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春風戦争 外伝 ~王太子誘拐事件~  作者: ゆうはん
~王太子誘拐~
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第0部 1章 1節 4話

ストックが溜まりだしたので

臨時更新w

ウルスらは、大型輸送機ワルワラガイドの格納庫へと案内された。

それはとても手馴れたもので、

この機の所有者が誰なのか?一瞬錯覚するほどであった。

輸送機の所有者は、スノートール王国軍であり、

侵入者が内部設計に詳しいことというのは、不思議な事である。

だが彼らは王子らの極秘裏の旅行を狙ってきていた。

それが用意周到に準備された計画であることが

ここでも窺い知れるのである。

彼らはワルワラガイドの設計図さえも入手していたのだ。


格納庫には通常、兵士たちを降下させるべく

降下用のハッチが付いている。

ウルスたちが格納庫に到着すると

既にそのハッチが開かれた状態になっていた。、

ここから降りろ。という事なのであろう。

ブレイク伯は、ハイジャック犯たちに確認する。


「死者は1人も出す気はないんだな?」


交渉役であろう女性が頷く。

ブレイクはハッチの横に備え付けの受話器を取った。

それはコックピットに繋がる有線の通信機だった。


「ダイナ少佐。君はこのまま目的地へと進んでくれ。

犯人との交渉は成立した。

余計なことは考えず、命令に従って欲しい。」


伯は受話器を置く。


「で、ここから飛び降りろというのか?

私はともかく、王子たちは降下訓練なぞ受けていないぞ?

ましてや、この低空では…。」


訓練なしにパラシュート降下など危険この上ない行動である。

ブレイクの心配は当然であった。


「降下訓練なんかいらないさ。

必要なのは、私たちを信用するって事だね。」


そう言うと、女性はハッチから身を外へ投げ出した。

パラシュートの道具など持っていないはずである。

瞬間的に動いたのはウルスだった。

彼女が飛び降りたハッチの淵まで走る。

外を見ると、彼女と目が合った。


「来い!!!次世代の王よ!!!」


風の摩擦で轟音が耳の中で鳴り響く中、声が聞こえた。

いや、聞こえた気がした。

ウルスは衝動的に、身を投げ出す。

ブレイクとセリアが制止する暇もなかった。

空中に投げ出されたウルスは、それでも先に飛び出した彼女から

視線を逸らさなかった。

彼女はウルスに片手でOK!のサインを出すと、空中でクルリと翻る。

同時に無人のエアバイクが彼女の真下潜り込んだ。

自動操縦と遠隔操作である。

彼女は空中で器用にエアバイクに跨ると、ハンドルを切り、パワーを上げた。

加速され、ウルスの落下軌道に合わせる。

瞬く間にウルスの隣まで来た彼女は、手を伸ばすと

ニコッと笑うのだった。

ウルスは彼女の手に捕まり、それをつたってエアバイクの後部座席へと座る。

完全なアクロバットの類ではあったが、彼女しか見ていなかったウルスは

それを成功させることが出来た。


「やるぅ。」


ワルワラガイドに残こる侵入者一味の1人が感嘆の声をあげる。

いつもは冷静沈着なセリアが、ヘタッと床に座り込んだ。

力が抜けたようである。

その王女を大柄のハイジャック犯が抱きかかえた。


「えっ?」


という間もなく、セリアは抱きかかえられたままハッチの外に

飛び出していた。


「いやぁぁぁぁぁぁ!」


セリアの絶叫が、輸送機の後方に流れていく。

一連の流れがあまりに短時間で行われたため、

流石のブレイクも呆気に取られていた。

それを呼び戻したのは、さきほど王子の行動に感嘆した男である。


「さ、次はあんたの番だぜ?

怖いなら王女のように抱きかかえてやるが?」


そういう男は、大柄の体型ではなく、大人であるブレイク伯を

抱きかかえることは出来そうになかったのだが、

彼なりの冗談なのだろう。


「結構だ。」


ブレイクはそう言うと、ハッチから身を投げ出した。

伯に続き、残った侵入者たちも次々に飛び降りる。

気付けば、エアバイクの総数は15台になっていた。

その内の2台のエアバイクには荷台のようなものが付属しており、

セリアとブレイク伯はそれぞれその荷台付きのエアバイクに回収された。

見事なものだった。

エアバイク出現から、3人の回収まで

ものの10分もかかっていないであろう。

襲撃ポイントは、軍の基地から一番遠い地点で行われており、

軍の戦闘機が向かったとしても、1時間半はかかる。

そこに、この手際の良さである。

素人であるウルスにも、その凄さがわかった。

むしろ、感動さえも覚える。


「あ、あの…。」


後部座席に座り、後ろから抱きつく格好になっているウルスは、

自分を連れ出した女性に話しかけた。

彼女は、首をクイッと傾ける。


「お名前をお聞きしてよろしいですか?」


誘拐犯とその被害者の会話とは思えない内容をウルスは口にしていた。


「ああ、私はカエデだ。ピュッセル海賊団のカエデ様さ!」


彼女は笑いながら応えた。

彼女はウルスが即座に飛び降りた事に満足しており、上機嫌だったのである。


「う、ウルスです。スノートール王国、カルス王の息子、ウルスです。

よろしくお願いします!」


「しっかり捕まってな!」


カエデは、そう言うとアクセルを吹かした。

エアバイク一向は、輸送機ワルワラガイドの進行方向と外れて、

北に向かってた。

後世に語り継がれる「王太子誘拐事件」はこうして奇妙な関係で始まったのであった。

次は月曜(25日)予定

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