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第92話 邪神イャルドラ編 マリナヤの戦い

私の名前はマリナヤ・エルトチカ。

アステルブルクセンター長トモミ・キサラギさんの主任秘書をしている。

先代のマスティアセンター長から今の職場で働いている。

今度のセンター長は気まぐれで大変だが、仕事はきっちりとやる人で若いのに感心させられる事も多い。

私の仕事場はセンター長の部屋の隣で部下2人と業務をこなしている。

「センター長から業務連絡はあった?」

私の席の向かいに2人の部下であるシスカとサラが座っている。


「いいえ。

まだ何も無いですよ。」

センター長は冒険者として動いている時も出張で居なくても必ず定時刻になるとシスカのパソコンに業務連絡を入れてくる。


「おかしいわね。

センター長がこの時間に連絡を入れてこないなんて。」


「忙しいんじゃ無いですか?」

シスカと同じくサラもセンター長から業務の追加や確認事項を言われる事が多い。

2人にも連絡が来ていないのは初めてだ。


「あの人は気まぐれだけど、仕事はキッチリとやる人よ。

私にも連絡が無いし、少し気になるわね。

センター長にこちらから業務連絡を入れてみて。

私はEMC (エマージェンシーミッションコール)を確認してくるから。」

直感と言うのが正しい気がする。

何と無く胸騒ぎがする。


「主任。

EMCは確認無理だと思いますよ。

事務方は越権行為だ〜って、騒ぎますよ。」

確かにサラの言う通り、EMCの確認にはそれぞれ所属長からの許可が必要だ。

それはEMCが外部には秘密のシステムだと言う事も大きく関わっている。

亜空間通信自体が特殊な通信方法で外部に漏れる事をギルドは極端に警戒している。

なので、私たちも秘匿義務がある。

念書も書かされる。


だが、今はやるだけの事はやってみる事にする。


「サラとシスカはセンター長と連絡を取ってみて。

何か返信があれば教えてちょうだい。」

私は2人に言いおくと4階のギルド事務局に向かった。


EMCはギルド事務局の管轄で定刻に通信があるか確認している。

だが、実際のところEMCを受信した事は一度も無い。

その理由として、アドバイザーが危険にさらされる事はそうそう無い。

冒険者として活動していてもこのシステムを使う者はほぼ居ない。

故に確認をしているかも怪しいと私は思っている。


事務局の事務所のドアを開けて入ると一斉に皆私を見た。

「EMCの確認記録を見たいのですが。」


「どの様な要件ですか?」

事務局の女性が対応に出て来てくれた。


「EMCに何か連絡が入っていませんか?」

私の言葉に女性は明らかに嫌な顔をした。


「何だ何だ!

なんだ、センター長の秘書のマリナヤじゃないか。」

奥から現れたのは事務局の部門長ターナスさんだ。


「EMCの記録を確認したいのです。」


「はぁ?

わかってるのか?

EMCはギルドの極秘情報だぞ。

一秘書に開示できる情報では無い。」

それはわかっている。

センター長の許可なしに秘書の私が見れるものでは無い。


「では、今EMCに何かの連絡が入って居ないかだけでも確認お願いします。」


「おいおい。

EMCの確認は定刻に行う。

何故お前の指示で確認する必要がある?」

ごちゃごちゃ言ってないで帰れ!」


と言う事で、門前払いを食らった。

自分の力の無さに情けなくなってくる。

秘書室に帰ると。

「主任〜。

センター長のダブレットにメッセージ送ったんですけど、送信エラーになりますね。」

自分のダブレットの画面を私に見える様にサラは手に持って私に向けている。


「やっぱりセンター長に何かあったんだわ。」


「え〜、センター長って魔王倒したんでしょ〜。

そんな人がピンチになりますかね?」

ダブレットを抱えたままサラは可愛らしい顔で悪態をみせる。

「センター長も普通の人間だよ。

そう言う事もあるかも知れないでしょ!」

センター長に何か問題が起こっている事は間違いない。

事務局が定刻にEMCを確認してくれれば、何らかの情報が入ってくるはずだ。

センター長なら必ずEMCを使うに違いない。


夕方になっても事務局から何の連絡も無かった。


私はもう一度事務局に出向いた。

「ターナスさん。

EMCに何か送られていませんか?

センター長と連絡が取れないんです。

ダブレットに送っても送信エラーが出るんです。」


「またお前か!

EMCだと、定刻に確認しているはずだ。

こちらに連絡が無いと言う事は何も来ていないと言う事だ。

帰れ!」

これは駄目だ。

ここで押し問答している時間が勿体無い。


そこで私はグランマスターのドラダートさんに連絡を取った。

「あ、ドラダートさん。

センター長主任秘書のマリナヤです。

少し、お願いがありまして連絡差し上げまして。」

ドラダートさんはトモミセンター長がお気に入りだけあって、事情を話すと事務局に出向いてくれた。

私も後ろでドラダートさんのやり取りを見ていた。

EMCの確認はされておらず、記録もいい加減なものだ。

今まで一度も活用されていない為に作業が疎かになっていたようだ。

ドラダートさんに凄く怒られていた。

そんな事は良いとして、EMCの確認が始まった。

「受信していますね。

発信はトモミセンター長からです。

時間は4時間前です。

『現在地不明。身体に問題ない。追跡信号発信。』

ということです。」

やはり、何か起こっている。

これを見たドラダートさんは少し考えていたが。


「あ、マリナヤ君。

よくやってくれた。

後の事は私に任せなさい。」

そう言うと事務局を飛び出して行った。

私も秘書室に戻った。


「主任。

どうでしたか?」


「ええ、EMCに受信があったわ。

それも亜空間通信。

センター長は行方不明の可能性があるわ。

詳しくはドラダートさんが動いてくれるらしいから、ひとまず安心ね。

この事は内密にね。」

それにしても、あのセンター長がピンチになるとは世の中何が起こるか分からないわね。


その頃、異世界に飛ばされたであろう私は、ギルドでそんな事でマリナヤが慌てふためいていたことなど知る良さも無く。

客人として通された家で寛いでいた。

暫くして、身の回りをしてくれる2人の女性が現れて、私は巫女のヤスハの招きで食事に招待されている。

ヤスハさんの屋敷に再び訪れていた。

奥右側の扉から中に入ると廊下が続いていて、奥には食事をするための広い部屋があり、ヤスハさんは既に席に座っていた。

テーブルには暖かい豪華な食事が並んでいる。

私はヤスハさんの向かい側の椅子に案内されて座った。


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