頭のなかで声がした。


『ピンク髪の平民とか、どこのヒドインよ』


 ヒドイン? なにそれ──……。


 自分の中で浮かんだ言葉に、首をかしげていると、頭のなかで様々なことがフラッシュバックする。


 ひび割れたスマホ、ネット小説、信号、そして──重い衝撃。


 どうやら、私は、元々日本という国で暮らしいていたようだった。それが交通事故に会い、異世界に転生。


 うんうん、ネット小説のテンプレ通りだね!


 けれど問題なのが、一点。

 私は、平民だ。それも、ピンク髪の。

 魔法属性は、滅多にない光属性で学園の特待生とくれば。



「私ってば、ヒドインじゃん!」


 高位貴族を誑かしたあげく、悪役令嬢に断罪される、ヒロインを気取った勘違い女に転生してしまった。


 残念ながら、この世界がどのネット小説の世界なのかわからないけれど。



「魔法学園の入学をやめる? ううん、そんなことできない」


 まだ、5歳のかわいいかわいい弟。

 できれば、いい学校にかよわせてあげたいし、美味しいパンをいっぱい食べさせてあげたい。


 だったら、私が魔法学園を無事卒業し、いい就職先を見つけることは重要だ。


 なるべく、学園では目立たないようにしよう。



「ねーちゃん、叫んでどうしたの?」

 私の叫び声で目を覚ました弟のカイが、眠そうに目蓋を擦りながら、不思議そうな顔をした。


「大丈夫よ、カイ。お姉ちゃん、頑張るから」


 決して、あなたを路頭に迷わせないわ。


 そう心に誓って頭をくしゃりとなでる。

 なでると、少しだけ照れ臭そうになんだよー、と小突かれる。


 はー、可愛い。


 明日からは、全寮制の学園生活だ。

 もう少しだけ、可愛い弟を堪能しようと、抱きつく。


 よし、ヒドインにならないように頑張ろう。


◇ ◇ ◇


魔法学園に入学した初日。

 空が綺麗だなぁとぼんやりと、上をみながら歩いていると、何かに躓いた。


 派手にこけそうになったところを、誰かに支えられた。

「あ、りがとうござ……」


 お礼の言葉は相手の目をみてしっかりいいなさい。


 そうお母さんにいいつけられているのに、お礼の言葉が途中でつまってしまったのは、その紫の瞳があまりにも冷たかったからだ。




 紫の瞳。王家の証だ。そして、この学園に通うといったら。


 お、王太子殿下じゃん!


 初っぱなから、ど偉いひとに迷惑をかけてしまった。


 この学園の間は、みんな平等とはうたわれてはいるものの、やっぱり身分は大事なわけで。


 ど、どどどう詫びよう。

 そう、考えていると、殿下はとても冷めた声でいった。


「構わない。紳士として当然のことをしたまでだ」




 そういって、すたすたと去っていく。



 よかったーーーーー。ほっと、息をつきながら、その殿下の後を目線でおうと、殿下は足早にある女子生徒に近づいた。


 女子生徒はなぜか涙目であり、そんな彼女を慰めるように、殿下はとても甘い笑みを浮かべている。


 さっきと本当に同一人物?

 

 と疑いたくなったけれど、気にしないことにする。


 私の目標は、無事にこの学園を卒業していい就職先を見つけること。そして、カイに楽をさせること。


 そのために、ヒドインにならないように頑張るぞ!









 と、意気込んだまでは、よかった。

 入学して一週間がたった。

 寮での生活も、この学園での生活もそれなりになれた──……と、いいたいところだけれど。


「いった!」

 予習をしようと自室で開いた教科書に仕込まれた薄い刃に気づかず、指を切ってしまう。


 私ってば、うっかりさん☆


 って、いやいやいやいや。


 教科書に刃が仕込まれてるなんて、おかしいでしょ!?!?!?!?


 おかしーなー、これ三回目だよ。

 ひっかかる私も私だけどさ。


 教科書に赤い血が零れる前に止血して、包帯を巻く。


 私は光属性もちだ。なので癒しの魔法やら、魔物を倒す魔法やらが使えるんだけど。


 制約があって、自分の傷には使えないのだ。


 なんて、不便!


「……それにしても」


 おかしーなー。

 仕込まれた刃を捨てて、ため息をつきながら考える。


「なにもしたつもりないんだけどな」


 強いていえば、こけそうになったところを王太子殿下に支えられたくらいだ。

 それ以外は比較的地味にこの一週間を過ごしてきた。


 そんな一週間でわかったことは。


 私はどうやら、めちゃくちゃこの学園の生徒に嫌われている、ということだった。

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