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第15話 ソロクエストと幻獣と

今日から仕事終わりにソロクエストをやってみようと思い始めた。

冒険者としてはまだまだ経験が足りない。

人材不足はアドバイザーだけでは無い。

その内私にも調査隊の仕事が回って来るだろう。

そうした時しっかりと仕事をこなす為にも慣れておく必要がある。

今は些細なことでも経験は見逃せない。


ギルドのクエストボードから緊急性の高いクエストを受注する。

目に付いたのはこの街の周辺で目撃例が多発している魔物でダークウルフ。

ダークウルフは群れを為して行動する。

だが、単独で大型のダークウルフが目撃されている。

なんと無く嫌な予感がする。

クエストの中で、ダークウルフの討伐クエストを選んで受注。

早速向かう事に、調査班は街から少し離れたソイエの町に駐留している。

本来ダークウルフは集団で発見されるので、ソロクエストには向いて居ない。

だが、今回は大型のダークウルフ。

それも単独で発見されている。

もしかするとダークウルフでは無い可能性もある。


ソイエの町には電車で一駅直ぐに到着した。

駅に降りると街中に繋がっている。

調査班は町の集合施設にキャンプを設営している。


「こんにちは。」

調査班は3人ほどで最近のデータを整理していた。


「トモミさんだね。

クエスト受注報告は受けてるよ。

ダークウルフはこの先の渓谷に出現する。

1人らしいけど大丈夫かい?」

調査班のデータをステータスボードに送信してもらって、チェックする。


「あ、大丈夫ですよ。」

目撃されているダークウルフは通常の2倍近い体格と覇気を放っているらしい。


「Sランククエストだけど、調査隊は今周辺を捜索中で出払ってるよ。」


「ああ、そうですか。

戻って来たら後方支援頼みます。」

データはチェックした。

危なければ撤退する。


「もう行くのかい?」


「ええ。

時間もないので。」

のんびりしていると夜になってしまう。

夕方の内に渓谷に行ってみたい。


と言う事で、調査班は何となく心配そうだったが、ステータスボードから調査隊にクエスト出発をコールしたから後方支援に来てくれるはず。


町の外に出ると草原を横切り林を抜けて渓谷に進む。

周辺には魔物の気配は無い。

だが、渓谷方面には魔物の気配がチラホラ見られる。


「よし、サッサと片付けよう。」

と言う事で、神速で移動。

渓谷に入ると。

魔物のロックアーマーが数体現れた。

ロックアーマーは水系魔法に弱い。

上位魔法アクアランスを素早く命中。

難なく倒せた。

ロックアーマーからは堅固な岩結晶が採取できる。


渓谷の奥に進むと、ロックアーマーと樹魔が出て来るだけで、ダークウルフの気配は無い。


「今日は出会えないかな?」

戦いにも魔法にも剣の使い方にもだいぶ慣れてきた。

ロックアーマー達は私の練習台には丁度いい。


神眼で周囲を見ると、渓谷の奥に大きな滝がありそこから大きな魔力を感じる。


「ダークウルフかも知れない。」

神速でサッと滝まで移動してきた。

滝はとても立派でかなりの水量で流れている。


滝から強い魔力が溢れてきている。

どうやら滝の裏に洞窟がある様だ。

そして、こちらの魔力を感じたのか、滝の中央からダークウルフが姿を現した。

滝を身体で半分に割りながらゆっくりと外に出て来る。

恐らくSランクくらいの魔物だろう。

ピリピリと威圧感が伝わってくる。


『人間よ。

何しに来た?』

魔物は私の頭の中に思念を送り込んできた。


「魔物が思念を送るなんて聞いた事ないわね」

滝の外に出てきたダークウルフは岩場に座って私の赤い瞳を輝かせている。


『我に何か用か?』

話しかけてくるが特に殺気は感じられない。


「あなたはダークウルフでは無いわね?」


『我は幻獣ミレラル夜霧の支配者と呼ばれている』

幻獣とはギルドの資料で見た事がある。

目撃報告も多くない。

基本的には魔物とは違って自然界の摂理の一つとされている。

何もしなければ人に危害を加える事はない。


「幻獣ミレラルとはね。

どうしてダークウルフの姿をしているの?

人にその姿で目撃されたら討伐対象になるわよ。」


『そうであっか。

それが故、人間が騒いでおるのか。

それは失礼した。

お前は我を討伐しに来たと言うわけか。』

何か訳がありそうだ。


「幻獣の住処は人も近寄らない厳しい自然の中だと思うけど、どうしてこんな人里にいるの?」


『お前は………、聖女であったか。

ならば、知る道理はあると言うことか。

我は人智の届かぬセラトの地に暮らしていた。

しかし、魔神と魔王は聖地を従輪した。

故に我は此処に逃れた。』

幻獣ミレラルは悲しい目をしている。

密かに静かに暮らしていたであろう土地を追われるとは。

魔神と魔王が動いていると言う事は見過ごせない話だ。


「魔王は何故あなたの住処に現れたのかしら?」


『我が聖女と勇者に会う事を恐れたからだろう。

我は幻獣ミレラル。

夜霧の支配者と呼ばれるのは闇の力を祓う事が出来るからだ。』

魔王が恐れる力を持っているとは、話が大きくなってきた。

幻獣が嘘をついているとは思えない。


「何故聖女や勇者と出会う事を恐れるの?」


『我は聖女と勇者に闇を祓う力を与える事が出来るからだ。』

そうか。

力を与える事ができるのか。

そんな事が出来るなんて興味深い。


「闇を祓う力。

どんな力なの?」


『幻獣は古より聖女と勇者に寄り添う存在だったのだ。

遥か昔は、勇者が聖地セラトを目指して旅をして闇を祓う力を得ていた。

魔王との戦いが久しく無くなり、その偉業は忘れられている。

闇を祓う力、聖者の理を。』

聖者の理。

魔法なのか、スキルなのか。

ギルドの資料でも見た事がない。

史実や歴史にまつわる物を探すしかないようだ。


「私は覚醒聖女だけど、その聖者の理を授かる事は出来るの?」


『お前が覚醒聖女だと。

そうであったか。

ならば更なる進化も秘めていると言う事か………。

残念だが、此処で聖者の理は授かる事は出来ない。

聖地セラトに我を連れて行け。

さすれば、授かる事が出来る。』

なるほど、聖地セラトに行く必要があるとは。

だが、魔王の動向も気になるし何は聖地セラトに行く必要がありそうだ。


「わかったわ。

あなたを聖地セラトに連れて行く。

ただ、今直ぐには難しいけど。」


『良かろう。

お前は強い魔力を秘めた指輪をしているな。

その指輪に身を委ねる。

聖地セラトの道案内も必要だろう。

では、頼んだぞ。』

幻獣ミレラルは光の塊になると私の指輪に吸い込まれた。

その瞬間凄まじい魔力が身体に流れ込んでくる。

そして、スキルと称号が解放された。

闇夜の覇気スキル。

夜に出会った魔物や魔獣の活性化を抑制する。

それと、常闇の聖女。

闇の力の効果を受けない。


魔物の討伐の筈が、幻獣と出会うとは。

しかし、幻獣は私に更なる進化も秘めていると言っていたけど、どう言う事だろう?


町に戻るとダークウルフは姿を消したと伝えた。

幻獣の事は今の所伏せておく。

詳しく調べてから報告をする事にした。

クエストは保留となり、調査班と調査隊がこれから状況を確認して恐らくクエストはまた抹消されるだろう。

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