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昇格試験





俺の名前は、田中(たなか) 優斗(ゆうと)


ただいま絶賛 神様とりつかれ中の、高校1年生…



しかもとんでもない理由でだ







「財布がない…」


カバンの中も、ポケットも、


「っないっっ!!!」


高校からの帰り道。バイトで稼いだ48000円が入った財布が無いことに、コンビニのレジで気がついた。


「すいません…これ、キャンセルで……」


キャンセルってなんだ…レジでお金なくて買えないときに、キャンセルって言い方なのか、よくわからない。


いや、そんなことよりも

今考えることは財布の行方


オレはとりあえず、学校までの道をひきかえした。



なかった…



おわった…


もうだめだ………


そんな放心状態のオレの横に、黒のパーカー、フードを被った黒髪でくりくりっとした大きな目をした子供がいた。たぶんまだ10才くらい?に見える


その男の子は


「よし!ミッションクリア!」



そういって、ノートに何か書き込んでいる。

チラっとぬすみ見ると、



対象者 タナカユウト


1、財布をおとす。


クリア


と記入されていた。



どういうことだ

オレは財布を落としたことを誰にもいってない。

なのに、こいつの待ってるノートには『タナカユウト 財布を落とす』


とかいてある。




「ん?」


ソイツは急にオレの方をむいた。



くりくり目をした少年は、オレの顔を不思議そうに見ている。


「なんだよ?」


「?」


ムシかよ……


「そのノート、俺の名前かいてんだけど?なんなの?」



「え?ボク?」


「ボク以外にこの道に人がいないだろ」


「見えるの?ボクのこと」


「………は?」


何をいってるんだ、この目玉くりくり坊主は。


「見えてるんだね…これで今年も昇格できないよ」


「昇格?」


「うん」


そういって、コクコクと頷いている。


「ボク、昇格試験中なの。貧乏神昇格試験」


「は?」


「何でボクの姿がみえるの?君のせいで今回も落第じゃないか」


「…何言ってんの…?」


「え?だから、君のせいで昇格試験が」


「それは聞こえてるんだよ!!言ってる事の意味がわかんねーって言ってんの!!何?貧乏神昇格試験って?!」


「なるほど、じゃあ自己紹介するね。ボクは貧乏神みならい、トウシです。君に絶賛とりつき中!よろしくね☆」



「よろしくね☆じゃねーよ!!ふざけんな!」


ハッ!!


「財布…お前のせいかっ!!」


「そ、ボクのおかげだよ」


「おかげ!?」


「まぁまぁ、そんなに怒らないでよ。試験はあと1週間。楽しくやろうよ」



楽しく…だと……?


「…いや、ちょっと待て。昇格出来ないんだったら、もうオレのところにいる必要なくないか?」


トウシは目をぱちばちしながら、驚いた顔をしている


「……たしかに」


気づかんかったんかい……


「じゃ、お前はうちに帰りなさい。」


シッシッ


早くどこかにいけ!とジェスチャーでわざとらしくしてみて気がついた


「おい、その前に、お前!オレの財布返せよ!!」


「……やだ」


………やだ…だと……?


「お前…トオシとかいったか……人のモノ盗んだら犯罪なんだぞ」

「ボクが盗んだんじゃないし、勝手に落としたんじゃないか。無実だし」

「じゃ、どこで落としたか言えよ……見てたんだよな?」

聞くとソウシはプイっと顔をそらす。


「んーー、教えてあげてもいいけど」

「けど?」

「ボクをユウトの家に住まわせてよ」

悪びれもなくニコニコしながら、とんでもないことをいいだす。

「ふざけんな、住まわせるわけないだろ。」

「でも住むことにしたからね」

「なんで勝手に住むことになったんだよ!!」


少し…というか、かなり大きな声を出していたのか、まわりがオレたちを見ている。


なんだ??


何か…おかしな人をみるような、そんな視線だ

「ユウト忘れてるみたいだけど、ボクのこと見えてるのはユウトだけだよ?」

「っ早く言えよっ!!」

何で見えるの?とか言ってた。他の人には見えないってことだったのかよ!!


