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雑用騎士ジルと魔法のお使い  作者: 黒森 冬炎
序章・魔法使いの結婚
5/110

逢いたい魔力

今回も2話になりました。

主人公夫婦のご対面は、次話(R2/9/5 3:00)

 ジルベルトは、隊員達と共に立ち止まって空を見上げていた。


「ドラゴンだな」


 剛剣遣いが言う。


「あはは~、マリーナ、ごめんねぇ」


 長身の優男が、妻の名を呼んで渇いた笑いを溢す。


「隊長、みんな、いままで有り難う」


 小男が、真面目くさって呟く。


 闇雲に走り時折ぶつかってくる魔獣を、反射的に退治しながら、城塞騎士団『銀紐隊』のトップ3人は、顔を下ろす事が出来なかった。



 唯独り、隊長ジルベルト・タンツだけは、逃げる算段と討ち取る勝算を胸に、上空を飛ぶドラゴンの気配を睨み付けていた。


(俺達だけなら、下山は出来る。だが、残りの連中はどうする?)


 枯草のような独特の臭いが、暴風に乗って渦巻く。ドラゴンは、徐々に降りて来ているようだ。


(下山した所で、ナーゲヤリに来られたら同じだ)


 姿はハッキリ見えない。辺りを暗くするほどの強大な翼が起こす風が、大岩さえも浮かせにかかる。


(仕掛けるなら、風を纏って大樹を駆け上るか)



 砕けた枯葉や、尖った小石が隊員の全身に傷を付けて行く。駆けずり回る魔獣にも、等しく容赦はしない。斜面に立つものは、命有るものも、無いものも、荒れ狂う風の渦と、切り裂く飛来物に(さいな)まれていた。


(何だ?守りの魔法……?)


 その時、全身が柔らかな毛布で包まれるような感覚が訪れた。隊員達も驚き、一斉に首を下げて顔を見合わせた。


(随分強力なようだな。一体誰が)


 今回の討伐隊にも、守りの魔法を操るメンバーは居る。しかし、気休め程度の威力である。力を温存したり、隠したりと言う様子も無かった。



 ジルベルトは魔剣使いだが、魔力は僅かしかない。魔剣や、魔力伝導率の高い金属を使った鎖分銅等、道具の補助で魔法を発動出来るレベルだ。


 ただ、それすら、世界人口の1割程度という才能である。その上、彼は、魔法特化の『青紐(あおひも)隊』にさえ見当たらないほどの『魔力感知能力』を持っていたのだ。


(ああ、何だろう。こんなに幸せな事は今まで無かった)


 未曾有の災害時に不謹慎とは思いながらも。ジルベルトは胸の高鳴りを抑える事が出来なかった。



 ドラゴンが飛び去り、守りの壁が消える。


(逢いたい。この魔力の持主は……山向こう?)


 逢いたい一心で、魔物を片端から屠る。全身から立ち上る気迫は、不名誉な渾名の通り、銀色の悪鬼さながら。


「た、たいちょ……?」


 日頃からジルベルトと接している、『銀紐(ぎんひも)隊』トップ3人までが、その闘気に呆然とする。


「気を抜くな。死ぬぞ。」


 体格に似つかわしい低い(いか)めしい声で、ジルベルトは渇を入れる。隊員達はハッとして、魔獣に向き直る。

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