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春風戦争 外伝 ~王太子誘拐事件~  作者: ゆうはん
~それぞれの立ち位置~

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第0部 6章 2節 47話

中央公園では残された面々がブレイクが飛んでいった方角を

見上げたまま、立ちすくんでいた。

周囲に動きがない事を確認したルーパは、一人動き出す。


「さて。俺も行くかね。」


その言葉に驚いたのはカエデである。


「ルーパ!?」


名前を呼ばれたルーパは片眉を吊り上げた。


「ぼっちゃんは、発射を阻止しろ!って言ったんだぜ?

重火器も持ってないおっさんがどうやって

発射を阻止すんだよ?」


その言葉に、カエデもウルスもハッ!とする。

理解力のある2人にルーパはご満悦である。


「やるならエアバイクを、砲台にぶつけるしかねぇ。

だったらおっさんを回収する役がいるだろ?」


「私が行く!」


「僕も行きます!!!」


カエデとウルスが同時に言った。

2人はお互いの顔を見合わせ、ルーパに向き直る。


「これはピュッセル海賊団の問題だ。

船員の命を助けてもらうんだ。私が行くべきだろう!」


カエデが言うと


「伯に指示をしたのは、僕です。

僕も行くべきでしょう。」


とウルスが続いた。

(この2人、似た者同士かよ・・・)

とルーパは心の中で思う。

そして、一度言い出したら聞かない頑固者なのも二人同じだ。

ルーパは胸ポケットからタバコを取り出すと、口に咥え火をつけた。

手に持っていた自分のヘルメットをウルスに被せる。


「うわぁ。」


予想より重量のあるヘルメットを支えるのに、ウルスが声を上げた。


「ぼっちゃんは俺の後ろだ。

そうなると、おっちゃんを乗せれなくなる。

おっちゃんの回収は任せたぜ?お嬢。」


カエデの表情が明るくなった。


「任せとけ!」


カエデもヘルメットを被ると、エンジンを回しだす。

この中でルーパの心だけが晴れなかった。

何故なら、エアバイクを駆るブレイク伯の表情を見たからである。

(あれは、死地に赴く男の顔だ)

ルーパにはそう見えた。

王国の貴族である伯爵一人が死ぬ事はルーパには何も関係ない。

勝手にやってくれという気持ちだったが、

責任感の強い、カエデとウルスはそうではないだろう。

自責の念に押しつぶされるはずである。


「まったくよ。困った奴ばっかりだ。」


「ん?何か言ったか!?」


ルーパの言葉にカエデが反応したが、聞き取れていないようだった。


「なんでもねぇ!行くぜ!!!」


ルーパは火をつけたばかりのタバコを地面に捨てるとエンジンを回す。

3人はブレイク伯を追いかけるように、東の空へと飛んでいくのであった。


先行していたブレイクは、東の海岸沿いに到着した。

既にグランベリー海賊団のエアバイクはほとんどが撤収し、

船の上空を2台が警戒のために周回しているのみである。

ブレイクは海面スレスレを飛んだ。

街は炎の光で明るかったが、海は真っ黒な深淵に包まれている。

炎の明かりに照らされ、旗艦「ノーライフデス」のシルエットは

目視でも確認できるが、海面スレスレを飛ぶ小型のエアバイクを

視認することは難しい。

それでも近くまで行けば見つかる。

エアバイクのライダー一人が気付いたのは、ブレイクが船に30Mと近付いたときだった。

ブレイクは機体を船の影に入れた。

ピュッセル海賊団も撤収をしていたので、ほぼ無防備の船からの砲撃はない。

ノーライフデスの船体を一周回るようにバイクを走らせる。

グランベリーのエアバイクが船体横に追いかけてきた時には、

既にブレイクは船体の後方を回りこんでいた。


「奴らは私の目的がわかっていない。」


ブレイクの勝機はそこにある。

ブレイクが何を狙っているのかわかっていないため、

先手を打つ事ができないのだ。

ブレイクが船体の後方から回り込むように船の右側面に周回した。

何人かの海賊が船のハッチより銃を構えて外に出てくる。

パン!パン!

