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雑用騎士ジルと魔法のお使い  作者: 黒森 冬炎
第二章・交易都市国家モーカル
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血路

R15 血糊回。閲覧注意

 血の毬栗(いがぐり)と化した魔獣は、銀鬼ジルベルトの魔剣カットによって細切れにされる。ジルベルトは、ジンニーナの壁を抜けて、無害にされた血飛沫を浴びる。

 やや離れて後に続くモーカル魔法守備隊員は、商人を抱えて飛び退いた。


 ナーゲヤリ城塞騎士ジルベルトは、鹿の魔獣が流した血で、斑に染まった腕を振るう。銀鬼の右手に握る長剣は、溶解魔剣メルト。左手の風裂魔剣で細切れにする側から、焼いてゆく。


 刃角鹿(ハカクカ)の絶命を目の当たりにした、モーカル商人は、腰を抜かしてしまった。

 モーカルの町で魔獣が出ると、一般人は避難する。ナーゲヤリ国民と違って、流血沙汰に慣れていない。


「行きますよ」


 守備隊員は、商人の足腰に強化の魔法をかけて、助け起こす。魔獣の囲いは(せば)まっている。



 タンツ夫妻は、商人を気遣って、何時もよりはゆっくりと進む。ジンニーナの壁によって、無害化された魔獣の死体は、数匹なら放置してもかまわない。普通の獣が食べても、生態系に影響が出ないことは、かつて実験したので解っている。


 しかし、今回迫る群れは、きちんと焼いて埋めなければならない量だ。

 無害化したところで、腐敗はする。山の獣が激減している現在、大量の屍肉が残れば、また暫くは通行禁止になってしまう。


 だから、大群で来る魔獣を相手取る場合には、素早く先行して壁で迎えるか、後ろから壁で押してゆくのが、ジンニーナのスタイルだ。



 今は、囲まれているので、押すにしても迎えるにしても、どちらかに抜けなければならない。討伐経験の無いモーカル商人を連れては、難しい方法である。


 そこで2人が取ったのは、動きながら四方の敵に対処する方法だ。包囲を崩して血路を切り開く。それを求めるにしても、一番効率の悪い方法を強いられた。


 ジンニーナは、多少不機嫌になる。ただでさえモーカルに良い印象が無くなった矢先だ。ジルベルトは、苛立つ妻をちらりと見やる。そして、山を降りたら、ハズレで熊シチューでもご馳走してやろうと思った。



 刃角鹿を葬ってから、一番最初に襲ってきたのは、氷尾長(コオリオナガ)。集団で来た。細かい氷の刃となった木片を、守りの壁が次々に弾く。氷尾長は、尾羽でそれを叩き返す。


 地面から飛びかかる毒牙兎(ドクガト)が、凍った木片の流れ弾に被弾した。3分の1程減っている。残った兎も、次々に壁にぶつかり、潰れてしまう。


 共同討伐に参加していた守備隊員は、氷尾長が見えた時点で、薄いタオルを取り出し、商人の眼に巻いた。商人は、ごつっ、べちっ、という衝突音に不安がりつつも、手を引かれて、何とか歩く。



 低く走り込む鋼棘鼠(コウシソ)は、全身から棘を突き出す。前に跳び跳ねる毒牙兎や、氷の尾羽を振るう氷尾長を突き刺しながら、壁に突進する。守りの壁が、ゴリゴリ削れた。


 ジルベルトは、壁に隙間を開けてもらい、先行している。絶え間無く攻め寄せる魔獣の群れを、両手の魔剣と『銀鬼三本目の腕』と揶揄される鎖分銅を駆使して片付けてゆく。

 街から山へと打羽鳩(ウチババト)を追い立てた時とは、逆である。

次回、血みどろ下山


まだまだ続く、血糊回

よろしくお願い致します

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