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第104話 アイラの恋愛事情 ダンジョンボス

ダンジョンは時に冒険者に刃を向く。

そもそも何故ダンジョンが存在しているのかも不明なのである。

ダンジョンには多くの魔物が発生する。

時には人々の予想を超えてくる魔物も誕生する事がある。

いわゆるダンジョンボスと呼ばれる存在で冒険者の挑戦を待っている。

一説では神の意思によるものだそうだ。


アイラとガザルは30階層に到達した。

波乱や危険もなくたどり着く事ができたが、アイラが思っている程もガザルとは親密な話も出来ていない事に焦りを感じている。


「ガザル殿。

このまま、ダンジョンボスを攻略してみませんか?」

この魔物の様子であれば、ダンジョンボスも大した事は無いと思った。


「そうだな。

ちょっと待ってろ。」

ガザル殿は電話で話を始めた。

恐らく調査班にダンジョン攻略に切り替えたと事を報告している。

「調査班には報告した。

じゃあ、行くか!」


「はい。」

想いを寄せている男性とこうしてダンジョンを進んでいるのを私は夢見ていた。

戦いが好きと言う訳ではないが、私はこんなデートに憧れている。

人から見れば、普通の女子が好むものでは無いのは分かっている。


40階層に到達すると、流石に疲れが出て来た。

ガザルさんは疲れが見えないが、私の動きが悪くなっている事に配慮してくれてるのが、行動に出ている。

この40階層に入ってから極端に魔物が増えた。

それは深層に近づいている証拠と言える。

「ガザルさん。

少し休みませんか?」

ダンジョンには安全な場所は少ない。

だが、セーフティポイントを作る事はできる。

簡易的な結界を張るための携帯式結界石である。

それを設置すると結界を張った状態と同じ効果が望める。


「魔物の感触が変わって来た。

50階層が深層と考えて間違いないな。」


「はい。ダンジョンボスはどんな魔物なのでしょうか?」


「それは気になるなぁ。

だが、アイラと俺なら大丈夫だろう。」

頼もしい人だと素直に思う。

見た目は誤解されそうな強面だが、その内にある勇敢さや心遣いが出来る優しさに私は惹かれてしまっている。


「ガザルさんはトモミ様の事が好きなのですか?」

どうしても聞かずにはいられなかった。


「そうだな。

あいつと居ると楽しいしな。

それに俺よりも強い。

そうであっても守りたくなる存在だな。」

私もあなたに守られたい。

この人に認められるには、強くなる事が一番近道な様に感じた。

だから、私は強くなる。

トモミ様の事も守れるくらいに。


「私強くなります。

その時は、私の事も認めてくれますか?」

本当は女として見て欲しいけど、今は冒険者として仲間として認めてもらう。


「何言ってんだ。今だって十分強いぜ。

俺はアイラを同じ冒険者として誇りに思ってるぞ。」

ドキドキしている。

憧れの人に褒められるのは嬉しい。


「ありがとうございます。

……、できれば、…おんなとしても見て欲しいけど…。」

小さな声で思っている事が言葉になって出てしまった。


「ん?何だって?」


「い、いいえ!

大丈夫です。」

聞こえてなかった〜良かった。

心臓が止まるかと思った。

「さあ、ガザル殿。

行きましょう。」

照れている顔を見られたくない。

サッと立ち上がって彼に背を向けた。


50階層に到達すると、予想通り立派な扉が目の前に現れた。

「ダンジョンボスの部屋だな。」


「ええ、そうですね。」


「いっちょ!大暴れするか!」

ガザルさんは扉を力強く開けると中に入っていく。

私はその後からゆっくりと彼の背中の広さを見ながら入っていく。

これからダンジョン攻略を誘ってみよう。

少しずつ距離を縮めよう。

彼はトモミ様の事が好きなのはわかっている。

それでも、まだ負けた訳ではない。

彼を私に振り向かせるのも立派な私には人生の戦いだ。


「それで?

ガザルとは仲良くなれたの?」

アイラはガザルとのダンジョンボスを攻略して戻ってきた。


「はい。少しだけですけど。」

何があったかは聞かないけど。

女の顔になってる。

少し照れくさそうに微笑んでいる。


「ダンジョンボスはどうだったの?」


「そうですね。

私達2人の敵ではありませんでした。

これであのダンジョンも沢山の冒険者が腕試しで攻略に訪れるでしょう。」


「クエストお疲れ様。

ガザルは鈍感だから、積極的に行かないと気付かれ無いかもよ。」


「そうですね。

焦っても仕方ないので、クエストに誘ったりして信頼を築いて行こうかと思ってます。」

このクエストはガザルの事だけでなく、アイラの中で何か大きな変化を与えてくれたのだろう。

以前は何処となく硬い表情が気になったが、今は優しい女の顔も見せられる様になった。


「そうね。

応援してるわ。」


「はい。

トモミ様……。」


「ん?

どうしたの?」

穏やかな表情から真剣な表情に変わった。


「私、負けませんから。

トモミ様の事は尊敬しております。

ですが、この恋は負けませんから。」

緊張してるのね。

とっても顔が引き攣ってますよ。


「ええ。

でも、私はガザルに興味ないけどね。

だけど、良いわね。

その想いは大事よ。」

私はガザルから想いを寄せられている事は知っている。

それに応えないのも申し訳ないと思って居たけど、アイラはガザルの気持ちを自分に振り向かせて見せると私に宣告したかったのね。

私の大事な家族で妹の様な存在の恋は応援したくなる。


「ありがとうございます。

そう言えば、聞きましたか?

国は例の異世界と国交を樹立する事を発表するそうです。」


「ええ、勿論聞いてるわ。

また厄介事を持ち込まれる可能性は高いわね。

ギルドとしても異世界側にちゃんとしたギルドが存在しないと分かって事業拡大に乗り気なのよ。」

国の政治家とドラダートさんと事務方が暗躍しているのは察知していた。

ゲートを造ったのもこう言う事を目論んでの事らしい。


「話によると、異世界の勇者一行もこちらの世界に代表の一団として招待するそうですね。」


「ええ、私としてはちゃんとお礼も出来るから良い機会だけど。

下手に首を突っ込むと墓穴を掘りそうだし。

深入りはしないつもりよ。」

それにしても話が急すぎる気もする。

あの事件から数週間でここまで準備を整えて来るなんて。

あの世界の国が安全で平和な国とは限らない。

不安な要素も多すぎて、見て見ぬ振りが出来なくなる想像しかない。

中々ゆっくりとのんびり過ごす事はさせてもらえないようだ。


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