第3話 受付嬢は女の花園?
4人の同僚となるであろう女性達は皆容姿がとても可愛い。
審査基準に可愛さも入っているに違い無い。
4人は既に何かの会話で盛り上がっている。
早い時間に来たのか、私が遅かった訳では無いと思うけど。
「おはようございます。」
仲良くなるにはこちらから接触するのが1番早い。
「おはようございます。」
4人とも同時に挨拶してくれた。
感触は良い。
「ほら。やっぱり如月さんだわ。」
「本当だ。」
「まあ、面接しに来た人の中で1番可愛いと思ったのよね。」
「可愛い。」
私を見るなり4人は私の事を見定めるかの様に見廻している。
「あのう?
どうしましたか?」
そんなに見られると恥ずかしいんですけど。
「私は佐藤悠美。
みんなで最後の1人は誰かって予想してたのよ。」
ショートボブで茶色い髪型が良く似合う大人女子の雰囲気を出している女性で笑顔が素敵な人だ。
「私は君塚里穂って言います。
だって控室でも朋美さんが1番可愛いなって思ったから、この子は採用されるって思ってましたよ。」
少し幼い顔立ちでポニーテールがよく似合っていて、見た目は私より年下かも知れない。
「私は加賀智恵美です。
みんな同意見だったのよ。
やっぱり貴女だったわね。」
ストレートのロングヘアーで美人さんだ。
年齢は20代後半くらいだろうか、大人っぽい女性だ。
「可愛い。
私は黒川麻美。
多分制服がすごく似合いそうだなぁって面接の時に思ったの。
やっぱり担当者好みだったわね。」
黒髪で髪を結っている何処か不思議な雰囲気を感じさせるしっかりとした顔立ちの美人さんだ。
「あ、私は如月朋美と言います。
よろしくお願いします。」
4人共私が来るまでに少し仲良くなっていた様で、話も弾んでいる。
部屋の中にはテーブルと机が並べられている。
椅子は5人分用意されて居て、皆さんはそれぞれ好きな所に荷物を載せている。
部屋に男性が入ってきた。
「お待たせしました。
どうぞお掛けください。」
皆椅子に座ると私も空いている所に腰掛けた。
テーブルには資料が置かれている。
そこには5人の名前と年齢などが書かれている。
佐藤悠美さんは28歳、君塚里穂さんは26歳、加賀智恵美さんは28歳、黒川麻美さんは27歳。
私が1番年下だ。
隣には君塚里穂さんが座って、私に微笑みかけている。
素敵な笑顔の女性だ。
「それでは始めさせて頂きます。
私は異世界就職斡旋事業部推進課課長の今泉敏夫と申します。
先ずは今後の事なのですが、今この時点で今回の採用を辞退される方はいらっしゃいますか?」
誰も辞退する人はいない様だ。
「あのう。
幾つか質問大丈夫ですか?」
手を挙げたのは加賀智恵美さんだ。
「どうぞ。」
「私達大体の事は理解していると思うんですけど、異世界って危険な事はあるんですか?」
確かに危険な事があるかは気になるところではある。
「正直言いますと、それはわかりません。
と言うのも、この世界とは全く違う社会性なので何が起こるか予想するのは難しいのです。
なので、覚醒促進剤で最低限の能力発生を受けて貰ってます。
個性やスキル、ステータス、ジョブと言うものは異世界人より優れたものが与えられますので、そこで安心を一つ得て貰って、現地に勤務する前には最低限の護身術など、1か月間プログラミングして受けてもらいます。」
なるほど。
安全は保証外なのね。
確かに給料や待遇は受付嬢にしては良い方だし。
異世界は自分の身は自分で守るものなのかもしれない。
4人は少し騒ついている。
「ねぇ?朋美さん?」
隣の智恵美さんが身体を寄せて話しかけて来た。
「はい。」
「どうするの?」
「あぁ、私はやるつもりですけど。
智恵美さんは迷ってます?」
「そうね。
待遇は良いけど、ちょっと不安よね。
迷うのは当たり前だと思うけど。
「それでは雇用契約書を配りますので、採用を辞退される方はここで退室をお願いします。」
最初は迷っている人もいた様だが、5人全員が雇用契約書にサインした。
そして、仕事の詳しい内容などが教えられると、今後の日程を告げられた。
早速明日から制服の採寸、今回就職する世界の勉強、護身術など盛り沢山の一ヶ月が始まる。
私は残っている有給休暇を消費して参加する予定だ。
「ねぇ、この後カフェでちょっと集まらない?」
言い出したのは佐藤悠美さんだ。
この中ではお姉さん的存在感を出している。
歩いて行ける距離にある近くのカフェに集合した。
カフェのテーブルを2つ並べて、5人で集まって座る事にした。
「明日からよろしくね。」
悠美さんが座って話し始めた。
「みんな同じ場所で働くのかな?」
悠美さんに続いて智恵美さんが喋り始めた。
ドリンクの注文を私が全員分取ると雑談が始まった。
「ねぇ、朋美さん。これからよろしくね。」
隣に座っているのは里穂さんだ。
彼女は比較的気を遣わなくても、私は接し易い。
「こちらこそよろしくお願いします。
現場配属されて、1ヶ月は同じ場所で研修らしいので頑張りましょう。」
「そうなんだ。
1ヶ月後はどうなるんだろう?」
「担当者に聞いたんですけど、恐らく全員違う場所に配属らしいです。」
「え〜、そうなの?
寂しいよ。」
大きな声で叫ぶから皆んなが注目しちゃってるよ。
「どうしたの?」
里穂さんの目の前にいた麻美さんが驚いた表情をしている。
「朋美さんが担当者さんに聞いたんだって、1ヶ月後は5人共違う場所に配属されるんだって。」
話は尽きない。
だけど、仲良くなれた。
話題は異世界転職の不安が殆どで、カフェのメニューの種類すら誰も気にして居ない。
私はケーキが気になったけど、私だけ仕事の事に興味がない様に思われるのも嫌なので、ここは我慢して皆んなの話しを聞いていた。
そして、次の日。
私は会社に退職届と有給休暇の申請を出して、職業安定所に向かった。
職業安定所の隣に職業訓練施設がある。
そこで1ヶ月勉強と訓練を行う。
今日は朝から制服の採寸が行われる。
制服は気になる所だ。
試着も出来るみたいなので楽しみである。
異世界転職が何と無く現実のものになりつつあるのを感じ始めていた。