森の魔獣と平原の魔獣
本日は、投稿予定時間を変更しました
ブーメラン三本を巧みに使い分けながら、城壁の上を走るヴォルフガング・シュリーマン。水空籠で並走する3名を巻き込まない配慮も出来る。
通信器具で座標を言語化しつつ走るティル・シュトラウス。目にもとまらぬ鞭捌きで襲い来る飛来型魔獣を追い払う。しかし、魔獣の相手で忙しく、地図を書く暇はない。その為、口で座標をジークフリートに告げている。
通信を受けとるジークフリートは、地上班だ。過剰戦力とも言える第三班である。余裕の態度で通信に専念した。
魔獣の迎撃は、主にジルベルト・タンツ銀紐隊長、ヴィルヘルム・フッサール副隊長、剛剣遣いのゲオルク・カントに任せる。受け取った座標は、録音もしていたが、最新機器で自動作図が出来るのだった。
こうして、前日に記録した外周だけの測量図面とは別に、城壁の記録と、上から見渡した死の平原の様子が記録された。
記録しながらの移動だったので、この日も前日同様、城壁の端に来るまでに夕方になっていた。
「今日から死の平原でキャンプだ。気を抜くなよ」
ジークフリートの号令で、壁に登っていたティルとヴォルフガングがするする降りて来る。
「よし、一旦集合」
水空籠に乗っていた、第一班と第二班も地上に集結する。籠は、素早く畳んで背負う。
そのまま、五人ずつの三列横隊で壁を離れる。壁は山側へと続いており、銀紐隊は、いよいよ死の平原の踏破に乗り出したのだ。
始めは、壁に接している森の縁を行く。森は、山の裾野を形成していた。この辺りの地図は、以前の討伐遠征で作成されたものがある。
今回は、その旧い地図に新しい情報を書き加えて進む。
ティルは、首から下げた魔法板に、いつも通り正確な線を書き入れる。魔法板は、副隊長ヴィルヘルムの発明で、幾つかのシートを同時に作業出来る優れものだ。
地図に線を引く傍ら、特記事項は別のシートに書き入れて行く。
死の平原と森が接する森の外縁部分では、平原と森の魔獣が、互いに行き来していた。魔獣なので、出会い頭に争いを始める。
ぶつかり合うのが、個体同士ならまだよい。幾つかの集団が遭遇してしまうと、熾烈な争いが起こる。
魔獣同士の争いなど、静観するのが一番だ。
しかし、今回は、果ても知られぬ死の平原を、完全踏破しなければならない。
群れ同士の闘いに決着が着くのを待つわけにはいかなかった。そんなことをすれば、いつまでたっても先に進めないだろう。
三列横隊の第一列を形成する五人、その真ん中には、副隊長フリードリヒ・ブレンターノがいた。
両端を、やはり遠隔攻撃が得意な隊員が担う。吹き矢の巧手マックス・ラインラントと、魔法の礫で投石をするゲルハルト・コールだ。この二人は、引き続き前衛を割り振られた。
明けましておめでとうございます
本年もジル達をよろしくお願い致します
お読み下さりありがとうございました




