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雑用騎士ジルと魔法のお使い  作者: 黒森 冬炎
第二章・交易都市国家モーカル
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モーカル港の噂

 ジンニーナが熊シチューを注文すると、モーカル魔法守備隊員が思い出したように口を開いた。


「そういえば、光線眼熊(コウセンガンユウ)は、いませんでしたね」

「そうだな」

刃角鹿(ハカクカ)多手猿(オオテザル)は、山の魔獣なのに、何が違うんだろう」


 商人の疑問には、ジンニーナが答える。


光線眼熊(コウセンガンユウ)は、山奥の魔獣だけど、鹿や猿の魔獣は、森にもいるわよ」

「えっ、森は加護で魔獣が出ないんじゃ」

「森に行ったこと、無い?」

「はい、無いです」


 森でも、山の付近は加護が弱くて魔獣が出るのだ。


「加護の強い場所から森が広がるのよ」


 つまり、周辺部に行くに従って、加護は消えて行く。そこで増えた魔獣が移動する場合、加護の強い方へは、当然行かない。必然的に山に入り込んで来るのだ。



「それにしたって、増えすぎですよね」


 山中の出来事を改めて思い出したのか、魔法守備隊員がぶるっと震える。商人の顔も暗くなる。


「港の噂じゃ、海の魔獣が凶暴化してるとも聞きました」


 守備隊員が付け加えると、ジルベルトが頷く。


「デ・シーカ隊長の手紙にもあったようだ」

「増えてはいないの?」

「確かなことは解りませんが、今まで見なかった種類の魔獣が、混ざってるみたいです」

「海域調査は、していないんですか?」


 銀紐隊長ジルベルトが、疑問を呈する。


「ようやく、報告が上がってきたところですから」

「漁師の連中も、ここ数日、変な魔獣を見たって話してる程度で」

「海にも変化が現れたのね」

「遠洋に出てる漁船からも、最近になって、魔獣との遭遇頻度が上がった、という連絡が来てます」



「ドラゴンは?」


 ジンニーナが、ふと思い付いて聞く。


「特に聞きませんねえ」


 商人の噂にはなっていないようだ。


「先日の大討伐以外、報告は無いです」


 モーカル魔法守備隊でも、情報は無い。


「ロベルトからも聞いてないな」


 諸外国に於いても、目撃証言が出ていないらしい。


「考えてみると、おかしいのよね」


 ジンニーナは、世界を旅した大魔法使いだ。その発言に、テーブルに着く3人が注目する。


「一匹だから、はぐれか、偵察だろうと思ったんだけど」


 ドラゴンは、コロニーを作り、群れで行動する生物だ。


「こんな人里まで来るなんて、あんまりないと思う」


 歴史上、街の付近で目撃された記録は、数える程なのだ。


「大討伐の流れで、つい、気にしてなかったんだけど」

「そうだな」

「言われてみれば」

「そうなんですか」


 4人のテーブルに、冷たい空気が流れる。

 赤毛の魔女は、眉を寄せた。銀髪の大男が、口を真一文字に引き結ぶ。細身の魔法使いの顔には、陰が落ちる。平凡な商人は、不安そうに3人を見る。


「団長に相談するか」

「そうね」

「私も、守備隊に持ち帰ります」

「頼みます」


 専門家の連携を見て、商人の男は、表情を引き締める。


「商人仲間に、聞いてみます」

「ありがとう」


 商人の噂が流れるのは、速い。魔獣対策では、初動の迅速性が問われるのだ。商人ネットワークから協力を得れば、心強い。


「何か解ったら、ナーゲヤリにも知らせます」

「助かります」

次回、海上調査隊


よろしくお願いします

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