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春風戦争 外伝 ~王太子誘拐事件~  作者: ゆうはん
~ノーデル星マラッサ~

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第0部 2章 2節 12話

「で、これはどういう事なんだ?」


ノーデル自治星の主要都市であるマラッサは観光都市ではなかったが、

海賊の活動拠点として成り立っていたため、ホテルが多い。

その中でも格式の高いホテルの一階部分は、食事ができる食堂になっていた。

ウルスらは、その食堂の丸テーブルを囲んでいた。

先ほどの声は、ルーパに呼び出されたカエデである。

ウルスが大変なんだ。と緊急に呼び出されたわけだが、

食堂のテーブルにカエデ・ルーパ・クックル・ウルス・セリアの5人が

座っている。

カエデはルーパに説明を求めた。


「ウルが、お嬢と話したいって言うからよ。」


運ばれてくる料理をつまみながらルーパが答える。


「いえ、僕は!!!」


カエデに睨まれたウルスはたじろいだ。


「で?交渉のほうは上手くいったんか?」


ウルスを無視して、ルーパがカエデに質問を返す。

カエデは先ほどまでブレイク伯と話をしていた。

もちろん、ウルスとセリアの解放条件についての話である。


「いや、難航してる。

やはり今回のノーデル制圧作戦を推し進めたのは

メイザーの野郎らしい。」


「だから言ったんだ。

拉致るなら、メイザーの息子のほうがいいって。」


2人はウルスとセリアの目の前だったが、気にする事もなく

物騒な話をしていた。


「だが、クレメンスの情報は、やはり気になる。」


グラスに注がれた酒を口に運ぶと、カエデは何か考え事をしているようだった。

クレメンスの情報というワードを聞いたルーパは、

ウルスに視線を落とす。


「王子・・・暗殺ねぇ・・・。」


半信半疑という感じでルーパが呟いた台詞をウルスはしっかりと聞いた。

もちろん、直ぐに反応はしない。

聞こえていないフリをしていたが、確かに聞こえていた。

そんなウルスを知ってか知らずか、ルーパはウルスのほうに身を乗り出す。


「おい、ウル。俺たちは今、海賊家業から足を洗って、

情報で食ってる。人様の知りたい情報を仕入れ、知りたい奴に売ってるわけだ。」


「はい。」


ウルスは頷いた。

まるで学校の先生と生徒のようである。


「そんな俺らに3つの情報が飛び込んできた。

一つは、ノーデル星の住民を全員退去させ、別の惑星に移住させる軍の計画。

二つ目は、惑星カリフに王子と王女が秘密裏に来訪するって情報。

そして三つ目は、ウル。お前の暗殺計画が進んでいるって情報だ。」


「おい、ルーパ。」


カエデがルーパを窘める。

だが、その語気は荒くはなかった。

そんな事、子どもに言っても仕方ないだろう。ぐらいの勢いである。


「へへ、お嬢。ウルは俺の弟子だぜ?

それもとびっきり優秀な、な!」


ルーパがウルスにウインクした。

今日一日一緒にいただけでいつの間に師弟関係になったかは定かではないが、

ウルスはルーパのフリに頷いて応えた。


「はい!先生!!」


「反面教師だろうが。」


カエデの皮肉にルーパは首を振る。

貴族の家で躾に厳しく育てられているウルスに、この男の自由な感じは

眩しかった。

今までに出会ったことのないタイプの人間だったのである。


「さて、ウル。さっきの三つの情報には

関連性があると俺たちは推測している。

まず、ノーデル自治星と惑星カリフの位置は近い。

王子や王女が参加するパーティの側で、同時期に軍事活動が行われるって

いうのは、とても不自然だ。

従って、3つめの情報。王子暗殺計画がこの二つに結びついていると

予想できたわけだ。」


皿に乗っている肉を惑星カリフとノーデルに見立てて、ルーパは説明する。


「つまり、王子がいる側で海賊の拠点を潰す。

その報復に、海賊どもが王子暗殺を企てる。

つまりこの3つの情報は、一つ一つの単独計画ではなく、

連動しているってのが俺たちが読んだ筋書きさ。」


「そんな、無理矢理な。」


突拍子もない話題に、ウルスはありきたりな反応を返した。


「ウル。情報ってのはな。点と点で見ちまったら何の意味もない

ただのワードさ。

点と点を線で結び事で、情報には価値が出てくる。

ノーデル自治星の住民を移民させて得するのは誰だ?

労働力を欲しがっている奴がいたな。

王子と王女を惑星カリフに招待したのは誰だ?

息子の誕生日パーティか何か知らないが、呼び出した奴がいるな?

そして、王子が亡くなって一番得をするのは誰だ?」


「僕を殺して、得をする人がいるとは思えませんが・・・。」


ルーパは、メイザー公と言わせたいのだろう。

だが、ウルスにはメイザー公が王子を殺す動機がみつからなかった。


「じゃあ、質問を変えよう。

王位継承権一位である王太子を殺して、得をするのは誰だい?」


ルーパはニヤリと笑う。

現在の王位継承権二位は、メイザー公爵である。

王太子を殺して、次の王継承権一位はメイザー公となるのである。


「全て、あいつに繋がるのさ。

誰が王になるとか俺たちには全く興味がねーが、

あいつが王になるとか、まっぴらご免だ。

だから、邪魔してやろうってね。」


人生経験の浅いウルスでも、ルーパの言葉に含まれる意味を察した。

ウルスをターゲットにした暗殺計画が進んでいる。

それを彼らは邪魔をしたいのだった。

つまり、この誘拐劇は。

この誘拐という事件の真の目的は。

ウルスとセリアの身柄を確保したカエデらの魂胆は。


「僕らを保護した?」


ウルスの言葉に、カエデは頭をポリポリとかいたのだった。



次は2/10(水)更新予定です( ゜д゜)ノ

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