オレは視線から逃れるように、家に帰った。



「なんでついてきてんだよ!!」


「何でって、ユウトの家に住むっていったじゃないか。もう忘れたの?」

「覚えてるが許した覚えはない!」

「許された覚えもない」

何を自信満々で言ってるんだコイツは…


「帰れよ」

「ムリだよ、だって今昇格試験中だから」

だめだ、これ以上話してもらちがあかん…

「一週間…」

「え?」

「一週間したら絶対帰れよ?」

「それって、ボクをここにおいてくれるってこと?」

「ああ、嫌っていってもどうせ住むんだろ、けど一週間!!それはまもれ!試験後そっこーかえれ!!」

「ふむ、わかった」


「とりあえず、ボク寝るからね。」

そういって、ねた。

「……貧乏神って寝んのかよ」



昇格試験は落ちると言ってた。それならもう俺に悪いことはおきないよな?…大丈夫だよな?








 貧乏神が家にすみついた………

オレにとりついてた日数はさらに何日間なのかはしらない。


次の日、学校に行くオレに、トウシがくっついてきた。

「何でついてくるんだよ……」

誰にも聞こえないくらいの声で、トウシに喋りかける

「だって、今ボクはユウトにとりついてるんだよ、一緒にいるのはあたりまえじゃないか」


あたりまえじゃねぇ!!!


って言ってやりたい!!言ってやりたいけど!トウシの事はオレ以外にはみえないらしい。というか、ふつう人間には見えないらしい…オレが例外なだけだ……

 よって他の人からみると、オレは独り言を言ってるようにしか見えない。



「ねぇねぇ?」

「……………」

「ねぇ?」

……誰が喋るか

「ねぇってば!」

返事しないオレの頭をごつんと一発

「いたっ!!」

思わず声にでた。



 なんで神様なのに人にさわれるんだよ。いや、神だからさわれるのか?

「なんだよ…」

俺はまた小さな声で聞く。


「あの子が食べてるのなぁに?」

食べてるのも?

指差す方向をみると、小学生がソフトクリームを食べている。

「ソフトクリームだよ」

「そふとくりーむ?おいしいの?」

「まぁな」

ヤバッ!こいつのペースにのまれて、また喋ってる。変人扱いされるのはごめんだぞ!

「たべたい」

は?

「食べたい」

はぁ?

神様…って物たべるの?神様もお腹ってへるのか?

オレの神様へのイメージがいま崩壊しつつある。


「帰りに買ってやるから、もう喋るな…」



 やっと学校に着いた…

 それまでずっとトオシが喋りかけてきて、きつかった。

無視すると「試験の続きしようかな」っとか、脅してくるし!


 しかトウシが見えないなんて嘘なんじゃないか…って、密かに思っていた。

 学校…これだけの生徒がいれば、誰かはこの『神様』とやらに気がつくんじゃないか?と…

が、オレの希望は打ち砕かれた。

 一年から三年の教室がある廊下、校内の全廊下を歩いてみたが、だれもトウシを見ることなできなかった。

 オレの隣をフワフワ浮きながらついてくる少年(神様)がいれば、確実にそっちに目があけだろうけど、誰もみないし……


「はぁ…」

ため息しかでない…

「ねぇ」

「…………」

「ボク途中報告に行ってくるから、そのあと直帰するし。よろしくね。」

二度と帰ってこなくていいぞ!


 …途中報告……って

 そんなんあるんだ……確か『昇格試験』とかいってたし……試験…試験っ!!

 そうだ!オレも明後日から試験じゃねぇか!!

 オレは1日前からしか勉強しない!という、前日詰め込み型だ。詰め込めてるか…っていうのは、そうでないときの方が多いけどな…

 問題はそこじゃない…


 貧乏神様かとりついて…大丈夫なのか?


 あ~も~~っ!!

財布も落とすし、最悪だっ!!!

あっ!!財布の事きくのわすれてた!!



 昇格できない…って言ってたし、このまま帰ってくれないだろうか……必死に願う



神様はそんなにあまくなかった。




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