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春風戦争 外伝 ~王太子誘拐事件~  作者: ゆうはん
~ノーデル星マラッサ~

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第0部 2章 2節 14話

ノーデル自治星には三つの宇宙港がある。

重力が強く、大気がある惑星と、ノーデル自治星のように岩石の塊である中惑星とでは、

宇宙港の持つ意味はまったく変わってくる。

ノーデル自治星は地下の岩石内に都市を建設しているため、

宇宙港は、その内部に侵入するための入口であると言える。

三つの宇宙港のうち、一般に開放されているのはBゲートと呼ばれる場所で、

残りの二つは、海賊専用に開放されていた。

中心都市であるマラッサに繋がるのはAゲートとBゲートであり、

二つの海賊団が入港してきたAゲートには緊張が走っていた。

基本的にノーデル自治星のような海賊を商売にしている星では、

中立・武装解除が暗黙の了解であり、

海賊同士が揉め事を行うのはご法度となっているが、

それでも敵対勢力同士が鉢合わせなどがあると、

大小のいざこざが絶えない。

Aゲートに入港しているピュッセル海賊団とグランベリー海賊団は

敵対しているという情報はなかったが、

血の気の早い海賊たちである。

何が起こるかわからなかった。


ノーデルの自警団の心配を他所に、グランベリー海賊団のボス、

グランベリーは、ピュッセル海賊団の船を訪れていた。

これは揉め事を起こさないよう挨拶する海賊たちのマナーであったが、

この瞬間が一番、問題が起こりやすい。

両者ともに警戒態勢で会談に挑む事となる。

そんな中でも、グランベリーは余裕の表情であった。

ピュッセル海賊団の旗艦「ライクアンベクトル」に向かったのは

彼を含め七人。

ボスのボディガードとしては少ないほうである。

グランベリーは海賊としては新興勢力であったが、

近年一気に台頭してきた。

元々二つの大きな海賊団がしのぎを削っていた地域で旗揚げし、

一つが王国の軍に潰されたのを契機に、潰れた海賊団の団員を吸収し、

その勢いのまま、もう一つの海賊団を潰したやり手である。

通常、そこまで大きくなると軍が動くはずであるが、

グランベリー海賊団には未だ軍に目を付けられることなく、

大勢力へと成長していた。

対してピュッセル海賊団は、20年ほど前から地下に潜り、表舞台での

海賊活動は行っていなかったため、表向きは落ちぶれた感があり、

力関係でいうと、完全にグランベリーのほうが上だったのである。

彼には余裕があった。


「おう!ピュッセルの旦那は元気かい?」


搭乗口でピュッセル海賊団の船員に声をかける。


「おかげさまで。」


そういう船員に片手で挨拶して、グランベリーはライクアンベクトルの中に入った。

案内の船員がブリッジに通す。

ブリッジにはピュッセル海賊団の団長であるピュッセルが居た。

カエデの育ての親でもある。


「おうおう、ブリッジで会談とは、味がないんじゃないか?

ピュッセルの旦那。」


そう言いながら、ズカズカとブリッジの中へ入っていく。

もちろん、彼らが座る場所はなく、確かに客人をもてなす場としては

相応しくなかった。


「お主らが来たと聞いて、出港の準備をしていたのでな。」


ピュッセル海賊団のキャプテンであるピュッセルは齢65になろうかという

ジジイであったが、年齢にそぐわぬ肉体をしており、

貫禄がある。

もちろん、グランベリーも黒い髭を蓄えた大男であり、貫禄では負けてはいなかった。


「がはは!大きい組織への妬みか?嫌われてるとは心外だ。」


「主らを好きな奴がいるのか?」


周りの船員らに緊張が走る。

だが、この位の悪口で気分を害するような男では、海賊団のボスは務まらない。


「そう言うなピュッセルの親父。お宅らが地下に潜って、

情報で食っているのは知っている。

どうだ。俺らと組まないか?

武力の俺らに、あんたらの情報が加われば無敵だぜ!」


ピュッセルはグランベリーを睨んだ。

あながち冗談とも思えない提案だったからだ。


「グランベリーの。この琥珀銀河は、既に開拓の余地はなく、

これからは銀河の隅々まで国家の権力が及ぶようになる。

未開地があったからこその海賊家業よ。

潰されるがオチだぞ。」


グランベリーはピュッセルの忠告にニヤリと笑った。


「さすが20年前に、それを予見して地下に潜った旦那だけはある。

だがな・・・。俺らも手を打ってないわけじゃないんだぜぇ?」


2人の間に沈黙が走った。

その時、ブリッジに飛び込んできた人影があった。


「親父!」


カエデである。

ホテルより直行してきたようだった。

カエデはグランベリーと顔を合わせると、しかめっ面になる。

2人は初対面ではなかった。


「おう、カエデじゃねぇか。そんなに俺に会いたかったのか?ぐはは。」


「誰があんたなんかに会いたいものかよ。失せな!」


カエデの言葉に眉を上げ目を見開く。


「俺様のプロポーズを断る女はおめぇくらいだぜ。カエデ。

利口じゃなえぇなぁ。」


グランベリーは鼻の穴に指を突っ込みながら応えた。

カエデはグランベリーに目を付けられていたのである。

ピュッセル海賊団の親分の養女が、大学に進学し主席で卒業したと聞き、

グランベリーはカエデに興味を持った。

海賊のほとんどは学校にさえ満足に通っていない無学の者たちが多い。

そこでカエデを嫁にすることで組織の強化を図ったのである。

もちろん、ピュッセル海賊団を傘下に組み込む事も考えてである。

しかしカエデはその申し出を突っぱねた。

カエデの養父であるピュッセルも、カエデを海賊の嫁にする気はなく、

娘を支援したが、グランベリーの嫌がらせもあり、

カエデは仕方なく海賊家業に身を寄せることになったのである。


「後悔するぜぇ?カエデ。」


20近くも年下の娘を見るその目は、完全に中年のおっさんの目であった。




( ゜д゜)ノ次の更新は2/15(月)です

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