乾いた音が海面に木霊する。


「打ち落とせ!」


海賊の怒声が後に続く。

ブレイクはバイクを左右に振りながら銃撃を避けつつ、

船の前方を目指した。

目標は船首にあるガルパン砲である。

ガルパン砲は国家の最大機密兵器であり、

砲身の右側に、識別番号がふってある。

長い英数字の羅列ではあるが、重要なのは最後の一文字だけである。

1なら国王親衛隊。2なら軍。3ならメイザー公爵。

バイクを駆りながら「フッ」とブレイクは笑った。

ぶっちゃけるところ、確認するまでもない事である。

ガルパン砲の持ち主が誰なのか、それはもう確認するまでもない事である。

しかし、ブレイクは確かな証拠を得る必要があった。

かの悪党の尻尾を掴むために。


銃撃を避けつつ、ブレイクはアクセルを全開にし、

一気に船首へ向け急上昇する。

ナナメ後方からガルパン砲の右側面に踊り出る。

ブレイクは視線を左肩に落とした。

その先に、ガルパン砲の識別番号が見える。


「3!」


口でもそれを唱えた。

記憶に植えつけるように、忘れないように。

パン!

銃声と共に、一発の銃弾がブレイクの背後から右肩に抜ける。


「撃たれた!?だが・・・!」


ブレイクは船首を通りすぎ、船の真正面でハンドルを切った。

ノーライフデスの艦橋から、真正面に見える位置で

Uターンをかます。


「あいつ!何するつもりだぁ!」


艦橋ではグランベリーが叫んでいたが、もちろんそれはブレイクには届かない。

ガルパン砲は充電中で、砲身の中に光の固まりが見えた。

凄まじいエネルギーなのがブレイクにはわかる。

こんなものが発射されたら、どれほどの被害が出るであろうか。

自分の所属する王国が作った兵器ではあったが、

ブレイクは戦慄を覚えた。

Uターンしたブレイクのエアバイクは、ガルパン砲の真正面にあった。

彼はアクセルを回す。

その動作に、グランベリーがようやく彼の狙いを悟る。


「いかんっ!撃て!ガルパン砲を撃つんだぁ!」


その声が聞こえたわけではない。

だがブレイクはニヤッと笑った。


「遅いっ!!」


彼はアクセルを一気に回すと、エアバイクから飛び降りた。

無人のエアバイクは吸い込まれるようにガルパン砲の砲身へと突っ込んでいく。

エアバイクより大きい口径の中に、すぅと吸い込まれていった。

溜められていたエネルギーが、一気に爆発する。

砲身にヒビが入り、亀裂から光が漏れる。

落下途中、ブレイクは自分の失態を悟った。


「しまった。通信機を借りておくべきだった。」


彼には二つのミッションがあった。

一つはガルパン砲の発射阻止。

もう一つは、この凶悪な兵器の出所を掴む事である。

どちらも達成できたのだが、それをウルスらに伝える手段を持っていなかったのである。


「私はいつも、こう・・・詰めが甘い。」


ボチャン!

ブレイクは海に着水した。

瞬間、高エネルギーを溜めたガルパン砲がそのエネルギーを最大放出する。

発射される前に、エアバイクを打ち込んだはずであったが、

巨大なエネルギーはノーライフデスの右ナナメ上240度の方角へ放たれた。

光の束がノーデル星の内壁を貫く。

ゴゴゴゴゴ!凄まじい爆音と共に、その光の束は移動を開始した。

エネルギー量が高すぎて、

弱った土台が光の勢いを支えることが出来なかったからである。

ガガガガッ!

レーザーが物体を焼き切るかのように、右へ右へと移動していく。

内壁が切り裂かれていきながら、その光の束は回りこむように、

ノーライフデスのブリッジを目指した。


「ひぃ!止めろ!止めろぉ!」


艦橋ではグランベリーが船首から180度回転してこちらに向かってくる光の束を

確認することができた。

ただ眩い光の点から伸びるまっすぐな光が、

ブリッジを光で包む。


「ぐおおおお。」


光の中グランベリーは何を思う事なく、蒸発していった。

遅れて、船首より大爆発が起きる。

武器の格納庫に引火し、至るところで誘爆が起きた。

船首とブリッジは消えてなくなってはいたが、残った船体が

猛烈な勢いで誘爆を繰り返す。

最後に大爆発をして、船は静かに海に沈んでいく。

文字通りの轟沈。であった。

( ゜д゜)ノ次は4/19(月)

更新予定です

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