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雑用騎士ジルと魔法のお使い  作者: 黒森 冬炎
第二章・交易都市国家モーカル
40/110

悪戯な鳩はお仕置

今回も、1話です


位置関係の誤記を訂正・加筆しました

 モーカル中央市場は、一日中人で賑わっている。軒を連ねる屋台には、異国の売り子が珍しい食べ物や小物を商っている。屋台を覗く人々も、国際色豊かだ。


 モーカルは、港湾都市である。世界三大公益路の1つ、海の道が到る街だ。南表(みなみおもて)の海から、遠国(とつくに)の香辛料や、珍しい布地がやって来る。


 西に広がる平原からは、平原の道が、遥かな山々の品物を運んで来る。高価な宝石や細工物と共に、香り高い飲み物も(もたら)されるのであった。


 山の道は、街の東側だ。先頃魔獣を行った山頂から、北東に下れば、森林都市国家コカゲーを経由して東方へと導く、山の道だ。南の下山路は、ナーゲヤリに降りて行く。

山は、死の平原と海を隔てる山脈を形成している。



 タンツ夫妻は、昼に食べるものを買う前に、あちこち屋台を見て回る。2人は仲睦まじく寄り添って、あれこれ囁きあっている。

 しかし、屋台の店主達には、大柄な男女が、高圧的に品定めをしているように映っていた。


 モーカルは、人の出入りが激しい大きな街だ。共同討伐では、モーカルから参加したジンニーナだが、魔法守備隊以外での認知度は低い。赤毛の大女、と言うだけで不審な眼を向けられる。


 世界を旅したジンニーナにとっては、珍しいものは無かった。ただ、旅で気に入ったものとの再会は、モーカルならでは。

 人々の視線など気にせず、緑の猫眼をきらきらさせていた。


 また、ジルベルトにとっては、これ程多く商品が並ぶのが、それだけで圧倒される情景だ。数が多いだけでなく、見たことのない品物ばかり。冷酷に見える顔立ちに、好奇心を僅かに乗せて、色々と眺めて歩く。

 彼は、ナーゲヤリ城塞騎士団の制服姿だ。街の人々は、外国の威圧的な大男が、一体何の用かと訝しむ。



 食べ物屋台の一角で、激しい殴打音が上がる。ジルベルトは、反射的に音のした方へ駆け出した。ジンニーナも続く。

 見れば、鳩のような細い鳥が、何かに群がっている。悲鳴も聞こえて来た。


 打羽鳩(ウチババト)だ。

 細身で灰色の貧相な姿からは想像出来ないような、重たい打撃を繰り出す魔獣である。翼を強く羽ばたかせて打ち付け、巨大な鉄爪猪(テッソーチョ)の首の骨を折る程だ。


 全体は灰色だが、首にぐるりと幅広い黒縞が入っている。目は真っ赤だ。爪も真っ赤で鋭いが、毒はない。主に集団で行動する。山にも、街にも、平原にも、海辺にまで生息し、繁殖力も高い。増えたら危険なので、『空の鋼棘鼠(コウシソ)』と仇名されている、厄介な魔獣である。


 現場に到着すると、屋台の店主や買い物客が、恐怖で叫びながら、腕や鞄で顔を庇っていた。打羽鳩が力ずくで食べ物を奪いに来るからだ。

 モーカルでは、認可魔法使い以外の討伐は禁止されている。国民も、観光客も、みな黙ってやられながら、魔法守備隊が到着するのを待つ。


 その様子を一目見て、


()()()禁止なんだな」


 と言い、ジルベルトは避難誘導と、魔獣の追い立てを勝って出た。勿論、ジンニーナは、モーカルの認可魔法使いなので、生い立てた魔獣を()() する気満々である。


「悪い鳩さんには、お仕置きが必要なようだわ」


 にやりと悪戯に笑う大柄な魔女は、どこかユーモラスだった。被害に遭った人々の間に、安心感が広がって行く。

次回、血を流すなら山の中


よろしくお願い致します

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